「箱根ビール」は、箱根富士丹沢連山で育まれた名水「箱根百年水」が生み出す、かまぼこに続くもうひとつの新しい食の財産。「箱根ビール」づくりは1997年に始まり、かまぼこの歴史に比べるとまだまだ若い事業ですが、すでに数々のコンペで賞を獲得している実力派です。
サーバーから注がれる、「箱根ビール」の生!ぽってりクリーミーな泡と黄金色のぴちぴち弾ける液体が、細長いグラスの中で静かに揺れています。
ひとくちごくりと飲めば、ほのかな苦みや酸味、香りが口の中から鼻を抜け、ひんやり爽やかなのどごしが、暑い季節にはたまらない心地よさ。
じめっとした日本の夏の暑さを、スパッと切ってくれるような味わいです。
この土地の宝物は、箱根山系の雨が百年以上もの歳月を掛け、大地の中でろ過された清冽な伏流水。日本では珍しい中硬水で、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルを程よく含みながら、鉄分が少なくまろやか。
この地下水があるからこそ、箱根の個性を生かした「箱根ビール」ができます。
醸造所のすぐ裏にも御覧の通り、箱根の山から海へと流れる川が流れています。
水に恵まれていることを感じさせてくれます。
さらにもうひとつ大切なのが、どんな味わいを目指すかということ。
良いかまぼこというものが、魚のうま味を力強く上品に引き出したものだとすれば、同じ水を使う「箱根ビール」もそうありたい。
ビールに特に思い入れのない方が飲んでも「おっ!」と思ってもらえるような、きれいな味にたどり着けたらと考えています。
遠くからも目を引く、ビッドなオレンジと上品なグレーの組み合わせ。鉄道好きでなくとも、近寄って思わず中を覗きたくなるレトロ可愛い車両。
引退した箱根登山電車「モハ1形107号」を整備し、2019年9月、鈴廣の新たな飲食スペース「えれんなごっそCAFÉ107」としてオープンしています。
かまぼこの里の中でも随一のポップさを感じる場所です。
→Vol2へ続く。(9月1日公開予定)
醸造所長が思う“良いビールってなんだろう”
photographs by Hiyori Ikai
この記事を書いた人
馬田草織
編集者・ポルトガル料理研究家。料理雑誌などで編集者・ライターとして活躍するかたわら、自宅でポルトガル料理教室を主宰。Web「cakes」にてお酒に合うポルトガル料理を紹介する「ポルトガル食堂」を連載中。
近著『ムイトボン!ポルトガルを食べる旅』(産業編集センター)など著書多数。
http://badasaori.blogspot.com/