加齢によって心身の機能が衰えた状態を「フレイル」といいます。要介護の一歩手前の状態とされていますが、対策を行えば健康な状態に戻ることが可能です。この記事では、いつまでも健康で元気に過ごすためのフレイル対策に大切な3つの要素を解説します。
フレイルとは、加齢によって筋力や認知機能などの心身の活力が低下した状態です。健康と要介護の間の段階と考えられています。医学用語であるfrailty(フレイルティ:虚弱)の日本語訳として、日本老年医学会が2014年に提唱しました。
日本人のフレイルの評価基準に「改定J-CHS基準」があります。下記の5項目のうち、3項目以上に該当すると「フレイル」とされます。1~2項目に該当した場合は、フレイルの前段階である「プレフレイル」の状態です。
出典:国立長寿医療研究センター フレイル研究部:健康長寿テキスト
フレイルは、身体的要素、精神・心理的要素、社会的要素の3つで構成されます。フレイルを予防するには、これらの3つの側面に対してそれぞれ適切な対策を行う必要があります。
筋力低下や骨粗鬆症、変形性関節症などの体の変化が挙げられます。また、低栄養や咀嚼・嚥下がしにくくなる口腔機能の低下もフレイルに影響します。
高齢になり、筋肉量や筋力が低下すると活動量が減り、必要なエネルギー量も低下するため食事の量も減っていきます。すると低栄養状態となり、筋力がますます低下するのです。この悪循環を「フレイルティサイクル」といい、要介護状態を引き起こす可能性を高めます。
さらに、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の発症・進行もフレイルの進行につながります。
加齢に伴う精神・心理的な衰えとして、認知障害が挙げられます。物忘れや注意力、遂行力などが低下した状態で、これらが進行すると認知症となります。また、うつ状態もフレイルの要因です。
退職や家族との死別で人や社会とのつながりが減り、孤立や孤食、閉じこもり、経済的困窮などを引き起こすこともフレイルの要因の一つとされています。
自分で簡単にフレイルチェックができる方法として、「指輪っかテスト」と「イレブン・チェック」が考案されました。ここでは、それぞれの方法を解説します。自身の状態を確認し、フレイル対策に役立ててみましょう。
両手の親指と人差し指で輪を作り、利き足ではない方のふくらはぎの一番太い部分を軽く囲みます。囲めないか、ちょうど囲める場合はフレイルの危険度は低いといえます。
指とふくらはぎの間に隙間ができた場合は、加齢によって筋力が低下している状態なため、フレイルが進行するリスクが懸念されるでしょう。この記事の後半で紹介するフレイル対策を実践し、筋力の向上を目指すことが重要です。
フレイル対策に必要とされる、栄養や口腔機能、運動、社会参加の状態を確認しましょう。
回答した項目ごとに、適切な対策によって改善する必要があります。
出典:東京大学高齢社会総合研究機構 飯島研究室「フレイルを知ろう」
フレイルは、要介護状態の前段階と考えられている状態です。適切な対策を早めに行い、要介護状態に進行するのを予防する必要があります。
多くの人が、フレイルの状態を経て要介護状態になるといわれています。筋力低下や骨粗鬆症などの状態は転倒のリスクを高め、骨折によって寝たきりになることで要介護状態を引き起こしやすくなります。
フレイルになる前の段階を「プレフレイル(前虚弱)」といいます。プレフレイルのうちから対策し進行を防ぐことは、要介護状態に陥るのを避けるのに効果的です。
ただし、仮にフレイルになった場合でも、適切に対策し心身の状態を改善させれば、健康な状態に戻れます。フレイルやプレフレイルに気づいた段階で対策を始めることが大切です。
東京大学高齢社会総合研究機構によって、高齢者2,000人を対象とした大規模調査が行われました。その結果、栄養、運動、社会参加の3つの対策をバランスよく実践することが、フレイル対策に重要であることが明らかになりました。
ここでは、フレイル対策の3つの柱に沿って、心身の健康状態を改善するための取り組みを解説します。日頃の生活状況を振り返り、自分に必要な対策を取り入れてみましょう。
対策の柱の1本目は、栄養です。食事は1日の活力の源であり、健康な体を作る材料としても大切です。
食事は1日3食しっかりとるのがフレイル対策の基本です。食事を抜くと、エネルギー源や体を作るために必要な栄養素が不足し、フレイルを引き起こしやすくなります。また、食事を抜く習慣がある人では、死亡リスクが高まることも知られています。
フレイルを予防するには、バランスのよい食事が大切です。炭水化物がとれる主食、タンパク質を含む主菜、ビタミンやミネラル、食物繊維がとれる野菜・海藻・きのこなどの副菜を揃えてとり、毎日の食事から対策しましょう。
特にフレイルを予防するには、タンパク質の摂取が重要です。高齢者は、タンパク質が不足すると筋肉が衰え、フレイルに陥りやすいことが知られています。フレイル対策のために、魚、肉、卵、大豆製品などのタンパク質源となる食品を、1食に手のひら1枚分を目安にとりましょう。
また、乳製品からもタンパク質がとれます。乳製品に含まれるカルシウムを摂取することで骨量を維持し、骨粗鬆症の予防にもつながります。牛乳であればコップ1杯、ヨーグルトであれば2個(200g)程度をとるのがおすすめです。
タンパク質の摂取が不足する場合は、サプリメントで補う対策方法もあります。鈴廣かまぼこの「サカナのちから S for シニア」は、吸収されやすい魚肉ペプチドからタンパク質を効率よく摂取できるサプリメントです。魚のアミノ酸が、健康で若々しく元気な毎日をサポートします。
「サカナのちからS」は、小粒のサプリメントなのでお手軽にタンパク質を摂取できます。毎日の食事だけではタンパク質不足が気になる方は、フレイル対策に魚肉たんぱくを取り入れましょう。
フレイル対策のためには、よく噛んで食べることも大切です。
フレイルが起こる前兆として、食べこぼすようになった、固いものが噛めなくなった、むせることが増えたなどの口腔機能の低下がみられることがあります。これを放置すると、心身の機能低下につながることが知られています。
柔らかいものばかりを食べていると、噛む力がどんどん低下するため、きのこや海藻、根菜など、適度な歯ごたえのあるものを取り入れ、よく噛んで食べるのがおすすめです。また、対策として食材を大きめに切るのもよく噛むことにつながります。
対策として運動などで体を動かすことも、心身の機能を改善し、フレイルを予防するのに役立ちます。
軽い運動でも、継続して行うことで死亡リスクの低下につながります。また、筋力の低下も防げるため、転倒・骨折による寝たきりのリスクも軽減できます。
ウォーキングやストレッチ、スクワットなどの自重での筋トレなど、現在の体力に合わせて無理なくできる運動から対策を始めてみましょう。椅子に座って立つ動きを繰り返すと、膝に負担がかからない軽いスクワットになります。また、寝転んで足の上げ下げを行うなどの運動もおすすめです。
厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」によると、高齢者では「横になったままや座ったままにならなければどんな動きでもよいので、身体活動を40分行う」ことが推奨されています。
1日40分を目指して、まずは今より10分多く体を動かすことが大切です。歩いて買い物に行く、洗濯や掃除、片付けなどの家事を行い、日常生活でできる活動を増やすのも対策として効果的です。
出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」
社会とのつながりを失うことが、フレイルの最初の一歩になりやすいことが分かっています。ここでは、社会参加によってフレイル対策を行う方法を紹介します。
社会参加にはさまざまな方法があり、仕事に就く、地域のボランティア活動に参加する、趣味のサークルに参加するなどの対策が挙げられます。
また、新しいつながりを作るだけでなく、既に関わりのある友人や近所の人と交流することも社会参加といえます。自分に合った活動を見つけ、継続して参加することが大切です。
外出することは、社会参加の機会を増やすために大切な対策です。また、身体活動量を増やすことにもつながります。外出の機会が減っている人は、少しでも頻度を増やしましょう。
フレイルは加齢による虚弱を意味する用語で、要介護状態の一歩手前にいることを表します。ただし、適切な対策によって健康な状態に戻れる状態でもあります。
フレイル対策の柱は、栄養・運動・社会参加の3つです。フレイルチェックによって課題を見つけ、自分に合った取り組みを実践することでフレイルを対策しましょう。