2022.08.01
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「疲労感軽減」の機能性表示届出までの研究推移

2021年9月29日、「魚肉ペプチド サカナのちからB」が疲労感の軽減に関する表示で、消費者庁に機能性表示食品として届出受理されました。これは、鈴廣かまぼこ星薬科大学 亀井淳三名誉教授との共同研究により、成し遂げられたものですが、ここでは、機能性関与成分の特定から臨床試験を経て届出に到るまでの研究の推移をご紹介します。

機能性関与成分の特定          

今までも、魚肉ペプチドには様々な機能性があることはわかっていましたが、数多いペプチドのうち、どのペプチドがどのような機能性に関与しているのかまでの分析が困難でした。 今回、星薬科大学との研究により、機能性関与成分を見つけるところから始めました。

まずは、魚肉ペプチドを分子量の違いによっていくつかのグループに分画し、抗酸化能を測定したとこところ、抗酸化作用が非常に強いいくつかの分画を見つけることができました。

その中で、まずは分子量が低い分画をターゲットとして、そこに何が入っているのかを調べました。細かく分析したところ、イソロイシン(I)とアルギニン(R)というアミノ酸がくっついたジペプチド(=アミノ酸が2つ結合した物質)のようでした。くっつき方の順番で「イソロイシルアルギニン(IR)」か「アルギニルイソロイシン(RI)」の2種類があり得ます。

次に、このジペプチド(IR、RI)が本当に抗酸化作用を持っているのか確認しました。抗酸化作用については一般的によく用いられている電子スピン共鳴(ESR)という方法を用いて計測しました。これにより、IRにもRIにも同じくらいの強さの抗酸化作用があることが確認できました。

つまり、魚肉ペプチドに含まれる抗酸化作用を持つ成分のひとつとして、IRとRIが同定できたということになります。

Journal of Food and Nutrition Research,2019,Vol.7,No.12より出典

動物試験で検証

次ぎに、筋肉疲労を起こしたマウスに水泳させて、どれくらいの時間を泳ぎ続けることができるかで疲労の程度を確認するという実験を行いました。

副腎皮質ホルモン(ステロイド)を投与すると、筋肉が萎縮して筋肉疲労が起きることが分かっています。それを応用して、マウスにステロイドを投与し、わざと筋肉疲労を起こしたモデルを作りました。そして、マウスの体重の3%に相当するおもりを尻尾につけて、負荷をかけた状態で泳がせました。

そうすると、ステロイドを投与して筋肉疲労を起こしたマウスは、何もしていない正常なマウスよりも泳げる時間が短くなります。そこで筋肉疲労マウスに魚肉ペプチド、もしくは今回見出したジペプチド(IR、RI)を混ぜたものを3日間にわたり連続投与したときに、正常なマウスと同じくらい泳げるようになるかどうかを調べたのです。

何も食べさせなかった筋肉疲労マウスでは、予想通り、正常なマウスと比較して泳げる時間は短くなりました。しかし、魚肉ペプチドを食べさせると、正常なマウスと同じように泳ぐことができた、すなわち疲労が回復したことが示されました。

また、2種類のジペプチドを同時に投与して評価したところ、正常マウスと同じレベルまで泳ぐことができました。

これにより、魚肉ペプチド中の2種類のジペプチドが疲労回復の関与成分であることがわかりました。

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Journal of Food and Nutrition Research,2019,Vol.7,No.12より出典

臨床試験で検証

最後に、ヒトでの臨床試験を、本製品「サカナのちから」を使用し、行いました。

試験の方法は、健康な成人男女39名を、「サカナのちから」群19名(平均年齢45.7歳)と「プラセボ(ペプチドの入っていない疑似製品)」群20名(平均年齢44.6歳)に分け、1日1回10粒摂取する試験を12週行い、疲労感の度合いをVAS法で測定しました。

結果は、プラセボ群は疲労感が上昇したのに対し、「サカナのちから」群では、有意な疲労感の減少が測定できました。(p<0.05)

本研究が査読付き論文となり、機能性表示食品届出の資料といたしました。

                  

Jpn Pharmacol Ther(薬理と治療)vol48,no.8,2020から作図

VAS法(Visual Analogue Scale)・・・もともと医療現場で使われる評価方法。痛みや疲れなど、相対化・数値化しにくい情報を、評価スケール上にプロットすることにより数値化して評価する方法。今回であれば10cmのスケールを用意し、左側が全く痛くない、右側が最高に痛いとしたら、今の痛みはどれくらいかを示してもらい数値化して評価した。

亀井淳三 星薬科大学名誉教授のコメント

星薬科大学名誉教授 亀井淳三氏

いま、よく言われている高齢者の「フレイル」の背景には、筋萎縮や筋肉疲労による「サルコペニア」があります。今回の研究で明らかになったように、魚肉ペプチド(「サカナのちから B」)に含まれるジペプチドは筋萎縮がもたらす筋疲労を改善する効果を持っているわけですから、日々の食事やサプリメントとして取り入れていただけると、超高齢社会においても価値を出せるのではないかと考えています。

なお、今回の研究で扱ったのは魚肉ペプチドの分画のうち、分子量が最も小さい分画に含まれる成分だけです。他にも同じくらいの強さの抗酸化作用を持つ高分子の分画がありましたから、この中にも別の機能性成分が入っているのではないかと思います。それらについても研究を行っていけば、魚肉たんぱくの可能性がさらに認められるようになるのではないでしょうか。その結果をかまぼこのような食品にフィードバックすれば面白い製品ができるかなと期待しています。これからの研究の進展を楽しみにしています。

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