昼と夜の寒暖差や気圧の変動が激しい季節の変わり目。
いつもと同じ生活を送っていても、なんだか体の調子が悪いと感じている人も多いのではないでしょうか。コロナの影響もあり、ストレスもたまっているのかもしれません。
環境の変化や精神的なストレスは、自律神経の乱れにつながり、体調を崩す原因になります。新しい季節を健やかに迎えるためにも、食事と運動で自律神経を整えましょう。
自律神経は、交感神経と副交感神経からなり、この2つがバランスを取りながら体温や血圧、内臓の働きなどをコントロールしています。昼間や活動しているときには交感神経が活発になり、心拍数や血圧が上昇します。夜間やリラックスしているときには副交感神経が活発になり、心拍数が減り血圧が下がる仕組みです。
自律神経のバランスが崩れると、めまい、頭痛、不眠、倦怠感、冷え、肩こり、下痢や便秘など様々な症状が現れます。不規則な生活や過度なストレスは、自律神経が乱れる要因。精神的なストレスだけでなく、環境の変化もストレスになるため、季節の変わり目は自律神経が乱れやすいと考えられます。
自律神経の働きの中でも特に重要なのが、血液循環の調節です。
朝起きて立ち上がろうとすると、頭がくらっとすることがありますが、通常はすぐに元に戻ります。これは、重力で血液が足のほうへ流れはじめたことを自律神経が感知し、脳に血液を送るように血管をコントロールしているからです。けれども、自律神経が乱れると、この反応が遅くなり、回復するまでに時間がかかってしまいます。
自律神経機能は加齢とともに低下するため、立ちくらみが原因で転倒し、骨折する高齢者も少なくありません。骨折がきっかけで寝たきりになるケースもあります。
ストレスが多い現代人では、交感神経が活発になっている場合が多いと言われます。また、加齢によって、交感神経よりも副交感神経が低下しやすいことも分かってきました。
交感神経と副交感神経は、どちらも高いレベルでバランスを取り合うのが理想。つまり、自律神経のバランスを整えるには、交感神経を抑えるのではなく、副交感神経をもっと活発にする必要があるのです。そのために、次の3つを心がけると良いでしょう。
まず、血行が良くなると筋肉のコリがほぐれ、呼吸が深くなります。呼吸は呼吸筋という筋肉の働きによるものなので、筋肉が硬くなると呼吸が浅くなってしまいます。
呼吸は自律神経を整えるうえで、とても大切です。深呼吸をすると心が穏やかになり、体がリラックスしませんか? 副交感神経は、リラックスしているときに活発になります。体をリラックスさせるには、心地良いと感じることも重要です。
生活の中で自律神経を整える方法としては、就寝前の入浴が効果的です。お湯に浸かって温まると血行が良くなり、心地良さを感じます。また、体温が下がるときに自然と眠くなるため、不眠の症状があるときは特におすすめです。
運動にも血行促進効果があり、筋肉の衰えも防げるので一石二鳥。程良く疲れることで、睡眠が促される効果もあります。
自律神経を整える運動としては、リズム運動が良いとされています。リズム運動といってもダンスのような難しいものではなく、歩行や咀嚼などのリズミカルな運動を継続することが大切です。
もっとも手軽なリズム運動は、よく嚙むこと。食事以外に噛む習慣として、ガムを噛むのもおすすめです。20分程度しっかり嚙むと、立派な運動になります。脳への血流がアップするため、認知症予防にも効果的です。
ウォーキングをする場合は、「1、2」「1、2」とリズムを意識しながら、歩くことに集中しましょう。できるだけ同じペースで歩けるように、混雑しない道を一人で歩くことをおすすめします。
リズム運動を5分ほど続けると、脳内のセロトニン濃度が高くなります。セロトニンは心を安定させる働きがあり、自律神経を整えてくれるホルモンです。
セロトニンの濃度は、リズム運動をはじめて20~30分でピークに達します。それ以上頑張って続けても、疲れてしまうと、セロトニンの機能が低下してしまうのです。心地良い、楽しいと感じる程度の運動を、毎日続けると良いでしょう。
自律神経を整えるセロトニンは、朝に光を浴びることで分泌が促進されます。セロトニンがしっかり分泌されていれば、意欲がわいて集中力が増し、充実した1日を過ごせるでしょう。
そのために欠かせないのが、朝のたんぱく質です。セロトニンは、たんぱく質に含まれる必須アミノ酸の「トリプトファン」から作られています。
たんぱく質を多く含む食品には、肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などがあります。脂肪分の多い肉類は、朝食べるには重たいと感じる人も多いでしょう。高齢になると消化機能が衰えるため、自然と肉より魚を選ぶようになっているかもしれません。
魚のたんぱく質が優れている点は、体をつくる20種のアミノ酸を理想的なバランスで含んでいること。しかも、筋肉に取り込まれてエネルギー源となる分岐鎖アミノ酸(BCAA)も多く含まれ、筋肉を維持する効果が高いとされています。
必須アミノ酸はバランス良く含まれていることが大切で、図の小麦たんぱくの様に一つでも欠けているものがあると、その値までしか次のたんぱく質合成が行われず、他は体外に排出されてしまいます。
図の魚肉たんぱくの様に全てのアミノ酸がバランス良く含まれていると、効率良くたんぱく質の合成が行われるのです。
理想を言えば、ごはんと味噌汁に焼き魚とお浸しがついた、旅館のような朝ごはん。とはいえ、忙しい朝にそれだけ揃えるのは大変です。そこでおすすめなのが、魚と野菜をたっぷり使った味噌汁です。
切り身の魚ならぶつ切りにして、野菜と一緒に煮るだけ。刺身の残りや鯖の缶詰があれば、もっと手軽に作れます。
味噌汁の良いところは、たいていの食材を受け入れる懐の深さ。具材を変えれば毎日でも飽きずに食べられますし、魚の臭いも気になりません。ごま油で風味をつける、生姜や七味でアクセントをつける、牛乳や豆乳を入れてマイルドに仕立てるなど、アレンジも自在です。
自律神経は全身の機能を調節していますが、加齢とともに体の機能も低下します。ただでさえ体がいうことを聞いてくれないのに、これをコントロールする自律神経のバランスが乱れると、様々な不調が起こりやすくなります。
季節の変わり目を快適に過ごすためにも、自律神経を整えるリズム運動と朝のたんぱく質摂取を意識するなど食習慣にも気を配りましょう。