魚肉たんぱく同盟コラムVol.1
スポーツシーンに最適!
アスリート専属シェフのパイオニアとかまぼこ博士が着目したかまぼこの機能性と嗜好性とは?
2021.04.04
2020年に魚肉たんぱく同盟が結成されたことがきっかけで、今まで交わることのなかった2人の求道者による対談が実現した。世界の第一線で挑み続けるサッカー日本代表・長友佑都選手の専属シェフとして、食を探求し続ける加藤超也氏と、魚肉たんぱく研究所でかまぼこの美味しさを科学し続ける植木暢彦氏。「食」の世界で独自のポジションを築き上げた2人が、鈴廣かまぼこの秘密に迫る。(聞き手:津村洋太)
鈴廣かまぼこが魚肉たんぱく質に着目したのには、どのような背景があったのでしょうか?
植木:一般的に、魚は健康に良く、摂取量が多いほど心臓病などの疾病リスクが低くなることが分かっています。また、消費量が多い国ほど寿命が長いとも言われていますが、それはDHAやEPAといった魚の脂に注目が集まってのことでした。しかし、魚は脂1パーセントに対し、たんぱく質が10数パーセントあるんです。我々はかまぼこ屋ですので、魚が健康に良いと考えられる理由は、たんぱく質にもあるはずだと考えたのがきっかけでした。そこで大学教授の方々と一緒に共同研究をさせてもらいながら、魚肉たんぱく質の健康機能性について検証を行い、その秘密を明らかにしていくことにしました。
魚肉たんぱく質には、どのような特徴があるのでしょうか?
植木:アミノ酸スコア(体内で十分な量を合成することができず食物から摂取する必要がある「必須アミノ酸」がバランス良く含まれているかを数字で表したもの)としては、肉と魚に大きな違いはありません。ただ、肉と比べて、魚はとにかく高たんぱく質低脂肪なのが特徴で、魚種にもよりますが、かまぼこで使われる魚の多くは水分を除いた組成比でたんぱく質が90%ほどです。また、魚のたんぱく質は消化されやすいことが大きな強みです。臓器への負担も軽く、体内への吸収もはやいのではないでしょうか。
ということは、かまぼこも消化に良いということでしょうか?
植木:わたしたちが解き明かそうとしてきたのは、まさに「かまぼこの消化性」でした。研究を進めていく中でわかったことは、刺身とかまぼこでは、かまぼこの方が消化性が高いということでした。さらに研究を進めていくと、かまぼこも、その製法によって消化のされ方が全く違うことがわかったんです。だから、わたしたちの研究は、徐々に消化性の高い鈴廣かまぼこの製法の秘密を解き明かすことに移っていきました。
このようなかまぼこの特徴は、スポーツシーンとの相性が非常に良いように思います。長友選手をサポートしている加藤シェフは、どのようにお考えですか?
加藤:アスリートにとってたんぱく質の摂取は最重要事項ですが、わたしが長友をサポートしていて感じていた課題は大きく2つありました。1つ目は、試合を終えた後のゴールデンタイム(運動後30分以内にたんぱく質を摂取するタイミング)に、どうやってたんぱく質を摂取するかということ、そして2つめは、たんぱく質の摂取による消化不良をどう解決するかということでした。特に、スポーツシーンでは、たんぱく質の摂取だけに注目が集まってしまっており、たんぱく質を効率よく消化・吸収するという視点を持っていない人が多いように感じていました。その点で、必須アミノ酸のバランスが良く、消化性が高い魚肉たんぱく質は、2つの課題を同時に解決してくれる素晴らしい食材だと気づきました。遠征などで摂取できるものが限られる試合後にも、持ち運びもしやすいですし。かまぼこは、最強の補食と言っても過言ではないと思っています。
激しい運動の後にたんぱく質を摂取するには、タイミングと消化性が重要ということなのですね。
加藤:特に試合の後は、緊張やストレス、疲労感などで食欲が出ないことが多いですし、腸の機能が低下し免疫力も下がっていますので、長友をサポートする立場のわたしとしては、どのようにして効率的に栄養を取らせるかは常に頭を悩ませる課題でした。これまでも「食欲を喚起させながら栄養を取ってもらう」という観点で食事を作ってきましたが、魚を多めに摂り入れるようにしてからは、消化不良をおこなさなくなり、長友の体にフィットしていることがわかってきたのは大きな成果でした。
しかし、その一方で、お刺身の場合は、食当たりのリスクが気になっていたんです。だから極力リスクがなくたんぱく質が摂取できるかまぼこの存在に気づいた時は、「これだ!」と思いましたね。
アスリートのパフォーマンスの再現性を高めるためには、なるべくリスクの少ない食材を選ぶという視点と、その理屈をもっていることが大切です。その点で、かまぼこの消化性をしっかり検証されている植木さんのお話は、わたしにとっても非常に有益な情報です。
鈴廣かまぼこは天然素材で作られているという特徴がありますが、天然素材であることと消化性には、相関関係はあるのでしょうか?
植木:あります。世の中には、弾力を強くしたり、賞味期限を伸ばしたりするために添加するものがいくつかあるのですが、それらが入っているかまぼこを作って検証してみたところ、消化されにくくなるということがわかったんです。かまぼこというと、「加工品」とひとくくりにされてしまうことも多いのですが、鈴廣かまぼこが天然素材で作られているということを、もっと多くの人に知ってもらえると嬉しいですね。
加藤:わたしは、育成年代の子を持つ保護者や指導者の方々からも食に関する相談を受けることがあります。その中には、「子どもが魚の骨を嫌がって食べない」という相談が意外と多いんです。幼い頃の苦い経験をそのままズルズルと引きずってしまうケースってあるじゃないですか。その観点でも、骨がないかまぼこは、魚を食べる習慣をつけるための入口の食材としても「最高の食育フード」と言えるのではないでしょうか。栄養をしっかり摂取しなければならないのはジュニアアスリートも同じですので、かまぼこから食への取り組みを始めるというのはすごく良いのではないかと思っています。
植木:毎日のおやつや、トレーニング後、試合の合間などにもかまぼこを取り入れてもらえると、より効果的ですね。
加藤: はい、本当にそう思います。先ほど、鈴廣かまぼこの消化性は、製法とも関係があるというお話がありましたが、鈴廣かまぼこの製法に興味を持った経緯を詳しく聞かせていただけますか?
植木:鈴廣かまぼこ入社前、とある機会があり、鈴廣かまぼこの「謹上蒲鉾」を食べる機会があったのですが、口の中に入れた瞬間に、あまりの弾力に衝撃を受けました。同時にこれまで抱いていたかまぼこのイメージが大きく変わったんです。実際、その日の天候などに応じて、職人さんが当たり前のように調整している姿を見て「なんで今日はそこを変えているんだろう」という前向きな疑問があり、かまぼこ職人の仕事を見える化、数値化したいと思うようになりました。鈴廣かまぼこ入社以降、職人が150年余りの年月受け継いできた技術や知見を「伝統を科学する」というテーマで研究してきました。
加藤:鈴廣のかまぼこの弾力や食感の秘密を解明するのには、どんな苦労があったのでしょうか。
植木:まず情報を得るのに苦労しましたね。職人さんは、当たり前のように毎日かまぼこを作っているので、なぜその条件が最適なのかの原理は誰も教えてくれないんですよ(笑)。いじわるで教えてくれないのではなく、職人さんたちは、長年培ってきた経験をもとに細かい現象を体で把握していて、すごく直感的に仕事をしているんですね。
加藤:職人あるあるですね(笑)。
植木:はい(笑)。だから「確かめさせてください」とお願いして一つ一つの工程を確認していくことにしました。例えば、職人さんが「魚のハラスの部分を取らないとプリッとした弾力が出ないんだ」と言ったら「じゃあ試しにハラスをいれて作ってみましょう」とお願いして作ってもらうんです。そうすると、やはり弾力が出ない。さらに細かく分析してみるとハラスの中にたんぱく質を分解して弾力を弱くしてしまう酵素が含まれていることが分かったんです。このように強引に提案して職人から協力を得て、一つ一つの工程を確かめながら、職人が受け継いできたことを見える化した結果、伝統的職人技の凄さを改めて証明することが出来ました。
加藤:これからの時代は論理的なアプローチが非常に重要だと思います。数値を提示してあげると理解が深まるし信頼度も上がりますから。その一方で、職人のパッションは、数値化できないものです。それらの掛け算ができているからこそ、鈴廣かまぼこにはポテンシャルの高さを感じるのかもしれませんね。
鈴廣かまぼこの美味しさの秘密が解き明かされてきましたね。
加藤:わたしは、お客様が食品を買うときのポイントは、機能性と嗜好性にあると思っています。今回は、鈴廣かまぼこの機能性についてお話してきましたが、実際には、嗜好性、つまり美味しさはとても大切ですよね。
植木:機能性を重視して購入しても、なかなか継続しないので、やはり「美味しい」は大前提ですよね。
加藤:そうなんです。アスリートにとっても継続できるかどうかは非常に大事です。頭で理解することと、継続できることはまた違うんですよね。機能性と嗜好性が備わっている鈴廣かまぼこのことを、もっと多くの人に知ってもらいたいですね。
長友佑都専属シェフ加藤超也: https://instagram.com/cuore_kato?igshid=17ax5j3qdiszm
鈴廣かまぼこ:https://www.kamaboko.com/
書き手:瀬川泰祐(スポーツライター・エディター)
株式会社カタル代表取締役。HEROs公式スポーツライター。Yahoo!ニュース個人オーサー。ファルカオフットボールクラブ久喜アドバイザー。ライブエンターテイメント業界やWEB業界で数多くのシステムプロジェクトに参画し、サービスをローンチする傍ら、2016年よりスポーツ分野を中心に執筆活動を開始。リアルなビジネス経験と、執筆・編集経験をあわせ持つ強みを活かし、2020年4月にスポーツ・健康・医療に関するコンテンツ制作・コンテンツマーケティングを行う株式会社カタルを創業。取材テーマは「Beyond Sports」。社会との接点からスポーツの価値を探る。公式サイト http://segawa.kataru.jp