タンパク質は、健康を維持するために重要な栄養素です。コツをおさえて摂取すれば、より効率よく吸収できるようになります。この記事では、タンパク質が必要な理由や、手軽に摂れるおすすめの食材を解説します。効率よく摂取するコツも紹介するので、健康維持に役立ててください。
シニア世代はタンパク質が不足すると筋肉量が低下し、フレイル(虚弱)の状態に陥りやすくなります。フレイルを予防するには、シニア世代でも若年層と同じ量のタンパク質を摂取することが必要です。厚生労働省は、2019年に65歳以上の高齢者の1日におけるタンパク質の推奨摂取量を、以下の数値で示しています。
タンパク質の推奨摂取量は性別や年齢によって異なります。以下の表を参考に、普段の食生活に活用してください。
※出典:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書
フレイルとは、虚弱が進み、身体機能や認知機能が衰えている状態を指します。健康な状態と介護が必要な状態の間に位置するもので、放っておくと自力での生活が困難になります。フレイルに陥ると食欲が湧かず、食事量も低下していきます。食事が少なくなればタンパク質の摂取量も減り、フレイルが進行するという悪循環に陥ります。
タンパク質とは、どのような栄養素なのでしょう。タンパク質が持つ3つの特徴について解説します。
タンパク質は脂質や糖質に並ぶ、三大栄養素のひとつです。肉や魚、卵などに豊富に含まれており、人体の構成や生命活動の維持に利用されています。人の体は約20%がタンパク質でできており、筋肉や髪の毛、爪、ホルモンや免疫物質などを作っています。タンパク質が不足すると肉体が衰えるだけでなく、精神的な不調も出やすくなります。
タンパク質は、20種類以上のアミノ酸で構成されています。アミノ酸の中には体内で合成できないものもあるため、足りない栄養素は食事から摂取する必要があります。以下のアミノ酸は、食事から摂取するアミノ酸になります。
タンパク質は、人の体を構成して動かすために必要な栄養素です。スポーツなどで筋肉が分解されたときの回復時に使われたり、骨や血液を作るときの材料になったりするのがタンパク質です。ほかにも免疫体やホルモン、酵素などの生成・促進に関わっています。タンパク質は体内で毎日作り替えられており、古くなったタンパク質は体外に排出されます。
タンパク質が足りないと、体にさまざまな不調が現れます。積極的に摂取して、体調不良を予防するようにしましょう。
人間の身体は、体内のタンパク質が不足すると、筋肉を分解してエネルギーを得ようとします。食事量を減らすと筋肉量が減少するのは、タンパク質不足による筋肉の分解が主な原因です。筋肉量が低下すると行動範囲が狭くなり、自力でできることが減ります。外出できなくなれば、他人とのコミュニケーションが不足し、精神面にも悪影響です。
肌の美しさを支える「コラーゲン」、髪を丈夫にする「ケラチン」は、いずれもタンパク質でできています。乾燥肌になったり、髪がパサついたりする原因には、コラーゲンとケラチンの生成不足が挙げられます。人の体は、タンパク質を内臓の修復や維持に優先的に回すようになっているので、不足するとまず肌や髪、爪に影響が出るようになります。
思考力を維持する「神経伝達物質」も、タンパク質でできています。やる気が出ず、ボーとする時間が多い場合は、タンパク質が不足して神経伝達物質が生成されにくくなっているのかもしれません。そのような時はタンパク質をしっかり摂取して、思考力ややる気の低下を予防しましょう。
タンパク質不足の初期症状として現れやすいのが疲労感です。タンパク質が足りなくなると、寝ても疲れがとれず、日中でもだるさや眠気を感じやすくなります。そのままにしておくと代謝が落ち、糖質の分解が阻害されてしまいます。痩せづらい体質になり美容にもよくありません。
免疫力をつかさどる免疫細胞も、タンパク質でできています。タンパク質が不足すると、免疫細胞が生成されづらくなり、免疫力も低下します。「最近よく風邪をひくな」と感じる人は、体内のタンパク質が足りないのかもしれません。風邪を引きやすいと思ったら、タンパク質を多く含む食品を採るようにしましょう。
タンパク質が豊富なおすすめの食品を紹介します。普段の食生活に取り入れてみてください。
魚は消化吸収しやすい、高タンパクの食品です。脂質も少ないため、効率よくタンパク質を摂取できます。サバ缶ブームなどで魚を食べるメリットが、あらためて注目されました。魚はかまぼこや缶詰などで手軽に食べることができます。体内で合成できないアミノ酸をバランスよく含む、おすすめの食品です。
豆は、植物性タンパク質を多く含む食品です。肉や卵などの動物性たんぱく質と組み合わせると、より効果的です。エネルギー量が低いため、量をとっても脂肪になりづらく、ダイエットにもおすすめです。
卵は、高タンパク低脂質の健康食品です。食事から摂取するべきアミノ酸がバランスよく配合されています。他の食品との相性がよく、手軽に調理できることから、さまざまな料理で活かせる食品です。
乳製品は、飲み物からも摂取できるタンパク質です。しかし、脂質も多く含むため、摂りすぎには注意しましょう。乳製品でタンパク質を摂取したい人は、低脂肪タイプの商品を選ぶとよいでしょう。
肉は、動物性タンパク質の代表です。ただし、肉の種類によっては脂質が多いものもあるので注意しましょう。購入するときは、できるだけ低脂質の肉を選ぶのがポイントです。赤身肉や鶏ささみなどは、脂肪分が少なく、ダイエット食品としてもおすすめです。
タンパク質を効率よく摂取するコツを5つ紹介します。自宅などで手軽にできる方法なので、ぜひお試しください。
食卓には、タンパク質を含みつつ、調理の手間がかからない食品を加えましょう。手軽に食卓に加えられれば習慣化でき、日常的にタンパク質を摂取できるようになります。ゆで卵やチーズなどは、簡単に食べられるのでおすすめです。毎日料理することが難しければ、良質なタンパク質を含んだ「サプリ」を食卓に加えるのもひとつの方法です。
タンパク質の原料となる必須アミノ酸は、食材によって含有率が異なります。そのため、普段の食事から、動物性タンパク質と植物性タンパク質をバランスよく摂取することが大切です。魚、肉、野菜や乳製品など複数の食材を取り入れ、食卓がひとつに食材に偏らないようにしましょう。
タンパク質は、まとめて摂るのではなく、毎日少量ずつ継続して摂取しましょう。一回の食事から多量に摂取しても、すべてが栄養になるわけではありません。余分なタンパク質は脂質に変わることもあります。タンパク質の摂取は、無理のない範囲で習慣化させることが大切です。
タンパク質は、こまめに採ることが有効です。少量ずつでも継続することが大切なので、間食でもぜひ取り入れてください。野菜嫌いの子供でも、おやつとしてなら摂取しやすいでしょう。おやつには、あっさりとした味付けのものが食べやすいです。「きな粉」「ヨーグルト」「アーモンド」「小魚」などがおすすめです。
タンパク質の摂取に気を取られすぎて、炭水化物や脂質を減らしすぎないようにしましょう。炭水化物と脂質も三大栄養素のひとつであり、健康的な生活を送るのに不可欠な栄養素です。また、相互に作用する働きを持つので、それぞれを適切に摂取することが大切です。メインの食材がタンパク質を多く含むのであれば、副菜で炭水化物や脂質を補給するとよいでしょう。
シニア世代でも、若年層と同量のタンパク質摂取が必要です。タンパク質不足により筋力が低下すると、自力で行動できる範囲も狭くなります。外出ができなくなると、他者とのコミュニケーションが減り、精神的にもよくありません。タンパク質を積極的に摂取し、身体機能と認知機能を健康に保ちましょう。