「うちの子供、ぜんぜんお魚を食べてくれないの」あるママがこう悩みを打ち明けてくれました。
魚は「生臭い」「骨が」と嫌がるし、切り身を料理しても「ワンパターン」になってしまい、いつのまにか肉ばかりの献立に…...。
ほんとうはヘルシーで成長に欠かせないお魚のタンパク質。たくさん食べさせてあげるためには、どうしたらいいのでしょうか。
魚の可能性と魚離れの原因そして対策まで考えてみました。
タンパク質を評価する指標のひとつがその食材に含まれるアミノ酸のバランスです。
タンパク質を構成するアミノ酸は20種類あり、このうち体内で合成できない9種類を「必須アミノ酸」と呼び、この必須アミノ酸をバランスよく含んでいるのが、良質なタンパク質です。
必須アミノ酸をある基準以上含む、アミノ酸スコア100に近いタンパク質ほど利用効率が高く、良質なタンパク質とされます。
魚肉タンパク質は、アミノ酸スコア100。これに対して、植物性タンパク質には100未満のものが多く見られます。
必須アミノ酸はバランス良く含まれていることが大切で、左図の小麦タンパクの様に一つでも欠けているものがあると、その値までしか次のタンパク質合成が行われず、他は体外に排出されてしまいます。(実際には、他のタンパク質素材との組み合わせで合成されるので、全て排出されてしまうことはありませんが。)
図の魚肉タンパクの様に全てのアミノ酸がバランス良く含まれていると、効率良くタンパク質の合成が行われるのです。
一般的にアミノ酸バランスは、植物系より動物系タンパクの方が優れていますが、動物系タンパクの中でも肉や卵、乳製品は脂肪分が多いのがカロリーを気にされる方には心配なこと。
その点、魚のタンパク質は、低カロリーで高タンパク。
魚肉タンパク質を摂ることで、カロリーも抑えられ、効率よく身体を成長させることができます。
ぜひ試してみてください。
実は本来、魚の身そのものは生臭くありません。皮を覆うヌルが臭いのもととなり、時間が経つほどに強くなります。しかし鮮魚は皮と身を分けて流通させることはできません。
昨今では昔に比べて交通インフラや冷蔵技術の発達で、鮮度を維持したフレッシュ魚が食べられるようになりました。それでもできるだけ鮮度の新しいものを買うことが重要です。
最近の子供は口の中で小骨をより分けることが苦手と聞きませんか?それは現代の魚事情が関わっているかもしれません。
鮮魚コーナーでパッと目に付くのは、尾頭つきの「丸」ではなく「切り身」ではないでしょうか。
世界の養殖技術また冷蔵技術の普及と共に、加工冷凍された切り身が輸入されるようになりました。これら切り身はタラやサケといった大型の魚を切り分けた商品です。当然、骨も大きく取りやすかったり既に取り除かれていたり、またゴミがでないので主婦には助かりますよね。
反面、それまで主流であった地崎の「丸」魚は押され気味となり、子供の食機会が少なくなってしまったことが、より一層魚離れを進めてしまう一因になったと推測できます。
ついつい保管に便利だからと冷凍切り身ばかりを使っていると、料理もワンパターンになりがちです。「また鮭の塩焼き~ぃ!」と子供に反対されると、ついつい人気の肉料理になってしまいますよね。
しかし四方を海に囲まれ四季がある日本には、春夏秋冬それぞれに旬があります。かつては近所の魚屋のご主人が旬をオススメしてくれたり、ちゃちゃっと捌いてくれたりしたので自然と覚えたものです。ところがセルフ売場が主流の現在では教えてくれる人もなく、また仕事を持っている場合も多くなかなか四季の旬の魚を食べさせてあげることは難しくなってきてしまいました。
これは主婦の努力の問題ではなく、置かれた環境の力が大きいと思うのです。
さて、そんな魚キライが蔓延する世の中で、どうやって手軽にお魚を食べることができるのでしょうか。
おっと!それは魚じゃないでしょう!とお思いかもしれませんが、ちょっと聞いてください。
練り製品はすり身を使ってつくられます。すり身というのは、魚の頭、骨、皮、血合いなどを除いた肉の部分だけを集めたものです。つまり、そもそも食べる部分だけを加工した製品ということです。
原因となる皮を取り除き、水で晒すことで残った血や余分な脂肪を洗い流す工程があります。おかげでできあがった練り製品は生臭みも骨もなく食べやすいお刺身のような状態となるわけです。ここまでで嫌われる原因1と2を軽々クリア!
すり身は変幻自在です。同じすり身でも加熱の仕方を変えるだけでさまざまな食感、風味へと姿を変えることができます。
①蒸し:小田原蒸し板かまぼこに代表される練り物。王道の板わさのほかオリーブオイルとアボカドでカルパッチョも美味。
②揚げ:さつまあげに代表される練り物です。野菜などの具材を混ぜることが簡単なの幅幅広い商品があります。夏は冷たいまま、冬はおでんや鍋物に、また軽くあぶってお酒の肴にと使い方も自在です。
③焼き:ちくわ、笹かまに代表される練り物です。香ばしく焼き上げた皮目とさっぱりさはサラダや炊き込みご飯との相性は抜群です。
④ゆで:はんぺん、しんじょに代表される練り物。ふわりとした食感、つるりとした喉ごしなど、椀種やお刺身として。
冷蔵庫から出してそのままでも食べられるし、料理に入れて加熱調理してもよい。ライフスタイルやその日の事情に合せて使い方を変えることができる練り物は、イメージこそ古くさいものの忙しい現代の生活にとても便利な食材だといえるのではないでしょうか。
もっとアグレッシブに!もっとエンターテインメントに!練り物を使ってみたい貴方へさらにディープな「すり身」の世界をご紹介します。
すり身は魚の身を摺っただけのものなので、生です。商品として市販されているのはこれを冷凍したもの。実は近年ではネット通販で手軽に購入することができます。
家庭用に市販されているのは下味が付いている調味済みのことが多いので解凍するだけで使え、手軽に自家製さつま揚げや魚肉ハンバーグにしたりして楽しむことができます。
また上級者ともなれば板かまぼこやちくわづくりを家庭で楽しむことができます。
お魚キライの子供にも遊びながら学んでいく食育エンターテインメントとして、休日に家族でチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
家庭菜園の野菜を使ってみたり、子供の大好きな野菜を入れたり、また大好きなヒーローキャラクターを描いたりと工夫次第でさらに楽しくなること間違いなしです。
そのほかにもすり身を粉末化させた商品も出ています。
●鈴廣かまぼこ「万能すりみパウダー」
「すり身」といえば「冷凍すり身」もしくは「生すり身」が一般的ですが、「万能すりみパウダー」はパウダー状の乾燥すり身です。
水を混ぜるだけでカンタンに本格的な「生すり身」を作ることができます。
●鈴廣かまぼこ「さっとタンパク」
すり身を酵素分解して消化吸収性を高めた栄養補助食品。みそ汁などの食事に混ぜて使えます。
成長期の子供やロコモ予防としてのタンパク補給に、安心して手軽に使えるたんぱく源です。
いかがでしたでしょうか。今回は魚のタンパク質を練り物から摂る方法をご紹介しましたが、缶詰、オイル煮、乾物などまだまだ魚には可能性が拡がっています。
栄養としてのタンパク質は、生まれてから死ぬまで一生摂り続けねばならない重要な栄養素です。好き嫌いは誰にもありますが、どうせ摂らねばならないのならば、無理せずむしろ楽しく摂る工夫をしてみてはいかがでしょうか。