毎日の食事で強い体をつくるなら、「かまぼこ」は最強の味方
海に囲まれ、古から魚が重要なたんぱく源だった私たち日本人にとって、いつの時代も海は食を支えてくれる大きな存在です。
相模湾を海の玄関とする神奈川県小田原市も多くの人が海と暮らし、その豊かな恵みを糧に生活しています。
なかでも、この地域を代表するかまぼこ店「鈴廣」は、江戸から150年以上続く老舗。
その老舗を営む家庭に生まれ育ち、小さなころから小田原の魚やかまぼこをたくさん食べてきた鈴廣11代目の鈴木智博さんは、かまぼこの主成分である魚肉たんぱくが、江戸時代から日本人の健康を支えてきた存在であり、さらに栄養バランスが偏りがちな現代、コロナ渦の今だからこそ、その価値をもっと知って食生活に役立ててほしいと考えています。
魚肉たんぱくの重要性を伝えたいという想いは、智博さんの幼いころからの生活で得た実感が根底にあります。
「僕はいつも、かまぼこや魚が食卓に当たり前に並んでいる家で育ちました。
だから、魚肉たんぱくが健康な体づくりに非常に役立っていることを、常に自ら感じています。
たとえば、僕は学生時代にサッカーをしていましたが、試合前に食べるのはいつも肉より魚でした。
食べた翌日パワフルに動けて、しかも体が軽く感じることを分かっていたからです。
軽く感じるのは、魚のたんぱく質は肉に比べて脂肪が少ないので、消化の際に腸にストレスがかかりにくいから。
さらにかまぼこは、作る際に余分な脂肪分がそぎ落とされ、かまぼこ自体が、良質の魚肉たんぱくのかたまりになるのです。
これはまさに天然の栄養食品と言えます」。
おいしい料理や食材には興味があっても、たんぱく質と言われてピンとくる人は、そう多くはありません。
たんぱく質は具体的には人間の体の20%を占め、筋肉や内臓、血液や皮膚、髪の毛など、つまり体そのものをつくっています。
しかし、実際の日本人の食生活は、たんぱく質不足で炭水化物過多の傾向が強いよう。
例えば厚生労働省の調査によると、日本人のたんぱく質摂取量は2000年頃を境に減り続け、十分な量が得られていないことが分かっています。
「食べて健康になる」ということのみならず、「かまぼこ」をつくるのに欠かせない海、山、大地、そして働く人の環境も健やかにしたい。
例えば、「鈴廣かまぼこ」に欠かせない水は、箱根丹沢連山からの豊かな地下水ですが、これを守るには、足柄平野の北西部にある山林の手入れが必要。
木を植えるなどの活動は会社として長年積極的に行われています。
「自然が与えてくれた恵を無駄にせず、かまぼこを通じて人も自然も健やかにしたい」という鈴廣の想いをかまぼこに込めています。
■鈴木智博 プロフィール
平成生まれ。鈴廣蒲鉾の長男として育つ。大学卒業後、商社へ入社。世界中に魚を買い付けに行き、水産のダイナミズムを学ぶ。2015年にかまぼこの伝統を継ぐために鈴廣へ入社。現在はマーケティング部を担当し、かまぼこ市場をどう作っていくか奮闘中。また、日本の伝統の味を受け継ぎ伝えていくユニット「Handred」の一員としても活動している。
■Handred
http://www.handred.net/
■twitter : かまぼこ王子 美味しい厚さは12mm、私の好みは13mm
https://twitter.com/tomohi0420/
photographs by Hiyori Ikai
この記事を書いた人
馬田草織
編集者・ポルトガル料理研究家。料理雑誌などで編集者・ライターとして活躍するかたわら、自宅でポルトガル料理教室を主宰。Web「cakes」にてお酒に合うポルトガル料理を紹介する「ポルトガル食堂」を連載中。
近著『ムイトボン!ポルトガルを食べる旅』(産業編集センター)など著書多数。
http://badasaori.blogspot.com/