習慣的な運動は、高齢者にとってさまざまなメリットがあります。しかし、体の痛みや体力の衰えから、運動に不安を感じている人も多いのではないでしょうか?この記事では無理なくできる運動の方法や頻度、安全に取り組むための注意点をご紹介します。
高齢者が運動を習慣的に行うことは、健康長寿を目指すうえでさまざまなメリットがあります。また、運動の種類によっても体への影響が異なるのです。ここでは、運動の主なメリット7つと、効果的な運動の種類をご紹介します。
加齢によって筋肉が衰えると、持久力が低下して疲れやすくなる、活動量が減少するなどの変化が起こります。この状態は虚弱を表す「フレイル」と呼ばれ、要介護状態を引き起こす原因の一つです。
筋肉量を維持・増加させるには、筋トレが必要です。また、高齢者はウォーキングなどの有酸素運動を合わせて行うことが筋肉の合成に効果的といわれています。
運動は骨密度にも関係し、骨粗鬆症の予防に役立ちます。骨密度を増加させるために必要なのは、縦方向の物理的な刺激です。水中運動よりも、陸上で行うウォーキングやジョギング、筋トレなどで骨粗鬆症の予防効果が期待できます。
骨粗鬆症になると骨がもろくなり、転んだりぶつけたりすることで簡単に骨折してしまいます。骨粗鬆症による骨折も、要介護状態を招く原因の一つです。
腰や膝が痛いからといって安静にしていると、筋力が低下し関節も固くなるため、さらに負担が増して痛みが悪化します。体操やストレッチなど、無理のない範囲で身体を動かし、筋力を維持することが重要です。また、運動すると血流がよくなるため、腰や膝の痛みを和らげる効果も期待できます。
高齢者の腰痛や膝痛は歩くのを億劫にさせ、活動量の減少によって運動機能の低下や体重増加を引き起こします。また、外に出なくなることで精神的・社会的な衰えにもつながります。
糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、肥満が原因の一つです。運動によって消費エネルギーが増え、体重や内臓脂肪量が減少することで、肥満の予防や改善につながります。また、それぞれの生活習慣病の改善にも関係することが知られています。
運動することで血行がよくなり、免疫細胞が活性化するため、免疫力の向上につながります。さらに、適度な運動は肺や心臓を強くし免疫力を向上させるので、風邪や高齢者に多い肺炎の予防にも役立つでしょう。
運動によって脳の血流や酸素供給がよくなることで認知機能が改善し、高齢者の認知症の発症を予防することが知られています。毎日単一の同じ運動だけをするのではなく、筋トレや有酸素運動などさまざまな種類の運動を組み合わせて行うとより効果的です。
ウォーキングや体操など一定のリズムで行う運動は、脳内のホルモンであるセロトニンの分泌を促す働きがあり、精神の安定につながります。また、運動によって体力や体型、健康状態に自信がつくことも気分の向上に役立つでしょう。
高齢者が運動のメリットを得るためには、どのくらいの時間や頻度が必要なのでしょうか。厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」に示された基準をみてみましょう。
この基準では、日本人の全世代に向けた運動量の目安を30分以上・週2日以上としています。筋力や持久力の維持向上のため、高齢者では認知症予防のためにも、このペースでの運動が必要とされています。
取り組みやすい強度や回数で運動を始め、30分以上・週2回以上を目指しましょう。
65歳以上では、「横になったままや座ったままにならなければどんな動きでもよいので、身体活動を毎日40分以上行う」ことが基準になっています。これは、生活習慣病や生活機能の低下を防ぐことを目的とした基準です。
運動以外にも、洗濯や掃除、階段での移動など、日常生活での活動も身体活動に含まれます。スポーツ以外にも、種類を問わず動くことを生活の中で意識してみましょう。
まったく運動習慣がない人は、いきなり30分の運動や40分の身体活動は難しいかもしれません。その場合、まずは1日10分から動く時間を増やすのがおすすめです。生活習慣病や生活機能低下のリスクが減少するといわれており、身体活動基準でも推奨されています。
出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」
ここでは、高齢者が健康を保つためにおすすめの運動をご紹介します。負荷が少なく、生活に気軽に取り入れられる運動ばかりです。ぜひ実践してみてください。
ストレッチや体操は、室内でも手軽にできる運動です。テレビを見ながら、トイレに立ったついでにと、簡単にできるストレッチをご紹介します。そのほかにも、歯磨きしながら、料理の合間など、行いやすい時間を見つけて取り組んでみましょう。
テレビを見ながら座ったままできる運動を行い、活動量を増やしましょう。
トイレに立ったついでにストレッチや体操を行い、運動量を増やしましょう。
ウォーキングは、無理なく実践できる運動の一つ。出かけるときに少し遠回りする、遠くの店まで買い物に行く、バス停一つ分歩くなど、生活の中に組み込んで行うのがおすすめです。
より効率よく筋力や持久力を向上させる方法が、普通の速度の歩行と早歩きを交互に行う「インターバル速歩」です。
インターバル速歩では、「ややきつい」と感じる程度の早歩きで3分歩いた後、普通の速度で3分歩きます。回数の目安は1日5セット以上、週4日以上が効果的です。5セットは一度に行っても、朝と夜など数回に分けて実施してもかまいません。
インターバル速歩は筋力と持久力を向上させるだけでなく、生活習慣病の改善、膝痛の軽減、骨密度や認知機能の改善にも効果が示されています。
筋トレを行うと筋肉量が増え、体力アップにつながります。歩行機能を改善し、つまずいたり転んだりすることを予防するためには、筋肉量を増やす筋トレが必要です。
ここでは、高齢者でも無理なく取り組める軽い筋トレをご紹介します。週2回の実施を目安に取り組んでみましょう。
ふらつく場合は椅子の背や壁などに手を添え、体を支えながら行いましょう。お尻やふくらはぎの筋肉を鍛えられます。
【脚上げ】
脚上げでは太もも、もも上げでは腹筋が鍛えられます。
椅子を使うことで、普通のスクワットより負荷を減らせるでしょう。股関節の曲げ伸ばしを意識することで、膝への負担がより軽くなります。
二の腕や胸の筋肉を鍛えられる運動です。5〜10回を目安に行いましょう。膝を伸ばした通常の腕立て伏せよりも、負荷を減らして実施できます。
高齢者の無理な運動は、転倒や骨折などのリスクを高めるため注意が必要です。運動するうえでの注意点を押さえて安全に行いましょう。
今回ご紹介した運動は、いずれも大きな負荷がかからない運動です。しかし、体力や体調には個人差があります。難しいと感じた場合は無理をせず、できる強度の運動を行いましょう。
また、ウォーキングや筋トレの前後にはストレッチを行い、筋肉をほぐすのがおすすめです。筋や関節も柔らかくなり、ケガや疲労の予防につながります。
高血圧、糖尿病といった病気や、腰痛・膝痛などの症状がある状態では、運動が制限される場合もあるでしょう。不安な点はかかりつけの医師に相談してから実施しましょう。
高齢者は体内の水分量が少ないうえ、加齢によって暑さやのどの渇きといった感覚が鈍くなるため、水分が不足しやすい傾向にあります。汗をかく暑い時期はもちろん、のどが乾いた感覚がなくても、運動の前後や運動中にこまめに水分補給をしましょう。
運動による筋肉量や骨量の増加を期待するなら、筋肉を作るタンパク質や骨を作るカルシウムなどの栄養素を十分に摂取することが大切です。さらに、筋肉・骨の合成に関わる栄養素や、運動時のエネルギー源になる栄養素も必要です。
食事を見直し、さまざまな種類の栄養素をバランスよく摂取できるよう心がけましょう。バランスのよい食事の基本は、主食・主菜・副菜を揃えることです。ご飯・パン・麺などの主食、魚・肉・卵・大豆製品を使った主菜、野菜・海藻・きのこ類を使った副菜を組み合わせましょう。
さらに、果物や乳製品を1日に1回取り入れると、ビタミンやミネラルを補うのに役立ちます。食事からのタンパク質不足が気になる場合は、サプリメントで補う方法もおすすめです。
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運動前のタンパク質補給にも「サカナのちから S forシニア」がおすすめです。
高齢者にとって運動は、筋力や持久力を維持向上させることでフレイルを予防し、要介護状態を引き起こさないために重要です。また、骨粗鬆症や認知症など、さまざまな病気の予防・改善にも役立ちます。
このように高齢者の運動には大きな意義がありますが、実施方法を間違えると病気や腰痛などの悪化にもつながります。長く健康を保てるよう、取り組みやすい種類や無理のない強度の運動を選び、健康のために実践を続けましょう。