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「百年ちくわ」はすり身にサバやいりこの出汁を加え、ごま油と生姜をほんのりきかせて焼き上げた一本。出汁がかかった表面は、こんがり焼くとまさに干物や焼き魚のような香ばしさが生まれます。ちくわの身は肉厚でしっかりとした歯ごたえが特徴で、噛みしめるほどに、ぎゅっと詰まった深い旨みが口に広がる一本です。
「焼き魚には味噌やネギ、酒かすが合いますよね。焼きちくわも同様に香味野菜や発酵食品がよくあいます」とかまぼこママさん。
ちくわの中に具材を入れる前にちょっと一工夫。「百年ちくわ」の切り方次第で、食べた時の印象も変わるんだとか。今回かまぼこママさんに二通りの切り方を教えていただきました。
まずは、竹輪の穴を残すように半分に切る方法です。口に入れるときに竹輪の肉厚な食感が残り、穴に詰めた具材があとから口に広がってきます。
もう一つは竹輪を縦に半分に切る方法です。真ん中がへこんだボートのような形になり、凹みに具材を載せます。「ちくわは竹輪と書きますが、長さを残すことで竹のすっとした姿を残したいと思いました」(かまぼこママさん)。
今回、ちくわに詰めた具材は四種類。写真上の左から「ねぎ味噌」「わさびのり水菜」「セロリと青のりとクリームチーズ」、中央の三本には「わさび漬けと芽葱」を合わせています。
「ねぎ味噌ちくわ」
あさつきなどの細い葱を小口切りにし、味噌と混ぜたもの。味噌は小田原で江戸末期・嘉永三年に創業した加藤兵太郎商店の味噌二種を混ぜました。加藤兵太郎商店は、箱根山系の地下水を使い、伝統的な木樽で発酵させています。今回は糀の甘さを感じる「糀こし」味噌に、長期熟成させた深い味わいの「箱根路」味噌のアクセントをプラスしました。
「わさびのりと水菜」
鈴廣のこゆるぎ屋ブランドが発売している「わさびのり」は三重県伊勢志摩産あおさ海苔など天然素材だけで作られています。わさびのりを薄く塗り、食感のいい水菜を載せました。
「セロリと青のりとクリームチーズ」
クリームチーズと青のり粉、細切りにしたセロリを混ぜたものを載せました。ちくわにキュウリは定番ですが、セロリなどシャキシャキ食感の野菜はよく合います。
「わさび漬けと芽葱」
練り物との相性の良いわさび漬けに、香り高く食感も面白い芽葱を合わせました。鈴廣の「わさび漬け」も天然素材だけで作ったオリジナルです。食感を残すためにわさびの茎を粗く刻み、灘吟醸の酒粕「踏込粕」と混ぜ合わせています。発酵の自然な旨みとわさびのみずみずしい食感が自慢の逸品です。
佐賀県有田町にある有田焼の窯元の家に生まれ、美しい器に囲まれて育つ。
子供へのかまぼこ弁当を作り始めたのがきっかけで、かまぼこの飾り切りやレシピを考案。
現在はかまぼこアート、レセプションパーティ等でかまぼこピンチョスや前菜のテーブルコーディネートなども行う。江戸懐石近茶流師範、草月流いけばな師範、日本画家太田慧香氏に師事。
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photographs by Hiyori Ikai/ written by Kaeko Liff