かまぼこってどうやって作るの?

ぷちかま記者:

こんにちは!ぷちかま記者です。かまぼこ界のスクープを追って、今日も始まりました。第二回は職人技の秘密ひみつせまるべく、かまぼこ職人さんと、初登場の魚肉博士へ取材します。よろしくお願いします!

かまぼこ職人:

よろしくお願いします。

魚肉博士:

はじめまして、よろしくお願いします。

記者:

あの……そもそもになってしまうのですが、かまぼこってどうやって作っているんですか?

職人:

かまぼこ作りには、大きく分けて8つのステップがあります。今回はそのなかでも特に職人技がいきてくる、5つの工程をお伝えしましょう。1つ目が採肉です。

記者:

採肉の肉は、魚肉の肉ですね。

職人:

新鮮しんせんな白身魚が届いたら、頭と内蔵ないぞうを取りのぞきます。その後、皮や骨も取ってしまい、筋肉きんにくの一番良質な身だけを集めます。これが一番肉です。ここで大事なのが、ハラスの部分は使わないこと。

記者:

あれ、ハラスっておいしい部分ですよね?

職人:

そうなんです。マグロでいえばトロの部分にあたり、あぶらが乗っていておいしい部分ですが、かまぼこ職人の間では使わないことになっています。

博士:

理由を確かめるために調べてみたところ、ハラスの部分には、かまぼこの弾力だんりょくを作るのを邪魔じゃましてしまう酵素こうそが多くふくまれていることがわかりました。

記者:

科学的にも正しかったのですね…!でも、いろいろな部分がてられてしまうのはちょっともったいない気もします……。

職人:

皮に近い身は、風味が強いので板かまぼこには使わないのですが、その旨味うまみを活かしてげかまぼこなどに使っています。二番肉と呼んでいます。

博士:

さらに、最後に取りのぞかれた皮や骨、頭や内臓ないぞうは、農作物を作るための肥料にしています。魚肥と呼ばれ、小田原の農家の方々と協力して作物を育てています。シソやお米が元気に育っています。

記者:

かまぼことシソは、相性バツグンですしね。

職人:

次の工程は、水さらしです。魚肉を水にさらして、余分な脂肪や血液などの色素成分、酵素こうそを洗い流していきます。このときの水は、小田原の地下水を使っています。通常は2回ほどさらしますが、魚のコンディションによって、回数や水の量などを調整しています。

博士:

このとき大切にしているのは、実は魚肉の酸性アルカリ性の度合いであるpHなのです。pHが高すぎると、脱水だっすいの工程で魚肉が水っぽくなってしまい、しぼりにくくなってしまうことがわかりました。逆にpHが低すぎると、水はしぼりやすくなりますが、魚肉のたんぱく質にダメージをあたえてしまうため、よくないんです。

職人:

魚肉の水分量は、その後の工程でとても重要です。極めた職人ならば、0.1%の水分の差が手のひらの上でわかります。

記者:

ものすごい精度なんですね……!

博士:

職人のかんはすごいですね。職人たちが言い伝えてきたこと、昔からやってきたことを研究してみたら、それが理想のかまぼこを作る上で正しかったことは、たくさんあります。

職人:

この脱水だっすいはまだまだ職人の感覚の部分が多い作業ですね。この次の工程は、前回も少しお話した擂潰(らいかい)です。

記者:

前回「小さな魚は、塩をさっと早めに入れて短く擂(す)る。大きな魚は、塩をゆっくり徐々に入れて長く擂る」と教わりました!

博士:

そうです。これは、魚肉の筋繊維きんせんいのすきまの大きさが関わっていることがわかりました。小さな魚はすきまが小さく、大きな魚は逆にすきまが大きいんです。その結果、小さな魚は塩が浸透しんとうしにくく、大きな魚はしやすいため、入れ方の調整が必要であることがわかりました。

職人:

擂潰らいかいは、その日のかまぼこの出来を決めるとも言える大事な工程です。みりんなどの調味料もここで入れていきます。そして最後に、かまぼこの形を作り上げる板付けに移ります。

記者:

ついに、かまぼこ板の登場ですね!

職人:

板付けには、板にすり身を少しずつって土台をつくる「引き起こし」、うすくのばしたすり身を板に重ねていく「中がけ」、そしてさらにすり身を重ねて表面をきれいにする「上がけ」の3段階だんかいがあります。ピンク色のそうをつくるのも、この上がけの工程ですね。

博士:

板付けの間に、擂潰らいかいの工程でバラバラになった魚の筋繊維きんせんいが、網目あみめ状につながり直すことがわかっています。この網目あみめが、かまぼこの弾力だんりょく秘密ひみつなんです。

職人:

そして、最後の工程が加熱です。すことで網目あみめの構造をしっかりとくっつけて、かまぼこの弾力だんりょくをつくっていきます。1℃、1分変えるだけで大きく食感が変わるので、これも職人のかんと経験が重要です。

博士:

魚によって、よい弾力だんりょくが出る温度もちがうことが実験でわかっています。新しい魚を使うときは、研究所で実験して職人たちに伝えることもありますね。

記者:

なるほど、これでかまぼこが完成するんですね!職人の経験と、科学の裏付うらづけが支えていることがわかりました!最後に質問なのですが、どうして小田原かまぼこは板についているんですか?

博士:

一つの理由は、小田原かまぼこの特徴とくちょうである、おめでたい日の出をした扇形おうぎがたを支えるためです。そしてもう一つは防腐剤ぼうふざい」の役割です。

記者:

え、かまぼこ板がくさるのを防ぐのですか?

博士:

そうです。板が余分な水分をってくれるおかげで、カビや細菌さいきんが増えにくくなっています。同時に、かまぼこの水分調整にも役立っているんです。

記者:

かざりじゃなかったんですね…!どこまでも奥深おくぶかいかまぼこの世界ですが、今日はかまぼこの作り方を学びました。職人さん、魚肉博士、ありがとうございました!