よく耳にする「帯状疱疹」ですが、どのような疾患かご存知ですか?
この記事では、帯状疱疹を発症する原因やメカニズム、そして予防法と対策について詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
まずは、帯状疱疹の基本情報について解説していきます。
帯状疱疹は、神経に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化することで発症する皮膚疾患です。通常は右側、または左側のどちらか一方に痛みを伴う赤い斑点と水ぶくれができるのが特徴で、3週間ほど症状が継続します。
帯状疱疹で見られる症状の詳細と経過については、下記をご覧ください。
・はじめに、皮膚に神経痛のような痛みが起こる。
(最初は皮膚の違和感やかゆみ、しびれを感じる程度。そこからピリピリ、ズキズキ、チクチクと針で刺されたような痛みや、焼けるような痛みを感じるようになる。)
・その後、水ぶくれを伴う赤い発疹が帯状に現れ、徐々に痛みが強くなり、眠れないほど痛むこともある。強い神経痛や皮膚の症状は、主に上半身の左右のどちらかに見られ、3~4週間ほど続く。
・最終的に、水ぶくれになった部分がかさぶたになって症状が治る。
通常、皮膚症状が治れば痛みも消えますが、まれに神経が損傷することによってその後も痛みが続く「帯状疱疹後神経痛(PHN)」を発症することがあります。
他にも、帯状疱疹が現れる部位によって、角膜炎、顔面神経麻痺、難聴などの合併症を引き起こすこともあります。
帯状疱疹は、多くの人が子どものときに感染する「水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルス」が活動を再開することで発症します。
水痘・帯状疱疹ウイルスとは、水疱瘡(みずぼうそう)を引き起こすウイルスで、多くの日本人は幼少期に罹患・発症します。水疱瘡自体は発症してから約1週間程度で治りますが、実はこのとき、完全にウイルスが除去されたわけではなく、治癒後も脊髄から出る神経節という部位に潜んでいます。そのため、日本人成人の約9割以上がこのウイルスを保有しているといわれています。
体の中に潜んでいるといっても、普段は体の免疫力によってウイルスの活動が抑えられているため、発症することはありません。しかし、さまざまな原因で免疫力が低下すると、ウイルスは再び活動を開始し、増殖を始めます。そして、神経の流れに沿ってウイルスが神経節から皮膚へと移動し、帯状に痛みや発疹が出る帯状疱疹を発症するのです。
帯状疱疹は、体内に潜む水痘・帯状疱疹ウイルスが免疫力低下によって活動を再開し、皮膚疾患を引き起こす疾患です。免疫力低下の原因にはさまざまなものがありますが、その中でも加齢の影響は大きく、50歳以上になると発症率が急増し、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になるといわれています。
帯状疱疹を発症する患者の約7割が、50歳以上のシニア世代です。しかも、その発症率は年々増加の一途を辿っています。宮崎県の1997年から2017年までの調査によると、60歳以上が帯状疱疹を発症する割合が21年間で約1.5倍に増加していることがわかりました。
帯状疱疹を発症する患者の中には、20代~30代の若者も含まれているため、どんな人でも発症する可能性はあります。しかし、上記の調査を見ると、加齢に伴う免疫力の低下が帯状疱疹発症の大きな引き金となっていることがわかります。
そのため、帯状疱疹の発症を防ぐには、できるだけ健康的な生活習慣を保ち、免疫力を高めることが何よりも大切といえるでしょう。
では、帯状疱疹の発症を予防するには、具体的にどのような対策をすれば良いのでしょうか?有効的な方法は、次の2つです。
・免疫力を下げない
・ワクチン接種も有効
帯状疱疹を発症する大きな原因は、免疫力が低下することによって体内に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性することです。特に、加齢に伴って免疫力が低下しがちなシニア世代は、ほんの少しの疲労やストレスが命取りになります。
発症を予防するには、日頃から体調管理を心がけ、健康的な体づくりをすることが大切です。食事で栄養をしっかりと補い、質の高い睡眠で疲労回復に努めましょう。(帯状疱疹予防に効果的な食事については次章で解説します。)
また、年齢を重ねると外に出るのが億劫になって家にこもりがちになりますが、適度に活動することも大切です。天気が良い日は散歩をしたり、軽い運動をしたりすると、免疫力が下がりにくい健康的な体の維持に役立ちます。また、程よく疲労することで寝つきが良くなり、ぐっすりと眠ることにもつながります。
帯状疱疹予防には、食事による栄養補給が欠かせません。特に、シニア世代はタンパク質が不足しがちです。
タンパク質は、炭水化物、脂質と並び、「三大栄養素」のひとつとして私たちの生命維持に不可欠な栄養素です。筋肉をはじめ、血管や内臓、皮膚、爪、頭髪など、体の大部分はタンパク質でできています。
これほど重要な栄養素であるにもかかわらず、年齢を重ねると全身の筋肉量が低下し、タンパク質が減少傾向になります。それにより、次のような影響によって体に不調を引き起こします。
・ちょっとした運動でも疲れやすくなり、体を動かす機会が減る
・筋肉は水分を蓄えるタンクの役割もしているため、筋肉量が減ると体内に水分を溜めておけなくなり、脱水症状になりやすくなる
・筋肉の熱産生が減り、体温維持がしにくくなる
これらはすべて、最終的には免疫力の低下につながります。そのため、高齢になればなるほどタンパク質を積極的に摂取することが重要です。
70歳以上の高齢者は、成人男性よりも多い体重1kgあたり1.06gのタンパク質摂取が推奨されています。加えて、年齢を重ねると若い頃と比べてタンパク質を筋肉に合成する力が衰えてくるため、ますます多くのタンパク質を取る必要があります。
しかし、必要なタンパク質をすべて食事だけで補うのは難しいですよね。そこでおすすめしたいのが、サプリメントの活用です。普段の食事と合わせてサプリメントを服用することで、効率的にタンパク質を補うことが可能です。また、手軽で続けやすいところもサプリメントの魅力といえるでしょう。
上記のような生活習慣の改善や健康な体の維持とあわせて、ワクチン接種も有効な手段です。
ワクチンを接種することで発症率が抑えられるだけでなく、もし発症してしまったとしても重症化しにくくなったり、痛みが残りにくくなったりするなどの効果が期待できます。
一部持病をお持ちの方や、使用している薬の種類によっては摂取ができない場合があります。また、接種後に副反応として発赤、腫脹(はれ)、発熱などが生じるケースもあります。詳しくは、かかりつけの医師にご相談ください。
今回は、年齢と共に増加する帯状疱疹の原因と予防・対策について解説しました。
帯状疱疹は、免疫力の低下によって体内に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性することで見られる皮膚症状です。若い世代で発症する場合もありますが、多くの患者は50歳以上の高齢者で、年々発症率は増加します。
帯状疱疹を予防するには、免疫力の低下を防ぎ、健康体を維持することが不可欠です。特に、高齢になると不足しがちなタンパク質は、サプリメントなどを活用して積極的に取り入れることをおすすめします。また、ワクチン接種も効果的です。
そして、帯状疱疹は治療が遅れると重篤化し、治るのに時間がかかったり、後遺症が残ったりする場合もあります。もし、帯状疱疹が疑われる場合には、できるだけ早くお近くの皮膚科を受診し、治療を受けるようにしてください。