フレイルとは、健常から要介護へ移行する中間の段階のことと言われています。
健康状態は、健康>フレイル(虚弱)>要支援>要介護
の経過をたどりますが、しっかり対策することによってフレイル→健康へ、要支援→フレイルへと戻る可能性があります。
しかし一度要支援になってしまうとフレイルに戻る可能性は、フレイル(虚弱)から健康へ戻るより難しくなると言われています。
早くから対策をとることが大切というわけですね。
「虚弱」を意味するFrailty(フレイルティー)から生まれた言葉です。
サルコペニアやロコモティブシンドロームと言われる筋肉や骨の虚弱といった身体的な要素に加え、孤立や経済的困窮などの社会的要素や、認知症やうつなどの精神・心理的要素を加えたもので構成されます。
具体的には、加齢に伴い筋力が衰え疲れやすくなるのに加え、社会的な活動への関心も薄れ、家に閉じこもりがちになるなど、年齢を重ねることで生じやすい衰え全般を指してします。
フレイルの基準にはいくつかあるそうですがFreidが提唱したものによると、以下のうち3個以上あてはまったらフレイル。1~2個でも前段階である疑いがあるといわれています。
引用:長寿科学振興財団 https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/about.html
1.体重が減った
2.疲れを感じる
3.日々の活動量が減った
4.のろのろ歩きになった
5.社会的に交流する機会が減った
フレイルの原因はいくつかありますが、大きなもののひとつが「慢性的な低栄養」です。
「加齢によって食欲が減る→低栄養→筋肉が減ってしまう→疲れやすい→外へ出なくなる→お腹が空かない→さらに食欲が減る・・・」のサイクルとなって徐々に衰弱してしまいます。
ここで大切なことはまず、「しっかりタンパク質を摂る」ことです。エネルギーとなる糖質や脂質に加え、筋肉や身体を維持するのに必要なタンパク質を充分に食べることです。具体的には、肉や魚、卵や乳といったタンパク質を豊富に含む食品を残さずに食べることが大切です。
また「食べる」という動作は単に食欲だけでなく、歯がしっかりしてだ液も充分にでるなど口腔環境を整えることにもとても重要です。
商品の裏表示をみて、含まれるタンパク質が多ければ良いと言うことではありません。特に食材によって吸収効率が異なるうえに、歳を追うごとにタンパク質を食べることが億劫になるので、より質の高いタンパク質を選んで摂ることが、とても重要なのです。
くわしくは「シニアのタンパク不足解消!良質なたんぱく質の選び方~その1~」を参照ください。
忙しい朝は、冷蔵庫から出してそのまま食べられるものがオススメです。どんなに忙しくても、「パンとコーヒーだけ」「ごはんをふりかけで」など単品食にならないよう心がけてください。余裕のある日曜日などにおかずをまとめて作っておくとよいでしょう。
ごはん食=かまぼこ(魚肉)、ちくわ(魚肉)、みそ汁(大豆)、納豆(大豆)、豆腐(大豆)、干物(魚肉)、小魚の佃煮(魚肉)、煮豆(大豆)、など
パン食=チーズ(乳)、ハム(畜肉)、ウインナー(畜肉)、ベーコン(畜肉)、スパム(畜肉)、牛乳(乳)、目玉焼き(卵)、卵焼き(卵)、など
こうしてみると、和食のたんぱく質は魚と豆が多く、洋食は肉と乳が多いですね。
コンビニ利用の場合 ・・・ごはんとおかずがついたお弁当タイプを。サンドイッチはハムや卵などタンパク質入りを。プラス一品としては、ゆで卵やサラダチキンは手軽で高たんぱくなのでオススメです。
自宅で簡単に ・・・ラーメンなどもスープと麺にもタンパク質は入りますが、スープには塩分が多く含まれるので、飲み干さずに。そのぶんちくわや魚肉ソーセージなどをトッピングしましょう。
ジェルドリンクや野菜ジュースなどは「栄養満点で健康そう」と思いがちですが、エネルギー源となる糖質をとることはできますが、意外とタンパク質は少ないものです。栄養バランスを考えて選ぶようにするとよいと思います。
お肉やお魚を食べやすくする工夫をするといいでしょう。肉団子にはおからや豆腐を混ぜることでほろほろと軟らかく仕上がります。
またお魚の切り身を軽く揚げて、野菜たっぷりのあんかけにすると、とろみがついてとても食べやすくなります。
若い頃好きだったカツやステーキも、薄切り肉を薄く切ったさつま芋と交互に重ね合わせてカツレツ風に揚げると、歯切れのよい食感にすることができます。芋の代わりに白菜やエリンギなど他の食材を使ってもバリエーションが生まれておもしろいですよ。
自炊がなかなか難しいという方は、宅配弁当のサービスを利用されてもよいでしょう。最近では高齢者メニューとして、さまざまな疾病に対応していたり、歯茎でつぶせるやわらかいメニューなどが次々と開発されています。ご自身の状態に合わせて選んでください。
また最近では、たんぱく質を分解したペプチド・アミノ酸のサプリメントが数多くでていますので、少食の方や肉魚が苦手な方などは積極的に取り入れてみるのもよいでしょう。
特にペプチドのサプリメントは吸収効率が良く、疲労感軽減効果もありますのでオススメです。
ペプチドとは、たんぱく質が消化酵素で分解され、アミノ酸が数個固まった状態のこと。アミノ酸を2~3個まとめて取り込めるため、効率的に体内に補給することができます。肉や魚のたんぱく質からアミノ酸を摂ろうとすると、消化され吸収されるまでに3~4時間かかりますが、ペプチドでは、既に分解された状態ですので30~40分で吸収されていきます。
筋肉を増やすには、タンパク質を摂るだけではなく適度な「運動」が欠かせません。高齢者の場合、膝や関節に故障を抱えることも多いため、オススメのトレーニングはいすからの立ち上がり運動や、プールでの水中ウォーキングなど、足腰の大きな筋肉を使う運動を毎日続けることをおすすめします。
「年のせいだから」と体の不具合をあきらめていると、知らず知らずにフレイルになっている怖さがあります。またウォーキングや体操など対策しているし、朝昼晩3食しっかり食べているから大丈夫!という方でも、意外と栄養状態がわるかったという例もあります。
具合が悪くならないうちに、より元気で健康な自分自身を維持するようぜひ実践してみてください。