江戸から続く、おそば屋さんの粋なたのしみ方「蕎麦前(そばまえ)」。おそばが出てくる前に、日本酒とともにおつまみをいただく文化です。このシリーズでは、鈴廣営業マンが、各エリアのおそば屋さんを訪問。蕎麦前の良さを知る店主のみなさんにインタビューしながら、名店の逸品に触れていきます。今回は、再開発で進化を遂げている京橋にある二八そばの名店「蕎麦きり 京橋 山茂登(やまもと)」(東京都中央区)をご紹介。店主の山本英喜(やまもと・ひでき)さんにお話を伺いました。
江戸から続く、おそば屋さんの粋なたのしみ方「蕎麦前(そばまえ)」。おそばが出てくる前に、日本酒とともにおつまみをいただく文化です。このシリーズでは、鈴廣営業マンが、各エリアのおそば屋さんを訪問。蕎麦前の良さを知る店主のみなさんにインタビューしながら、名店の逸品に触れていきます。今回は、再開発で進化を遂げている京橋にある二八そばの名店「蕎麦きり 京橋 山茂登(やまもと)」(東京都中央区)をご紹介。店主の山本英喜(やまもと・ひでき)さんにお話を伺いました。
―― 山茂登さんは、70年以上の歴史があるんですよね。
当店のルーツは、祖父が麻布で開いた一軒のそば屋です。1951(昭和26)年、ここ京橋に移って「山茂登」を開業。私で3代目になります。ご飯ものも揃えた親しみやすいそば屋としてご愛顧いただいてきましたが、京橋エリアの再開発に伴って一旦閉店。2016年に商業施設「京橋エドグラン」に移転しました。
―― とても明るい雰囲気のお店ですね!
ありがとうございます。半個室も備えていて、そちらはシックな設えにしています。移転後は、以前の店舗では少なかった女性のお客さまが増えるなど、さまざまな客層の方においでいただけるようになりました。一度店を閉めてから5年のブランクがあったのですが、昔なじみのお客さまも来てくださいますね。
―― 山茂登さんといえば、国産素材でつくる「二八そば」が評判です。
移転を機に、二八そばの日本蕎麦店として再スタートしました。江戸前のそばのつるつるとしたのど越しと、そば本来の風味を両方味わえるのが二八そば。北海道や長野県を中心に国産のそば粉を使い、お店で製麺しています。季節によって、茨城県の「常陸秋そば」をお出しすることもありますね。
そばにこだわるお店は多いですが、おつゆも重要です。だしや「かえし」は、先々代の頃からのつくり方をほとんど変えていません。そばつゆ専用の醤油など素材を吟味し、そばの香りが生きた味わいになるよう努めています。
―― 板わさに鈴廣を選んでいただいているのはなぜでしょうか。
移転オープンの際、板わさもより良いものにしようと考えていました。たまたま築地場外を歩いていたときに、仲卸さんに「鈴廣が一押しだよ」と言われて(笑)。鈴廣は大相撲なんかで知名度も高い、一番メジャーなかまぼこ。きちんとした品質で、何よりおいしいので鈴廣に決めました。
―― ありがとうございます! 蕎麦前にぴったりの日本酒を教えていただけますか?
日本酒は、当店の店長と酒屋さんとでチョイスしています。今回おすすめしたいのは「伯楽星 純米吟醸」ですね。これは宮城県の酒蔵さんが、食事に合う「究極の食中酒」を意識して醸造しているお酒。味わいはすっきりとしていて、油ものにもよく合います。板わさはもちろん、どんな料理にも合わせられる「食事のとなりにあるお酒」だと思います。
―― おすすめの蕎麦前のひとつめは「蕎麦の刺身」。初めて食べますが、すごくもちもちしていて、風味も豊かですね!
蕎麦の刺身は、当店の二八そばとつくり方はほとんど一緒なんです。打ち立ての生地を畳んで短冊状に切ったものですが、幅が変わるだけで食感が変わりますよね。つくりたてをお出ししているのでみずみずしく、見た目にも爽やかですし、蕎麦前として人気があります。
―― 次は「焼き味噌」ですが… すごくいい香りで、深い味わいです!お酒にぴったりですね。
もろみの入った白味噌に、かつお節と長ねぎ、ゆずや大葉などを刻んで練り込んでいます。しゃもじに乗せて炙ってふっくらと焼き上げ、仕上げに炒ったそばの実を添えて出来上がり。香ばしい風味で、日本酒に最適な蕎麦前ではないでしょうか。
―― 締めのおそばは、「とろろせいろ」を選んでいただきました。とろろが入ったおつゆが絶妙な味わいで、いくらでも食べられそうです(笑)。
すりおろした大和芋に、冷たいもり汁と温かい薄めのかけ汁を加えてバランスの良い味わいに仕上げています。おかげさまで「食べやすい」と好評をいただいていて、お酒を飲まれた後にぴったりの一品。夏の時期にはとくに注文をいただくことが多いですね。お好みでうずらの卵も加えて召し上がってください。
―― せいろは、弓のような曲線が特徴的ですね。
理由はわかりませんが、当店はずっと弓形のせいろなんです。漆塗りの特殊な器で、今は入手が困難になってしまったので、大切に使っています。
―― 再開発で表情が変化しつつありますが、京橋はどんな街ですか?
再開発に伴って京橋に住む人は少なくなってしまいましたが、働く人が多い街なので活気があります。当店が入居している「京橋エドグラン」のテーマは「歴史と未来の交差点」。ビジネスの最先端の部分と、伝統ある街が融合して、発展していってほしいですね。当店も「まちのおそば屋さん」の良さを残しつつ、のれんを守っていきたいと思います。
―― 最後に、読者のみなさんにひとことお願いします。
当店は小洒落たそば屋ではありませんが、手頃な価格でおいしいおそばを召し上がっていただけるお店です。おいしいお酒と蕎麦前も用意していますので、ぜひ気軽に食べにいらしてほしいですね。
蕎麦前をじっくり味わいながら過ごすひととき―。料理はもちろん、ゆっくり流れる時間やお店ごとに違う空間なども、五感を使って贅沢に楽しめます。
蕎麦前は、ふだんは長居しないおそば屋さんでの時間をより豊かにしてくれる素敵な文化。いつでも、だれでも、手軽に体験できます。このインタビューを読んで少しでも興味を持ったなら、ぜひお店に足をお運びください。
■今回いただいたメニュー ※価格は税込み
板わさ (750円)
伯楽星 純米吟醸 一合(1000円)
蕎麦の刺身 (480円)
焼き味噌 (480円)
とろろせいろ (970円)
■店舗情報
蕎麦きり 京橋 山茂登
〒104-0031 東京都中央区京橋2-2-1 京橋エドグラン B1F(東京メトロ銀座線 京橋駅下車 7・8番出口直結)
TEL 03-3281-0009
営業時間 <月~金>11:00~22:00<土・祝>11:30~15:00
※新型コロナウイルス感染拡大状況により変更の場合あり
定休日 日曜日
銀座、京橋、築地で鈴廣かまぼこの板わさが楽しめるお店をご紹介いたします。
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