魚肉たんぱく同盟コラムVol.34

「自立から自律へーー第100回箱根駅伝を制した青山学院大学陸上競技部ランナーに聞く箱根への思いと”食”への取り組み」

2024.07.12

2024年1月2日〜3日に開催された第100回箱根駅伝。記念すべき本大会を10時間41分25秒の総合新記録で制したのは、青山学院大学だった。箱根駅伝の象徴のひとつである小田原中継所を目指して走った4区・佐藤一世選手(写真右)と6区・野村昭夢選手(写真左)に、箱根への思い、そしてアスリートとしての食への取り組みを聞いた。

佐藤一世選手プロフィール
2001年7月21日生まれ。千葉県松戸市出身。1年次から箱根駅伝に出場し、今大会で4大会連続の出場。4区区間賞を獲得し、大会新記録での総合優勝に大きく貢献した。

野村昭夢選手プロフィール
2002年11月10日生まれ。鹿児島県志布志市出身。今大会が初の箱根駅伝ながら6区を任される。後続との差を大きく広げ、総合優勝を決定づける走りを見せた。

 


 

ーー第100回箱根駅伝での総合優勝、誠におめでとうございます。お二人にとってこの100回大会はどのような大会でしたか。

佐藤選手:僕たち4年生にとっては最後の箱根でもありましたし、1年生の時からずっと「100回という節目の大会で優勝しよう」と同期たちと目標にしてきました。その目標を達成できて本当に嬉しいです。

野村選手:実は、監督からは大会前のミーティングで「2位でいいよ」と言われていたんです。自分自身も口では優勝したいと言っていたけれど、駒沢大学に勝てるんだろうかという気持ちが大きくて。でも、往路の選手5人が2分38秒差をつけてくれたので、復路のスタートを切る僕もリラックスして臨むことができました。

ーー原晋監督から「2位でいいよ」と言われていたんですか?

野村選手:そうなんですよ。駒沢大学が本当に強すぎて(笑)。

佐藤選手:駒沢大学という強豪がいる中で、変に優勝を狙って2位すら取れない状況を避けるという意図が大きかったと思います。そして選手にプレッシャーを与えず、リラックスさせようとしていたんじゃないかな…。

ーー原監督はお二人にとってどんな監督ですか?何かエピソードがあれば教えてください。

佐藤選手:練習のことは選手に任せる監督なので、やらされる練習というのが全くありませんでした。監督は「自立」ではなく「自律」を目指した指導をされるので、選手に任せることが多かったですし、そこが青学の強さの秘訣なのかなと思います。

監督はあまり話をするタイプではないので、これといったエピソードがあるわけではないのですが、コミュニケーションを密に取らなくても、佐藤はしっかり走ってくれると信用してもらっている気がします。まあ、あまり話をしないので本当のところはわからないんですが(笑)。

野村選手:僕は1年目から怪我が多かったんです。復帰して走っていると、ポイントごとに「まだ故障しないの?」と声をかけてくるんですよ(笑)。コースのきついポイントに着いても、褒め言葉ではなくちょっと笑わせるような冗談をかけてくる人ですね。

ーー4区と6区は鈴廣かまぼこの敷地内にある小田原中継所を目指して走る区間です。小田原中継所は、お二人にとってどのような場所でしょうか。

佐藤選手:小田原中継所は、大学入学前からテレビで見ていた場所です。僕は1年目も同じ4区を走らせてもらいましたが、あの光景は「ああ、箱根だな」と思わせてくれます。

野村選手:自分は1年生の時から6区を狙っていました。実際に走りながら鈴廣かまぼこさんの看板を見て「あと少しで終わるな」と感じましたね。そして中継所に入ってからはここまでこれたという安堵が大きかったです。

ーー鈴廣かまぼこは1993年の第69回箱根駅伝から、30年にわたり小田原中継所を1位で通過した4区と6区の選手の足形をとってきました。先ほど、お二人の足形も取らせていただきましたが、このことは以前からご存知でしたか?いずれ、全ての足形を並べて展示したいと思っているのですが。

野村選手:先輩からは都市伝説のような感じで噂は聞いていました(笑)。足形を取る時はなんだか緊張して、手汗をかいてしまいました。

佐藤選手:ハリウッドの手形みたいですよね。展示された際には、ぜひ足を運びたいと思います。

ーーよく聞かれる質問かとは思いますが、お二人にとって箱根駅伝とは?

佐藤選手:4年間という短い期間ではありますが、箱根駅伝は生きがいだったな、と思います。

野村選手:一番輝ける舞台でしょうか。自分にとって夢の舞台である箱根駅伝で走れて本当に良かったです。

ーー佐藤選手は4年間を総合優勝といういい形で終えられたと思うのですがいかがでしょう。

佐藤選手:本当にそうですね。12月に体調を崩したため、本当に走れるかわからない状況が続いていたのですが、周りの方の支えのおかげでスタートラインに立つことができました。走っている間も、沿道、そしてチームメイトの応援があったからこそ区間賞をとることができました。周りの方に恵まれた結果、みんなで掴んだ優勝なのかな、と改めて思います。

ーー箱根駅伝優勝という快挙を成し遂げられたお二人に、普段の身体作りについてお聞きしたいと思います。普段はどのような食生活を送っていますか?

野村選手:朝晩は寮の食事、昼は各自に任されています。まさに自律を求められている部分だと思います。

佐藤選手:試合前の大事な時期は、自分でメニューを選べる昼食も、ラーメンを食べたい気持ちを抑えてバランスの良い定食を選ぶようにしていました。

野村選手:僕は朝晩に納豆と卵でタンパク質を取る意識を持っていますね。

ーー大学に入学されてから、食事の意識への変化はありましたか。

佐藤選手:大学に入学してからはチームメイトと一緒に食事をとるようになり、食に対する意識が変わりました。朝晩はみんな同じメニューですが、先輩が自主的にプラスアルファで足りない栄養素を補っている姿を見たのも大きかったですね。チームメイトの小さな意識を間近で見られるのも、共同生活の良さだと思います。

ーー先ほど、タンパク質のお話が出ましたが、魚やかまぼこを食べる機会は頻繁にありますか?

佐藤選手:僕は海鮮が好きなので、よくお昼に海鮮定食を食べに行きます。実家では、ピンクと白の板かまぼこが食卓によく並んでいました。馴染みの味です。

野村選手:僕は魚より肉が好きなので、肉を食べる機会が多いですね。かまぼこは頻繁に食べる機会がないのですが、さつま揚げは馴染みがあります。

ーー若い時は何を食べても大丈夫だったアスリートの方が、30代になってからは消化性を重視してタンパク源を肉から魚に切り替えているという話もお聞きします。

佐藤選手:確かに今はカロリーや消化性をあまり気にしていませんが、卒業後も駅伝を続けていく中でいろいろなタンパク質の摂り方を試していきたいと思います。

ーーそれでは最後に、お二人の今後の展望をお聞かせください。

佐藤選手:卒業後は、実業団で駅伝を続けていく予定です。ニューイヤー駅伝でチームの優勝に貢献できる走りをしたいと思います。

野村選手:大学最後の1年になりました。チームを引っ張っていく学年になりますが、あまり気負いすぎず、チーム全体で楽しく、三大駅伝の三冠と箱根の二連覇を目指してやっていきたいと思います。

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五勝出 拳一(ごかつで・けんいち)
広義のスポーツ領域でクリエイティブとプロモーション事業を展開する株式会社セイカダイの代表。複数のスポーツチームや競技団体および、スポーツ近接領域の企業の情報発信・ブランディングを支援している。2019年末にマイナビ出版より『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』を出版。