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ビールづくりに必要な原料は、水と麦芽(モルト)、ホップ、酵母の4つが基本です。
製造工程はピルスビールもエールビールも一般的には変わりませんが、ピルスは最高で10℃程度と低めの温度で発酵(下面発酵)させるのに対して、エールは20℃前後で発酵(上面発酵)させるのが大きな違い。高めの温度かつ短い時間で発酵させることで、酵母由来の豊かな風味が引き立ちます。クリアでドライなのどごしが持ち味のピルスと比べると、エールは美しい琥珀色やフルーティな香り、深い旨みと、じっくり五感で楽しみながらいただきたいちょっと贅沢なビールなのです。
世界で主流となっているくせのない味わいのピルスと比べると、イギリスの伝統的なビールのひとつであるエールは、銘柄によって味わいに個性があるのも魅力のひとつ。「小田原エール」が目指したのは、”エールらしい濃厚さがありながらも、かまぼこの味を邪魔しないキレのある繊細な味わい”でした。この相反しているようにも聞こえる味わいを実現するため、原料や配合、発酵時間などいたるところに、職人の知識と経験に基づいたさまざまな工夫が凝らされています。
まず、濃厚さのカギとなるのは、麦芽を焙燥する度合いを強めて色を濃くしたカラメル麦芽。香ばしい味わいが特徴のこのカラメル麦芽を使うことで、味噌や醤油にも似た奥深い甘みと苦味を引き出しています。カラメル麦芽は焦げたような苦味もでるので、同じく苦味のもととなるホップは控えめに使用。また、エールビールには一般的に香りの強いエール酵母を用いますが、「小田原エール」にはあえてすっきりとした味わいに仕上がる「箱根ピルス」と同じ酵母を使うことで、甘みや苦味を少しだけ抑えました。こうすることで、上面発酵で引き出した麦芽の濃厚な旨みを際立たせつつ、全体のバランスをとっています。
こうして丁寧につくられた「小田原エール」は、ひと口ふくむと華やかな香りがすっと鼻に抜けて、優しい甘みとほろ苦さが口いっぱいに広がります。芳醇な旨みを前面に感じる印象的な飲み口ながら、後味は不思議とすっきり。まさに、”エールらしい濃厚さがありながらも、かまぼこの味を邪魔しないキレのある繊細な味わい”です。ゴクゴクと勢いよく飲むのではなく、ぜひワインのようにゆったりと召し上がってみてください。
数あるかまぼこのなかで「小田原エール」のベストパートナーを選ぶとすれば、やはり香ばしく濃厚な旨みの揚げかまぼこではないでしょうか。なかでも、エビやゴマなど5種類の味がセットになった「あげかま」は、風味豊かな揚げかまぼこの味わいと個性際立つビールの味わいがお互いを引き立て合って最高のペアリングを楽しませてくれるはず。この「あげかま 」と3種の箱根ビールがセットになった「あげかま&箱根ビールセット」は贈り物にも最適です。
濃厚さとキレのよさを両立し、個性的でありながらバランスのよい「小田原エール」。飽きのこない後引く美味しさを、ぜひ味わっていただきたいです。
Photography by Hiyori Ikai, Written BY Tomoyo Tsuchiya