こんにちは！ぷちかま記者です。かまぼこ界のスクープを追って、今日も始まりました。第二回は職人技の秘密（ひみつ）に迫（せま）るべく、かまぼこ職人さんと、初登場の魚肉博士へ取材します。よろしくお願いします！

よろしくお願いします。

はじめまして、よろしくお願いします。

あの……そもそもになってしまうのですが、かまぼこってどうやって作っているんですか？

かまぼこ作りには、大きく分けて８つのステップがあります。今回はそのなかでも特に職人技がいきてくる、５つの工程をお伝えしましょう。１つ目が採肉です。

採肉の肉は、魚肉の肉ですね。

新鮮（しんせん）な白身魚が届いたら、頭と内蔵（ないぞう）を取り除（のぞ）きます。その後、皮や骨も取ってしまい、筋肉（きんにく）の一番良質な身だけを集めます。これが一番肉です。ここで大事なのが、ハラスの部分は使わないこと。

あれ、ハラスっておいしい部分ですよね？

そうなんです。マグロでいえばトロの部分にあたり、脂（あぶら）が乗っていておいしい部分ですが、かまぼこ職人の間では使わないことになっています。

理由を確かめるために調べてみたところ、ハラスの部分には、かまぼこの弾力（だんりょく）を作るのを邪魔（じゃま）してしまう酵素（こうそ）が多く含（ふく）まれていることがわかりました。

科学的にも正しかったのですね…！でも、いろいろな部分が捨（す）てられてしまうのはちょっともったいない気もします……。

皮に近い身は、風味が強いので板かまぼこには使わないのですが、その旨味（うまみ）を活かして揚（あ）げかまぼこなどに使っています。二番肉と呼んでいます。

さらに、最後に取り除（のぞ）かれた皮や骨、頭や内臓（ないぞう）は、農作物を作るための肥料にしています。魚肥と呼ばれ、小田原の農家の方々と協力して作物を育てています。シソやお米が元気に育っています。

かまぼことシソは、相性バツグンですしね。

次の工程は、水さらしです。魚肉を水にさらして、余分な脂肪や血液などの色素成分、酵素（こうそ）を洗い流していきます。このときの水は、小田原の地下水を使っています。通常は2回ほどさらしますが、魚のコンディションによって、回数や水の量などを調整しています。

このとき大切にしているのは、実は魚肉の酸性アルカリ性の度合いであるｐHなのです。ｐHが高すぎると、脱水（だっすい）の工程で魚肉が水っぽくなってしまい、しぼりにくくなってしまうことがわかりました。逆にｐHが低すぎると、水はしぼりやすくなりますが、魚肉のたんぱく質にダメージを与（あた）えてしまうため、よくないんです。

魚肉の水分量は、その後の工程でとても重要です。極めた職人ならば、0.1%の水分の差が手のひらの上でわかります。

ものすごい精度なんですね……！

職人の勘（かん）はすごいですね。職人たちが言い伝えてきたこと、昔からやってきたことを研究してみたら、それが理想のかまぼこを作る上で正しかったことは、たくさんあります。

この脱水（だっすい）はまだまだ職人の感覚の部分が多い作業ですね。この次の工程は、前回も少しお話した擂潰（らいかい）です。

前回「小さな魚は、塩をさっと早めに入れて短く擂（す）る。大きな魚は、塩をゆっくり徐々に入れて長く擂る」と教わりました！

そうです。これは、魚肉の筋繊維（きんせんい）のすきまの大きさが関わっていることがわかりました。小さな魚はすきまが小さく、大きな魚は逆にすきまが大きいんです。その結果、小さな魚は塩が浸透（しんとう）しにくく、大きな魚はしやすいため、入れ方の調整が必要であることがわかりました。

擂潰（らいかい）は、その日のかまぼこの出来を決めるとも言える大事な工程です。みりんなどの調味料もここで入れていきます。そして最後に、かまぼこの形を作り上げる板付けに移ります。

ついに、かまぼこ板の登場ですね！

板付けには、板にすり身を少しずつ盛（も）って土台をつくる「引き起こし」、薄（うす）くのばしたすり身を板に重ねていく「中がけ」、そしてさらにすり身を重ねて表面をきれいにする「上がけ」の３段階（だんかい）があります。ピンク色の層（そう）をつくるのも、この上がけの工程ですね。

板付けの間に、擂潰（らいかい）の工程でバラバラになった魚の筋繊維（きんせんい）が、網目（あみめ）状につながり直すことがわかっています。この網目（あみめ）が、かまぼこの弾力（だんりょく）の秘密（ひみつ）なんです。

そして、最後の工程が加熱です。蒸（む）すことで網目（あみめ）の構造をしっかりとくっつけて、かまぼこの弾力（だんりょく）をつくっていきます。1℃、1分変えるだけで大きく食感が変わるので、これも職人の勘（かん）と経験が重要です。

魚によって、よい弾力（だんりょく）が出る温度も違（ちが）うことが実験でわかっています。新しい魚を使うときは、研究所で実験して職人たちに伝えることもありますね。

なるほど、これでかまぼこが完成するんですね！職人の経験と、科学の裏付（うらづ）けが支えていることがわかりました！最後に質問なのですが、どうして小田原かまぼこは板についているんですか？

一つの理由は、小田原かまぼこの特徴（とくちょう）である、おめでたい日の出を模（も）した扇形（おうぎがた）を支えるためです。そしてもう一つは「防腐剤（ぼうふざい）」の役割です。

え、かまぼこ板が腐（くさ）るのを防ぐのですか？

そうです。板が余分な水分を吸（す）ってくれるおかげで、カビや細菌（さいきん）が増えにくくなっています。同時に、かまぼこの水分調整にも役立っているんです。

飾（かざ）りじゃなかったんですね…！どこまでも奥深（おくぶか）いかまぼこの世界ですが、今日はかまぼこの作り方を学びました。職人さん、魚肉博士、ありがとうございました！