「タタミのヘリにつまずいてヒヤッとした。」「椅子から立ち上がったらフラついてしまって…。」など、最近思わず「ワッ危ない!」と感じたことありませんか?
近年高齢化が進んだことで、ケガで救急搬送される高齢者が年々増え続けています。この5年間をみても搬送者の総数はおおよそ変わらないものの、そのうち約半数が65歳以上の高齢者となっていて、その割合は年々増加傾向にあります。
では、高齢者のケガがなぜ、どんな場所で起きているのでしょう?その特徴を知ることで、明日からのケガ予防に役立ててください。
誰しも歳をとればいろいろなところが衰えてくるものですが、衰える部位によってもそのリスクは異なります。
視力の低下や運動機能の低下によってケガをしやすくなってしまうことはもちろん、転倒によって負うケガもより重傷化する傾向にあります。
また、痛みを感じにくくなるので病院に行くのが遅れたり、免疫機能が低下して治癒回復が長引いたりと、老化によって高まる健康リスクにはいろいろな種類があるのです。
東京都で起きた救急車で搬送された人の受傷原因をみてみましょう。
ケガが発生した原因をみると、そのほとんど、80%は「ころぶ」となっています。つまり、救急車で運ばれた人10人中8人は、転倒によるケガによるものであると言えます。
そして、ケガを起こした場所は、外出先でも道路でもなく…そのほとんどはなんと「ご自宅」なのです!
自宅のどこで事故が起きているのかを想像してみましょう。段差の多い玄関でしょうか。それとも滑りやすい浴室・脱衣所でしょうか?
調査の結果をみると、意外なことにもっとも身近な居場所「居室・寝室」で圧倒的に発生していることが分かります。その差は居室・寝室での発生10万人に対し、2位以下は数千人と10倍以上のひらきがあります。
さらに事故原因ワースト3が、1位「家具」、2位「階段」、3位「床・畳」となっており、4位以下の「段差」や「浴槽」をおさえてダントツの事故原因となっています。
慌てていてリビングのソファにつまづいた、茶だんすに手を掛けたが滑ってしまった、絨毯のヘリにつまずいた、イスに上手く腰掛けられずに転倒した…。など、普段やり慣れた、何気ない動作の中に危険が潜んでいることがわかります。
さらに、高齢になると複数の薬を飲んでいらっしゃる方も多いものですが、それらの副作用によりめまいがしたり、眠気に襲われたりしてころんでしまうケースもあるようですので、注意が必要です。
また、地震などの際、転倒されケガをした高齢者の約88%が「揺れでバランスを崩す」「避難時に段差等につまづく」ことが原因でした。緊急時にも慌てず、足下をよくみて落ち着いて行動するようにしましょう。
家の中の危険な場所を見ておきましょう。特に「居室・寝室」にはつまづく原因となるモノを置かないように。また敷居や段差にスロープをつけて解消するのもよい手です。さらに絨毯の端がめくれているとつまずく原因ですので、テープで留めるなど対策をとっておきましょう。
また、滑りやすい玄関の上がりかまちや廊下・階段に滑り止めをしたり、薄暗いトイレや玄関先には足下灯や人感センサー照明を設置するとよいでしょう。
高齢者がつまずきやすいのは、「足が充分に上がっていない」または「つま先が下がりすり足になってしまう」のが主な原因です。加齢と共に筋力が低下したり姿勢が悪くなったりすることで、本人も気づかぬうちに歩き方が変わってしまっていることがあります。
これを防ぐためには、日頃から筋力維持のために適度な運動と、筋肉のもとになるたんぱく質を含む食品をしっかり食べることが重要です。
特に、たんぱく質は消化器官の衰えや食の細まりと相まって、しっかり食べていても充分な吸収摂取がだんだんと難しくなります。ウォーキングや体操など運動しているのに筋肉が付いてこない…と言う方は、食事の栄養バランスを見直してみるとよいでしょう。
1日に必要なタンパク質量は、体重kg分のグラム数、例えば体重60kgの方なら60gが必要と言われています。一度に摂ろうとしても、全て身体に吸収されていきませんので、3食に分けて万遍なく摂取できるのが理想的です。
最近では、たんぱく質の消化吸収をよくしたペプチド・アミノ酸の健康食品が数多くでていますので、少食の方や肉魚が苦手な方などは積極的に取り入れてみるのもよいでしょう。
ペプチドとは、たんぱく質が消化酵素で分解され、アミノ酸が数個固まった状態のこと。アミノ酸を2~3個まとめて取り込めるため、効率的に体内に補給することができます。肉や魚のたんぱく質からアミノ酸を摂ろうとすると、消化され吸収されるまでに3~4時間かかりますが、ペプチドでは、既に分解された状態ですので30~40分で吸収されていきます。
高齢者は体調が日々変わりやすくなってきます。家族やご近所の方々とお付き合いを密にして、万が一のときには協力しあえる関係をつくっていきましょう。まずは、ゴミ出し時にあいさつしたり、天気の良い日はお散歩にでるようにして顔を覚えたり、覚えてもらうことから始めてみてはいかがでしょうか。
いかがでしたでしょうか。「老化による衰え」といっても様々な機能低下が複合的に重なり合って起きていることが分かると思います。日頃の生活や環境をちょっと見直してみることで、その危険はグッと抑えることができます。ぜひさっそく実践してみてください。
※データ出典:東京消防庁 平成23年報道発表資料より改変