魚肉たんぱく同盟コラムVol.3

ママとアスリート
2つの顔を持つハードラー・寺田明日香が出したかまぼこという最適解

2021.05.17

女子100mハードルの日本記録保持者でありながら、過去には7人制ラグビーで日本代表練習生に選ばれるなど、アスリートとして幅広く活躍する寺田明日香氏。彼女は現在、子育てをしながら、東京オリンピックを目指している。アスリートとしての栄養摂取と、子どもの食育。この両立を考えながら食事を作るママアスリートが行き着いたのが、魚肉タンパク質だった。そこで今回は、長い間、彼女の栄養指導を行なってきた廣松千愛さんと共に、ママアスリートならではの視点で、工夫の極意を語ってもらった。



寺田明日香(Asuka Terada)選手プロフィール
1990年1月14日生まれ。小学校4年生から陸上競技を始め、高校1年から本格的に100mハードルに取り組む。インターハイ3連覇、そして社会人1年目に出場した日本選手権で同種目史上最年少で優勝、そのまま3連覇を果たす。世界陸上ベルリン大会に出場、アジア選手権では銀メダルを獲得するも、その後相次ぐケガ・摂食障害等で2013年に現役を引退。結婚・出産を経て、2016年夏に7人制ラグビーに競技転向する形で現役復帰。2018年12月に再び陸上競技への復帰を表明。2019年9月には12秒97の日本新記録を樹立して10年ぶりに世界陸上に出場した。2021年にも12秒96と日本記録を再更新。ママアスリートとして、東京オリンピックを目指す。



廣松千愛(Chiyori Hiromatsu)さんプロフィール
1992年5月27日生まれ。立命館大学スポーツ健康科学部卒業。兵庫県立大学食環境栄養課程卒業。高校まで陸上競技をしていた経験からスポーツ科学を専攻。大学の授業の中でスポーツ栄養学の魅力に惹かれ、卒業後に管理栄養士を取得。その後、プロ野球やプロバスケットボールチームの食堂で献立作成や調理を担当。現在は「アスリートが自分に合う食のカラーを見つけ出し武器にしていくための ”よりどころ”」をコンセプトに、サッカー、バスケットボールのプロ選手、トライアスロン、陸上長距離選手などへの食事提供や栄養マネジメント、ナショナルチームの合宿帯同、Jリーグユースチームのサポートなどを行う。
Webサイト:colory nutrition


:寺田選手は、高校時代のインターハイ3連覇に始まり、社会人1年目には日本陸上競技選手権で優勝、3連覇。その後も、世界の舞台で活躍してきた100mハードルのスペシャリストです。2013年に結婚・出産で一度陸上の世界を離れますが、ラグビー選手として現役復帰し、陸上再転向後の2019年9月には12秒97の日本新記録を樹立、今年に入っても更新されました。出産後にも関わらず、記録を出すことができた理由はどこにあるのでしょうか?

:科学的な根拠はわかりません。ただ、私の場合、最初にアスリートとして復帰したのは、7人制ラグビーでした。結局、怪我によってラグビーからは離れることになりましたが、ラグビーに取り組んだ2年間は「足が速くなっているんじゃないか」という感覚がありました。

:陸上とラグビーとでは、求められる能力は違うと思いますが、大きな違いはなんでしょうか?

:一番の違いは、やはり食事ですね。ラグビーをやっていた2年間は、体重を47kgから60kgにまで増やしました。とにかく食べながら。

:そんな寺田選手の栄養面をサポートしてきたのが廣松さんですね。廣松さんは、寺田選手の食事をアドバイスされていますが、普段はどのようなアドバイスをされていますか?

:寺田選手は、あまり量を食べられるほうではないんです。自分では満足できる量を摂っているつもりだと思うのですが、栄養士の目線で見ると、やや量が少ないので、3食をきっちり摂りながら、どうやって間食も摂るかなど、彼女の課題を考えながらアドバイスさせてもらっています。

:アスリートの食事で重要なことの一つに、いかにタンパク質を摂取するか、という課題がありますが、寺田選手はどのようにして摂取していますか?

:お肉とお魚をバランスよく食べるように意識しています。お肉の種類によっても役割が違うので、疲労が溜まりそうなときは豚肉を食べるようにするなど、そのときの体の状態によって使い分けるようにしていますね。ただ、魚介類が少し苦手なんです。その中でも特に苦手な青魚は調理方法を工夫して食べるようにしています。

タンパク質を摂取するうえで重要なのは、一気にたくさんの量を摂るのではなく、こまめに摂ることです。3回の食事で摂れない分はプロテインなどを活用し、補食でまかなうように寺田選手には伝えています。特に練習や試合の直後は、食べ物が喉を通りにくいので、摂取しやすいものを選ぶ必要があります。

:先ほど寺田選手から魚介類が苦手という話がありましたが、多くのアスリートは、タンパク質の摂取を肉に頼っている印象があります。栄養士さんからみて、タンパク質源としての魚をどのようにとらえていますか?

魚が良質なタンパク質源だということを理解している人は多いと思います。しかしどのように調理したらよいのかがわからない、レシピのレパートリーが少ないという課題を抱えている人がたくさんいます。「良いことはわかっているけど、摂り方がわからない」といった印象です。

:どのようにすれば魚を上手に食事の中に取り入れられるのでしょうか?

:わたしが寺田選手におすすめしているのは、缶詰やかまぼこ、ちくわなどの魚肉を使った練り製品を活用することです。

:寺田選手も実際に鈴廣かまぼこを食べているそうですが、いかがでしたか?

:素材の味が活かされていて、すごく美味しいです。そのまま食べることもできますが、わたしは、かまぼこに梅干しを挟んで食べるのが一番のお気に入りです。他にもかまぼこステーキのようにして醤油とチーズで焼く、お吸い物に入れる、肉の代わりに肉野菜炒めにかまぼこを使うなど、たくさんのレパートリーに挑戦しています。

:いま、鈴廣かまぼことサッカー日本代表の長友選手が中心になり、魚肉タンパク質の良さを世の中に伝えていこうという取り組みをしています。この取り組みをどのように感じますか?

:魚があまり得意ではない私にとって、美味しいかまぼこから魚肉タンパク質を摂れるのはすごく嬉しいです。体質的に油が苦手なのですが、魚の油なら体調を崩すこともないので、体調管理をするうえでも私には合っているように感じます。必要な栄養素を美味しく摂れるかまぼこは、スポーツ界にもどんどん広まっていってほしいです。

:わたしも元々は、かまぼこがここまでアスリートにぴったりの食材だとは思っていませんでした。でも、鈴廣かまぼこの原材料を見ると、塩も天然のものを使用していることがわかります。汗をたくさんかくアスリートにとって、いい塩を摂ることはミネラル補給にもなります。寺田選手も言っているように、普段の食事で魚が摂れない選手でも手軽に食べることができますし、保存もきくので、鈴廣かまぼこはアスリートにとって最高の食材だと思います。

:先ほど補食の話がありました。鈴廣かまぼこは補食としても良いアイテムになると思いますが、どのような選手が取り入れるのが良いと思いますか?

:補食として取り入れる場合、ドーピングに注意しなければいけないアスリートはもちろんのこと、まずは食事から栄養を摂るように指導を受けている成長期の選手が取り入れるのも良いと思います。サプリメントの使用はできるだけ控えたいという選手が手軽にタンパク質を摂るためには、かまぼこのような食品は非常に相性が良いと思います。

:寺田選手は家事や子育てなど、母親としての一面もお持ちですが、日々の生活で鈴廣かまぼこが重宝される機会はありますか?

お弁当にもいいですし、普段の食事でも重宝しています。朝食では、かまぼこをそのまま出してさっぱり食べたり、卵焼きに切ったかまぼこを入れて食べたりしています。夕飯では様々な料理に入れて食べます。うどんなどの麺類に切って入れる、野菜スープに入れるなど、活用方法はたくさんあります。

:お子さんの食事と、アスリートとしての食事で、共通するのはどんなところでしょうか?

色をしっかり揃えることは、成長期の子どもの食事にも、アスリートの食事にも共通することだと思います。茶色の食べ物だけだと何かしらの栄養素が足りてないことがほとんどですし、緑だけでもタンパク質が足りないので、色には気をつけています。その点でも、白身の魚を気軽に食べることができるかまぼこは、重宝しています。

:東京オリンピックに向けて、残りの時間をどのように過ごしていきますか?

:とても大事な時期になっていくので、栄養にはかなり気を使っていきたいと思っています。家事とアスリートの両立をしようとすると、どうしても時間がなくて食べられない時があります。でも、それでは疲労が抜けにくく、体に痛みが出ることもあるので、栄養面は徹底していきます。

:食育とご自身の栄養の両立ができるかまぼこが、ますます活躍しそうですね。

:上手に取り入れながら、良い結果を残せるように頑張ります!

編集後記

子育てと競技の両立は難しいという既成概念を覆し、記録を更新し続ける寺田明日香選手。彼女が進化し続けるその陰には、既成概念を壊す新しい価値観の創造があった。「かまぼこ」という最適解を出した彼女に、まだ限界は見えていないはず。その視線の先にある東京で、彼女は我々にどんな姿を見せてくれるのだろうか。彼女の走りからますます目が離せなくなってきた。

書き手:瀬川泰祐(スポーツライター・エディター)

株式会社カタル代表取締役。HEROs公式スポーツライター。Yahoo!ニュース個人オーサー。ファルカオフットボールクラブ久喜アドバイザー。ライブエンターテイメント業界やWEB業界で数多くのシステムプロジェクトに参画し、サービスをローンチする傍ら、2016年よりスポーツ分野を中心に執筆活動を開始。リアルなビジネス経験と、執筆・編集経験をあわせ持つ強みを活かし、2020年4月にスポーツ・健康・医療に関するコンテンツ制作・コンテンツマーケティングを行う株式会社カタルを創業。取材テーマは「Beyond Sports」。社会との接点からスポーツの価値を探る。公式サイト http://segawa.kataru.jp