近年のランニング人口、登山人口の増加に伴い、「トレイルラン」の人気も高まり、グッズや雑誌、映像を目にする機会も増えてきました。興味はあるけれど、少しハードルが高そう・・そんなあなたに、トレイルランニングを気軽に始められる方法を教えましょう!
走り慣れたアスファルトの道を外れて、自然に包まれたトレイルへ。トレランの魅力は、大自然の中、舗装されていない道を走ることで非日常を満喫できること。
体力の強化はもとより、自然の癒やし効果も得られ、カラダも脳も喜ぶスポーツといえるのではないでしょうか。
まずは、トレイルランの3つの効果をご紹介します。
トレイルランでは、土のデコボコや木の根などの障害物、細かいアップダウンなど、いつものランニングとは違うバランスの取り方、筋肉の使い方が要求されてきます。
知らず知らずのうちに、鍛えにくい体幹や走りの土台となる筋肉を強化することができ、バランスの良い身体づくりに最適です。
また、気が抜けないため、またたく間に長時間のトレーニングができるので心肺機能の強化にももってこいです。
※トレイルとは、「森林・原野・山地などの踏み分け道。山の小道。」を指します。
森林浴のリラックス効果を産む「フィトンチッド」と呼ばれる木の香りは、脳の記憶を司る「海馬」という部分も刺激します。
また、悪路を走っている最中は、木の根やガレ場など一瞬で状況を判断し対応を決める空間認知能力が必須で、これには、脳の「頭頂連合野」という部分が使われます。
大自然の中を走ることで、リラックス効果と脳の活性化が期待できるのです。
出典:岐阜県森林研究所 http://www.forest.rd.pref.gifu.lg.jp/rd/rinsan/9811gr.html
夏の山道は気温がぐっと下がります。
そのためアスファルト上では中々長い距離が走れない期間でも、山道を走るトレイルランであれば、涼しい環境で、長い距離で負荷を掛けたトレーニングが可能です。
そうは言われても、装備はないし、どこを走れば良いかわからないし・・・という方、まずは自然の中を走る爽快さを体感しましょう。
普段のジョグ用のウェア&シューズで良いので、まずは近くの公園や里山を走る事から始めます。
土や草の上を走ってみれば、足裏の柔らかい感触、適度な路面のデコボコが、アスファルトでは味わえない走る楽しさを感じさせてくれることでしょう。また、自然の風景、野鳥のさえずり、木々のざわめきが、ロードでは感じなかった自然との一体感、新たな走る喜びを教えてくれるはずです。
ポイント:ネットで検索!意外と近くにある公園
走れそうな公園が思い浮かばない方は、お近くの自治体のホームページで「市立公園」「県立公園」「区立公園」「都立公園」を検索してみてください。
※その公園で走ることができるかは、事前に公園管理者に確認する必要があります。
公園でトレイルランニングのおもしろさに目覚めたら、次はいよいよ山へと入っていきましょう!
まずは、トレランのガイドブックや登山者用のハイキングガイドで、低山で3~4時間で走り切れそうなコースを選びましょう。ハイキングガイドを参考にする場合は、記入されている時間の40~45%を目安にして予定をたてると良いでしょう。
ポイント:すぐに帰れるコース取りを!
慣れないうちは、駅からのアクセスが良く、天候の悪化や体調を崩した時にすぐに逃げられるエスケープルート(逃げ道)が多いコースを選びましょう。鉄道やバス路線に平行して走る尾根道を選べば安心です。
また、日没が早く、交通手段も早くストップするところも多いので、時間に余裕をもって行動できるよう、早めにスタートすることを心がけましょう。
トレランシューズ・・野原や林道なら底が厚いランニング用のシューズでも可ですが、本格的な山道を走るならトレラン用のシューズを。滑りやすい道のグリップ力や荒れ地での突き上げ低減で、ケガや疲れの防止に有効です。
バックパック・・小ぶりのものを。トレイルラン用のバックパックは、中身が動かないよう固定するバンジーコードが付いているので便利です。
手袋・・転倒したときのケガ防止用に。軍手でもOKです。
レインウェア・・山の天気は変わりやすいです。万が一の雨、思わぬ寒さ対策として、コンパクトにたためるレインウェアを用意しておきましょう。撥水性の高いウインドブレーカーでも可です。
食料・水・・おにぎり、パンなどの携帯食に加え、高エネルギーのゼリーや、非常食としても使えるアミノ酸のサプリを少し多めに用意しましょう。水も途中で補給できない前提で、余裕をもって準備しておきましょう。
携帯電話・・いざという時の連絡用に。雨や汗で濡れることも考えられるので、ジップロックなどで防水をしっかりしておきましょう。
テーピングテープ・・最小限のファーストエイドとして、テーピングテープを1本携帯しましょう。足首を捻挫したときの固定や、止血に、また靴底がはがれたときの応急処置としても使えます。足首の固定方法はあらかじめ勉強しておきましょう。
長時間にわたり山の中を走るトレイルランは、栄養補給も大事なスポーツ要素です。アップダウンの連続で、とりわけ体力の消耗や筋肉の疲労などが激しいため、しっかりとした栄養管理をすることで楽に走り続けることができます。
特に走行中の補給の基本として、ペプチドやアミノ酸のサプリやジェルがおすすめです。吸収が速いのでスピーディな筋肉のリカバリーやスタミナ補給に向いています。走りながら、また休憩時にこまめに摂ることがポイントです。
※栄養の補給法については、プロトレイルランナー大瀬和文選手のこちらのコラムをご参照ください。「トレランにおける”攻める補給法”とは 大瀬選手インタビュー」
ペプチドとは、たんぱく質が消化酵素で分解され、アミノ酸が数個固まった状態のこと。アミノ酸を2~3個まとめて取り込めるため、効率的に体内に補給することができます。肉や魚のたんぱく質からアミノ酸を摂ろうとすると、消化され吸収されるまでに3~4時間かかりますが、ペプチドでは、既に分解された状態ですので30~40分で吸収されていきます。
山を楽しんでいるのはトレイルランナーだけではありません。登山者やハイカーはもちろん、そこを住処とする動植物の存在があります。山のルール・マナーを守ってお互いに気持ちよく、大自然を満喫しましょう。
ハイカーに挨拶を・・山では「おはようございます」「こんにちわ」の挨拶を交わすのが常識。積極的に気持ちよく挨拶を交わしましょう。
また、後ろから追い抜くときも声をかけましょう。突然声をかけると驚かせてしまうかも知れませんので、10m位に近づいたら「すいません、抜きまーす」など声をかけて、存在に気づいてもらうようにしましょう。
登り優先・・山では登り優先がルールです。せかさず「ゆっくりどうぞ」と声をかけてあげてください。
山道を崩さない・・登山道が広がってしまうのを防ぐためにも、登山道以外の部分を走ってはいけません。山道の縁や丸太の階段の脇の部分なども、足をかけて崩してしまわないよう注意しましょう。
事故を起さない・・スピードを出し、軽装で行動するトレイルランは、大きなケガにつながる恐れがあります。自分はもとより、他人にも迷惑をかける事になるので、自己責任で十分注意しましょう。
また、コースが混んでいるときは、ハイカーを驚かせたりしないよう歩きに切り替えるとかして、自分が事故の原因にならないようにする配慮も必要です。
まったく初めてのコースの場合は特に、一人で山に入るのは避け、できれば経験のある仲間と一緒にでかけましょう。
仲間が見つからない場合は、最近はイベント会社、メーカー、ショップが主催する講習会・セミナーがあるので参加してみるのはいかがでしょうか? グッズをレンタルしてくれるところもあるので、本格装備を購入する前に試してみるという活用の仕方もできますよ。
いかがでしたか、肉体的にも精神的にも、新たな走りの楽しみ方が満喫できるトレイルラン。まずは手持ちの用具で、ご近所の公園からスタートしましょう!
※その公園で走ることができるかの確認はお忘れなく!