健康食品やサプリメント、美容ドリンクのパッケージやCM・広告などを見ると、大豆ペプチド、魚肉ペプチド、コラーゲンペプチドなど、「ペプチド」という言葉を目にすることがしばしばあります。
ペプチドとは、タンパク質が分解されてアミノ酸が数個~数十個固まった状態のことを言います。
タンパク質を指す英語の「プロテイン(protein)」は、“一番大事な”を意味するギリシャ語「プロティオス(proteios)」が語源とされ、タンパク質は、健康な体をつくるのに欠かせない栄養素です。
日本語で「プロテイン」というと、筋肉トレーニング(筋トレ)後に飲むプロテインサプリメントを思い浮かべます。「筋肉は裏切らない」という言葉が2018年の流行語大賞にノミネートされるなど、筋トレは今やブームとなっています。
そこで今回は、ペプチドの筋肉に対する効果について中心に、ご紹介します。
タンパク質は、炭水化物、脂質とあわせて「三大栄養素」と呼ばれています。
タンパク質は、筋肉や骨、血液などの材料となる大切な栄養素です。筋肉だけでなく、皮膚や血管、髪の毛など体のあらゆる部分を構成するとともに、エネルギー源にもなっているなど生命の維持に大切な成分であり、アミノ酸からできています。
タンパク質が不足すると、疲れやすくなったり、筋力が落ちたりすることがありますので、十分に摂取する必要があります。
最近では、老化の予防には筋肉の維持や増強が大事であり、それには筋トレとタンパク質の十分な摂取が必要といわれています。さらにタンパク質は、可能な限り良質なものを摂取することも筋肉づくりには大事といわれています。
筋肉は、体内で分解と合成を繰り返しています。特に高齢者の方は筋肉の分解が進みやすいため、不足しないようにタンパク質を毎日努めてとることが重要になります。
こうしたことから、筋肉づくりには、良質なタンパク質を十分にとることが大切です。
ただし、タンパク質だけ多くとっていればそれでOK、というわけではありません。筋肉づくりには、日頃から、適度な運動、バランスのとれた食事、十分な睡眠などを心がけるようにしましょう。
タンパク質を摂る上で重要なのは、良質なタンパク質を摂らなければならない、ということです。
タンパク質を構成するアミノ酸は20種類あり、このうち体内で合成できない9種類を「必須アミノ酸」と呼び、これを十分にとることが重要です。この必須アミノ酸をバランスよく含んでいるのが、良質なタンパク質です。
必須アミノ酸をある基準以上含む、アミノ酸スコア100に近いタンパク質ほど利用効率が高く、良質なタンパク質とされます。
魚肉タンパク質は、アミノ酸スコア100。これに対して、植物性タンパク質には100未満のものが多く見られます。
必須アミノ酸はバランス良く含まれていることが大切で、図の小麦たんぱくの様に一つでも欠けているものがあると、その値までしか次のたんぱく質合成が行われず、他は体外に排出されてしまいます。
図の魚肉たんぱくの様に全てのアミノ酸がバランス良く含まれていると、効率良くたんぱく質の合成が行われるのです。
一般的にアミノ酸バランスは、植物系より動物系タンパクの方が優れていますが、動物系タンパクの中でも肉や卵、乳製品は脂肪分が多いのがカロリーを気にされる方には心配なこと。
その点、魚のタンパク質は、低カロリーで高タンパク。
魚肉タンパク質を摂ることで、カロリーも抑えられ、筋肉を効率よく増やすことができます。
ぜひ試してみてください。
魚肉タンパク質は、体内でそのままでは利用することはできません。
タンパク質はまず、胃や腸でアミノ酸が数個つながったペプチドに分解され、ペプチドやアミノ酸の状態で腸管から吸収されて、肝臓を経て各組織に送られます。
食べた魚(魚肉タンパク質)は、分解されながら体内に吸収されるのに通常3~4時間かかります。これに対して、魚肉タンパク質をあらかじめ分解した魚肉ペプチドは、摂取後30~40分ほどで吸収されます。
摂取したタンパク質が、とれだけ体を構成するタンパク質に利用されたかを示す「正味タンパク質利用率」では、魚肉ペプチドは97%。これは、大豆や牛乳、魚肉タンパク質を上回る値です。
したがって、魚肉ペプチドであれば、タンパク質よりも吸収および利用されやすく、体内へ効率的にアミノ酸を補給することができます。
では、ペプチドであれば何でも効果があるのでしょうか。
鈴廣蒲鉾本店と、順天堂大学 スポーツ健康科学部の内藤久士准教授は、ラットを用いて、トレーニング期間中の魚肉ペプチド摂取による筋肉合成効果を大豆ペプチドと比較して検証を行いました。検証方法は、以下のとおりです。
その結果、魚肉ペプチドを与えたラットは、トレーニングをすることにより足底筋の筋タンパク質含量が有意に増加しました。一方、標準飼料または大豆ペプチドを与えたラットでは、このような傾向はみられませんでした。
また、トレーニングをしたラットは、それをしていないラットよりも筋グリコーゲン含量が高い傾向を示し、魚肉ペプチドを与えたラットは、標準飼料または大豆ペプチドを与えたラットと比べて有意に高い筋グリコーゲン含量を示しました。
検証結果から、大豆ペプチドと比べて魚肉ペプチドの摂取が、トレーニング期間中に筋肉の合成を効率よく引き起こすのに役立ち、エネルギーとなる筋グリコーゲンをためる筋肉をつくるのに効果的なことが分かりました。
このように、大豆ペプチドよりも魚肉ペプチドのほうが、筋肉を効率よくつくるのに有効なことが実証されました。
魚肉ペプチドは、筋肉を構成する必須アミノ酸をバランスよく含み、消化がよいのと同時に、筋肉を効率よくつくることが分かりました。3gの体構成タンパク質をつくるのに、魚肉では20g、魚では70gをとる必要があります。
これに対して、魚肉ペプチドはたったの3.1gです。
魚肉ペプチドであれば、無理なく食生活に取り入れることができます。
魚肉ペプチドを味方につけて、筋肉の維持や増強に役立てていきましょう。