梅雨時期になると、何となく体がだるい、頭が重いという方はいらっしゃいませんか?梅雨ダルともいわれるこの不快感、何とか解消したいものですね。本コラムでは、この梅雨ダルがなぜ起きるのか?その解消に適した食材や食べ方を、薬膳の考えかたをもとにご紹介します。
梅雨で雨が降り続いている日、湿度が高く蒸し暑い日、おでこの上あたりにもやもやとした重だるさを感じたり、頭がぼぉーとする感覚、体がだるく、家事や仕事、勉強に集中できなかったりする状態を、いわゆる梅雨ダルと言います。中には、軽いうつ状態に陥ってしまう方もいらっしゃいますね。
では、梅雨になるとダルさを感じるのは、なぜなのでしょうか?
中医薬膳学では、湿邪といい、湿気を司る邪気の仕業だと考えられています。梅雨時の高い湿度のなか、湿邪のせいで、本来は尿や汗となって体外に排泄されるべき水分が体内に停滞することでむくみが発生し、様々な梅雨ダルの症状を引き起こしていると考えます。
梅雨ダルの症状としては、先ほどご紹介したような重だるさやメニエール病のような回転性のめまいが起こるほか、湿邪の影響が胃腸に現れた場合は、消化不良や軟便・下痢を引き起こすこともあります。
このように、湿邪により体に湿気が滞ってしまっている状態を、中医学では「津液停滞(しんえきていたい)」と言い、いわゆる梅雨ダルの症状の原因であると考えます。
一方で、「足は第二の心臓である」と言われています。ふくらはぎの筋肉を、歩く、走るなどの動作で動かすことで足の血管の収縮運動を高め、心臓から最も遠く、最も下にある足先の血液を心臓に戻す働きを助けているということです。
雨の中、外出がままならない日が続くと、いわゆる「第二の心臓」である足を動かす機会が減り、血液やリンパ液の流れが悪くなります。その結果、梅雨ダルの原因となる水分が、体内に溜まるという悪循環に陥ってしまいます。
体内に溜まった水分を排泄し、むくみや頭痛といった梅雨ダルの症状を解消するには、ウォーキングなどにでかけたり、スクワットをおこなったりして足の筋肉を動かし、いわゆる「第二の心臓」機能を高めることが効果的です。しかし、筋肉を維持していくためには、そのもととなる栄養素、たんぱく質をしっかりと取っておくことが大切です。
たんぱく質と一言で言っても、肉類や魚介類の動物性たんぱく質のほか、大豆を代表とする、植物性たんぱく質がありますね。
梅雨ダルのせいで胃腸の働きが落ちやすい方には、総じて脂質が多い肉類よりも、消化が良い魚介類の方が、胃腸への負担が少なく、おすすめです。
また、蒲鉾やちくわといった加工食品も魚肉から作られており、たんぱく質が豊富に含まれています。手軽に利用できるので忙しい日や梅雨ダルで調理に手間をかけたくないときにもよいですね。
運動とたんぱく質の摂取以外の方法として、食べ物が持つ力を借りてむくみを解消する方法があります。薬膳では食べ物が人体に及ぼす影響を考慮し、その時の体の状態に合わせて食材を選びます。まずはどのような食べ物にむくみを解消する働きがあるのかをご紹介します。
このように、体の中に溜まった水分を取り、梅雨ダルの原因の一つともなるむくみを解消する食材は色々とあります。次に、この表の中で注目していただきたいのが、表の右に書いてある、「寒・涼・平・温…」という文字です。これは、それぞれの食材が体を温める働きがあるのか、それとも、冷やす働きがあるのかを示しています。
温めるものが「温」、少し冷やすものが「涼」、しっかりと冷やすものが「寒」、温めも冷やしもしないものを「平」と表します。
むくみを解消したいものの、じとじとと蒸し暑い梅雨の日には、同時に体の熱を取ってくれる「寒」「涼」の食材を、湿気が多く重だるいものの、少しひんやりとする梅雨寒の日には体を温めてくれる「温」「平」の食材を、と、上手に選び、召し上がってくださいね。
このようにして食材を選んだところで、梅雨ダルであまり動きたくない日に手間をかけた料理を作るのは、できれば避けたいものです。
今回は簡単にさっと作れて見映えがする2品をご紹介します。
本来は、道明寺粉といってもち米を蒸してひきわりにしたものと、甘鯛の切り身を桜の葉の塩漬けで巻いて作る、「桜蒸し」という料理ですが、簡単に作ることができるよう、アレンジを加えました。
≪材料≫ 2人分
≪作り方≫
あさりを使った料理は、貝の砂出しに時間がかかり、梅雨ダルで調理に手間をかけたくない日にはちょっと手が出にくいかもしれませんね。そんな時には、あらかじめ水煮になっているものを使用すると便利です。
あさりやかまぼこに旨み・塩味があるので、味付けは少量のしょうゆ(分量外)を足すなどお好みで調整してくださいね。
≪材料≫ 2人分
≪作り方≫
今回は、じとじとと湿気が高い梅雨に感じる重だるさ、梅雨ダルを解消するために取っておきたい食材や料理について、ご紹介しました。梅雨時期をしっかりと元気に乗り切ることで、その後訪れる暑い夏を元気に楽しむことができます。
上手に食べ物を選び、美味しく食べて、季節の移り変わりを楽しんでくださいね。