空気が乾燥し、気温が低くなると流行する季節性インフルエンザ。
毎年多くの感染者が出ているため、かかったことがある人は多いかもしれません。
その症状はとてもつらく、誰もが二度と感染したくないと思いますが、高齢者は感染すると重症化しやすいため特に注意が必要です。
高齢者がインフルエンザに感染するとどのように重症化するのか、そして、重症化しないためにインフルエンザを予防する方法を解説します。
日本では例年12月から翌年3月頃まで季節性インフルエンザが流行します。
冬は空気の乾燥によりウイルスが空中を漂う時間が長くなり、人の鼻や口の粘膜からウイルスが侵入しやすくなるからです。
気温が低いとウイルスに抵抗する力が弱くなるのもその理由のひとつ。
インフルエンザは、急な発熱や頭痛、筋肉痛や倦怠感などの症状があり、年齢問わず気をつけたい感染症です。
中でも、高齢者は合併症を起こし重症化しやすいので特に注意しなければいけません。
一般的に高齢者は免疫力が低く、持病を抱えていることも珍しくありません。
そのため合併症を併発する可能性が高いと考えられています。
合併症により入院治療が必要になるケースや、死亡するケースがあり、これをインフルエンザの重症化といいます。
上記のようにインフルエンザによる合併症はいくつもありますが、年齢層によってかかりやすいとされる合併症があります。
高齢者の場合は肺炎です。高齢者はインフルエンザから肺炎を合併する率が高いと言われており、気をつけなければいけません。
肺炎は日常でも耳にする機会があるため、それほど強い危機感を覚えない方もいるかもしれません。
しかし、肺炎は世界で最も一般的な死因の一つと言われています。
肺炎の症状として咳やたん、息切れ、などがありますが、高齢者の場合はこういった典型的な症状がはっきりと現れず、急激に症状が進み心不全を起こすこともあるので注意が必要です。
たとえ重症化を防ぐことができても、肺炎の治療後に足腰が弱るということも考えられます。
リハビリが必要になったり、寝たきりのきっかけになったりすることも少なくありません。
高齢者が身の回りのことを自分でこなし、趣味を楽しむなど充実した日々を変わらず過ごすには、インフルエンザを予防することが大切です。
インフルエンザを予防する有効な方法として、次の5つが挙げられます。
流行前にインフルエンザワクチンを接種することは有効な方法です。
しかし、「ワクチンを接種してもインフルエンザにかかった」という声を聞いたことがあるかもしれません。
現行のインフルエンザワクチンは、インフルエンザの感染(インフルエンザウイルスが体の中に入ること)を完全に抑える働きはありません。
しかし、発病(インフルエンザの症状が出現すること)を予防する効果や、発病後の重症化や死亡を予防する効果はあるとされています。
また、「毎年接種する必要がある?」と考える方もいるのではないでしょうか。
インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行すると予測されたウイルスを用いて製造されています。
そのため、毎年の接種を検討したほうが良いと考えられています。
流水や石鹸での手洗いは、手指についたインフルエンザウイルスを除去する有効な方法です。
アルコールで手指を消毒することも効果があります。
外出先での食事前や、不特定多数の方が触れた手すりなどを触った後などには、アルコール製剤で手指を消毒しましょう。
空気の乾燥により気道粘膜の防御機能が低下すると、インフルエンザにかかりやすくなります。
加湿器などを用いて、室内の湿度を50~60%に保つようにしましょう。
十分な休養とバランスのとれた栄養摂取は、体の免疫力を高めるために重要です。
免疫力を高めるために摂りたい栄養素については後述します。
インフルエンザの感染経路は、飛沫感染と接触感染です。
人混みでは感染者のくしゃみや咳などによりウイルスが放出されたり、感染者がくしゃみや咳を押さえたその手で周りの物に触れたりしています。
こうした飛沫感染や接触感染を避けるために、人混みへの外出は控えたほうが良いでしょう。
なぜ十分な休養とバランスのとれた栄養摂取が大切かというと、免疫力を高めることができるからです。
免疫力が低下している人がインフルエンザにかかると、重症化する恐れがあります。
免疫力とは、体にウイルスなどが侵入しないよう自己防衛する機能のこと。
加齢により免疫力は低下しやすいですから、日頃から免疫力を高めることを意識する必要があります。
免疫力を高めるにはウイルスと戦う免疫細胞を増やさなければいけません。
免疫細胞の主成分は「タンパク質」です。タンパク質を多く摂取すると免疫細胞が増え、免疫力がアップします。
その逆に、タンパク質が不足していると免疫力が下がってしまうので注意しましょう。
タンパク質は、体重1キログラムあたり1グラム必要と言われています。
1日のタンパク質の摂取量(成人の場合)は、体重60キログラムの人は1日60グラムが目安です。
ただし、高齢者は食が細くなり、タンパク質の吸収力も落ちるので、意識してタンパク質の摂れる食事を心がけたほうが良いでしょう。
上記のように、タンパク質は摂取しやすい食品に含まれていますが、最も効率良く摂取できるのは魚です。
タンパク質をしっかり摂取したくても、肉や乳製品に多く含まれる脂肪分が気になる……ということがありますが、魚なら低カロリーで低脂肪なうえに高タンパク。
良質なタンパク質を効率よく摂取できます。
「良質なタンパク質」とは、必須アミノ酸がバランス良く含まれているタンパク質のことを言います。
必須アミノ酸はバランス良く含まれていることが大切で、図右の小麦タンパクの様に一つでも欠けているものがあると、その値までしか次のタンパク質合成が行われず、他は体外に排出されてしまいます。
図の魚肉タンパクの様に全てのアミノ酸がバランス良く含まれていると、効率良くタンパク質の合成が行われるのです。
アミノ酸の含有バランスは「アミノ酸スコア」と呼ばれ、魚肉タンパクの様に理想量全て満たしているものが「アミノ酸スコア100」で良質なタンパク質と言えます。
もちろん、免疫力アップに必要なのはタンパク質だけではありません。
鼻やのどの粘膜を正常に保つために必要なのはビタミンA、免疫細胞である白血球をサポートしてくれるのはビタミンC、免疫力の低下を防ぎ、血行を促進する効果があるのはビタミンEです。
日頃からタンパク質を意識した栄養バランスの良い食事を摂ることが大切です。
インフルエンザは、発熱や頭痛、筋肉痛や倦怠感などのつらい症状があるため、年齢問わず気をつけたい感染症です。
中でも高齢者は重症化の恐れがあるため、特に注意しなければいけません。
ワクチンの接種や正しい手洗いなどでインフルエンザを予防しましょう。
そして、インフルエンザはもちろん、さまざまな感染症から身を守るためには免疫力アップが不可欠。免疫力を高める食事を日頃から意識しておきたいですね。