大通りから路地を御茶の水方面へと２本奥に入り、下町の風情を残す錦華通りを歩くと、木目に黄金の文字がどっしりと構えた看板が目に入る。紺の粋な暖簾をくぐると、江戸の名残を感じさせる趣深い内観が広がる。情緒ある内観は、最近では映画の撮影にも使われたという。若旦那のおすすめは、修行時代にお世話になったお店で習得した『ごぼう天』。素材ならではの食感を残すため、「拍子切り」という切り方をされたごぼうは。天ぷらにするととてもボリューミーな仕上がりになる。歯ごたえ、食べ応え抜群だ。「蕎麦は麺がいいだけじゃあ、だめで、蕎麦に合うつゆが良くないと旨くはならない」と言う若旦那。こだわりの蕎麦、相性抜群のつゆに、食感の良いごぼう天ぷらが合わさり、まさに三位一体の一品である。

神田猿楽町浅野屋
住所　　：東京都千代田区神田猿楽町２－７－６ 浅野屋ビル１F
営業時間：平日１１：００～１５：００／１７：００～２０：００
　　　　　土曜１１：００～１４：００
定休日　：日曜、祝日、第１・３土曜

多くのお客様に愛され続け、神田猿楽町に店を構えること約４０年。そこには天ぷらと蕎麦に対する、旦那の熱い想いが窺える。おすすめの穴子と海老の天ぷらは注文を受けてから、まず表にある生け簀から取り出し、その場で活け締めする。研究熱心な旦那が、ネタを仕入れている魚河岸に魚の捌き方から教わったそうだ。鮮度抜群の食材を使用した天ぷらは、穴子の身はほろほろ、海老はプリッと身が引き締まっていて、殻までサクサク美味しくいただける。昼時には女性のお客様も多く訪れるという。お目当ては、「生粉打ちのそば」と、「変わりそば」がセットになった「二色天もり」に。さらに穴子と海老、数種類の野菜の天ぷらがついた『二色天もり』。「変わりそば」とは、そば粉とつなぎ以外の材料を混ぜ込んで打った蕎麦のこと。日替わりで、挽茶、紫蘇から、伊予柑や桜の花といった変わり種まで、その時々の季節の風味を味わうことができる。長年かけ、さまざまなブレンドを試し続け、今やその数なんと７０種類にも及ぶ。日本の四季の移り変わりを、香りで楽しみ、舌で味わうことのできる、なんとも乙な蕎麦屋である。

松翁
住所　　：東京都千代田区神田猿楽町２－１－７
営業時間：平日１１：３０～１４：００／１７：００～２０：００　　
　　　　　土曜１１：３０～１６：００
定休日　：日曜・祝日・年末年始・お盆

世界一の本の町・神田神保町にあるすずらん通り商店街は、古本店の他にも旨い店が軒を連ねることで有名だ。満留賀　青邨もその一角にある。すずらん通りを竹橋方面へ曲がると、杏子色の壁に真っ白な門構えが見えて来る。中に入ると洒落ているが、飾り立て過ぎない落ち着いた雰囲気が漂う。店の看板メニューは『梅肉入り揚げ蓮根そば』。ジューシーな揚げ蓮根と、梅肉のほんのりとした酸味がよくマッチしており、大根おろしがその旨みをさらに引き立てる。またサックとした衣とシャキシャキの蓮根の歯ごたえは、硬めの蕎麦とも、相性抜群。女性客が多い理由の１つでもある、この店独自の一品だ。蕎麦ももちろん妥協を許さず、店内にある石臼で自家製粉し、手打ちしている。ゆったりとした時間が流れる店内で、引き立ての蕎麦粉を使って打った、コシがあり食べ応えのある蕎麦をじっくりと味わうことができるのが、この店の魅力だ。

満留賀　静邨
住所　　：東京都千代田区神田神保町１－２７　ワイズビル１階F
営業時間：１１：００～１４：３０／１７：００～２０：００
　　　　　※夜の営業は不定休
定休日　：土曜・日曜・祝日

車が止めどなく行き交う靖国通りを横目に進むと、スタイリッシュな黒い看板が目に入る。この店はオフィスビルが建ち並ぶ神田小川町で、お腹を空かせたサラリーマンに強い味方である。品書きには「三段せいろ」があるが二段せいろというメニューは見当たらない。それもそのはず、やぶ仙ではせいろのメニューは頼めば”すべて２枚重ね”で出てくるのだ。初見のお客様では、隠された２段目に気づかない方もいることだろう。まさか1,000円前後のお値段で、本格蕎麦がこんなにも食べられるとは思いはしない。中でもおすすめの『海老天せいろ』は、せいろ２枚に、大きな海老天が２本、さらには色とりどりの野菜の天ぷらが一緒になった、大満足のセットだ。いつもより頑張ったご褒美として、休憩時間にちょっとした贅沢ランチに、または帰りに寄り道して一杯、なんて粋な時間をここ「やぶ仙」で過ごすのはいかがだろうか。

やぶ仙
住所　　：東京都千代田区神田小川町３－６
営業時間：平日１１：３０～１４：５０／１７：００～２１：００
　　　　　土曜１１：３０～１４：５０
　　　　　※蕎麦がなくなり次第、閉店することがあります
定休日　：日曜