健康な髪の毛とは、艶があってハリもコシもしっかりしている、ボリュームのある状態。
いくつの年齢になっても元気な髪の毛でいたいと思って、まずはシャンプーやリンスと言ったケア商品の見直しをしていませんか?
実は同じぐらい重要なのは、食べ物から摂取しているタンパク質。
皮膚と見た目が大きく違うので驚かれるかもしれませんが、髪の毛も食べ物から摂取したタンパク質が分解されて体内で再合成されたものです。
見た目が違うのは、筋肉や皮膚と異なる種のアミノ酸がメインで材料になっているからです。
意外に知られていないのは、バランス良く多くの種のアミノ酸を摂取しないと健康的な髪の毛が育たないという事実です。
今回は、そんなタンパク質と髪の毛の切っても切れない関係をご紹介します。
髪の毛は三層のタンパク質構造で作られています。
まずは、髪の毛の一番外側に存在するキューティクルです。
キューティクルは魚の鱗のように薄い膜であるものの何層も重なり、髪の毛の内部に存在するコルテックスや芯の部分のメデュラを守っています。
次に、コルテックス、これは髪の毛のコシに関わる弾力あるゼリーのような物です。
コルテックスは、髪の毛の繊維状のタンパク質で、不足すると切れ毛やコシがない、細い髪の毛の原因になります。
細い糸状が髪の毛の内部に詰まっているので、その隙間は脂質によって埋められコルテックス同士の摩擦を防ぐとともに、潤いをキープしています。
最後に中心のメデュラですが、人間の骨の髄みたいな組織で、健康な髪の毛はこの三層のタンパク質からなっています。
人間の髪の毛は、食事から摂ったタンパク質によって作られます。
タンパク質は20種のアミノ酸からできているのですが、重要なのは、特定のアミノ酸だけを摂取していれば健康な髪の毛ができるわけではないこと。
髪の毛の構成で有名なのは、シスチンとグルタミン酸というアミノ酸が多く含まれていることですが、この二種類のみを多く摂取さえすれば、元気な髪になるわけではないのです。
人間の髪の毛には、グリシンやロイシンと言った必須アミノ酸も含めて、量にばらつきがあるものの含まれています。
髪の毛は、パズルのピースのような形で、複数の種類のアミノ酸が体内にあって初めて作られます。
多く使われるアミノ酸のみを摂取すると、他の1ピースだけがなくて、健康な髪の毛が生まれないということもあるのです。
人間の体内に入ったタンパク質は一旦消化器官でアミノ酸にまで分解されて、体内に吸収されてからタンパク質として再合成されます。
しかし、年齢を経るとその体内合成が劣ってきてしまいます。
肌のシワや髪の毛の艶が年齢によって痛みだすのは体内での合成能が落ちてきてしまうためです。
バランス良く多くのアミノ酸を含み、効率良く吸収ができる食べ物を常に摂取することで、この低下を遅らせることができます。
では、一日に必要なタンパク質の量とは何gが目安なのでしょうか?
『厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2015年版)』によると18歳以上は、男性が一日60g、女性50gが理想とされています。
しかし、髪の毛にとっては、タンパク質であれば何でも良いわけではありません。
摂取するアミノ酸の種類を多くすることを心がけると共に、避けるべき食材もあります。
『走査型電子顕微鏡観察により明らかになった毛髪の損傷形態と栄養状態との関連』という金城学院大学大学院人間生活学研究科の若林萌先生の論文があります。
世代関係なく男女を集めて、食生活と毛髪に関する相関関係をまとめました。
実験は10代から80代の幅広い世代の男性(45人)、女性(73人)を集めて行われました。
採取した毛髪の走査型顕微鏡による観察とともに、食事の摂取のアンケートを行い、世代性別別に統計処理を行いました。
各世代共に食事で脂肪量が多い肉類や嗜好品を積極的に摂取し摂取した人はキューティクルの損傷比率が高くなりました。
また有意差は出なかったものの、牛乳や乳製品、卵の摂取量が多い人のキューティクルの異常が見られました。
その他栄養素に関しては、鉄、カルシウム、マグネシウム、ビタミンKを多く摂取する食習慣をしている人に、正常なキューティクルが多いことがわかりました。
タンパク質を多く含む食材には、肉・卵・豆・魚などがありますが、その中でおすすめしたいのは魚です。
魚は、摂取したアミノ酸のバランスが良く、必須アミノ酸含めて20種のアミノ酸を一度に摂取することができます。
必須アミノ酸はバランス良く含まれていることが大切で、図の小麦たんぱくの様に一つでも欠けているものがあると、その値までしか次のたんぱく質合成が行われず、他は体外に排出されてしまいます。
図の魚肉たんぱくの様に全てのアミノ酸がバランス良く含まれていると、効率良くたんぱく質の合成が行われるのです。
その証拠に、魚肉タンパクのアミノ酸スコアは100であり、他の植物性タンパクのような偏りがありません。
また、魚肉はアミノ酸バランスの良い「動物性たんぱく質」のなかでも脂肪分が少なく、カロリーオーバーを気にすること無く摂取することができるのです。
一般的にアミノ酸バランスは、植物系より動物系たんぱくの方が優れていますが、動物系たんぱくの中でも肉や卵、乳製品は脂肪分が多いのがカロリーを気にされる方には心配なこと。
その点、魚のたんぱく質は、低カロリーで高たんぱく。
魚肉たんぱく質を摂ることで、カロリーも抑えられ、効率よく身体づくりに活かすことができます。
健康な毛髪のためには、多くのアミノ酸を摂取することが大切です。
特に高齢になり、アミノ酸からタンパク質を再合成する機能が低下しているなら、なおのこと良質なタンパク摂取を毎日行うことが大切です。