暑いからと注意を怠ってはいけないのが夏場の冷え。食品スーパーや図書館、電車内は、エアコンがしっかり効いている場合も多く、手や足の指先が冷たくしびれる「冷え性」に悩む人にとっては油断できない季節ではないでしょうか。
もし高齢者のご家族がこの冷え性だったら、気をつけたいのが「低体温」です。本人に自覚がないまま進行することもあるため、不調を訴えたり、判断力が低下しているなと感じたら、熱中症だけでなく低体温も疑ってみてはいかがでしょうか。
低体温とは、一定に保たれるはずの体の中心温度が36度以下になることを差し、35度以下にまで下がると「低体温症」と診断されます。震えが止まらなくなり、判断力が低下するなどの症状が現れ、重症化すれば意識を失ったり死に至ることもあります。
一般的には冬山の登山や真冬のマラソン大会などで起こりやすい症状ですが、実は高齢者はこの低体温リスクが高いことが分かっています。特に60歳代以上の低体温患者のうち、約4分の3が「屋内」で発症しており、単に暖かい家の中にいれば大丈夫、という理解は危険であると言えます。
ではどうして高齢者の低体温リスクが高まるのでしょうか。専門家によると以下のような生活習慣が影響すると指摘されています。
高齢になるほど誰しも若い頃に比べ食が細くなり、退職してからは活動量や活動範囲も狭くなるのは仕方のないことです。しかし、生活習慣の積み重ねによって、低栄養や筋力不足による体温調節機能の低下、糖尿病などの基礎疾患が影響していると考えられます。
「ウチは大丈夫」と思っていても警戒を怠ってはいけません。”食べているつもりでもご用心!高齢者に広がる新型栄養失調”でもご紹介しましたが、70歳以上になると5人に1人が低栄養状態であると報告されており、こうした運動機能の低下とともに、低体温という生命維持機能の低下にも注意が必要です。
特に夏場は暑さのため食欲が落ちてしまいます。また冷たいものばかり食べていると胃腸の働きを悪くしてしまうなど、栄養摂取には障害の多い季節です。食事への意識を高めて栄養不足にならないように注意しましょう。
中心体温の低下が引き起こすリスクは、体の機能低下に留まりません。私たちの免疫機能は36.5~37度で最大の効果を発揮するようにできています。また体温上昇とともに一時的に免疫力5~6倍となるため、風邪を引くと発熱するのは体の自己治癒機能であると言えます。
ただ逆に体温が低下してしまうと免疫機能は低下し、体温が1℃下がると白血球の働きが30%ダウンすると言われています。この影響で様々な体の不調が出やすくなることがわかってきました。例えば感染症や脳血管障害、糖尿病、虚血性心疾患などです。
また、気温の上昇と共に菌が繁殖しやすくなり食中毒のリスクが高まります。免疫機能が低下したところに、アタってしまうと重症化してしまうことも考えられます。冷蔵品はテーブルに出しっ放しにせず、食べるときだけ出して、食べ終わったらすぐに冷蔵庫内へしまうようにしましょう。
ポイントは「衣服」「食事」「運動」です。
私たちのカラダは水分が60~70%、たんぱく質が約20%、糖質・脂質・その他が約20%を占めます。一般的な成人が1日に必要なたんぱく質は、体重1kgあたり1g、例えば60kgの人なら60gが基準になります。
筋肉や胃腸などの臓器、皮膚といった組織から酵素やホルモン、血液まで、そのほとんどを作る上でたんぱく質が必要です。そのため、私たちの健康維持には、良質なたんぱく質が不可欠です。
冷えは体の内側から防ぐものです。ところが、高齢になるほど食事や運動などを生活に取り入れることは難しくなります。
特に夫婦世帯や独居世帯など、外からの刺激が少なく、個人の意思だけでは習慣化するのが難しいからです。ぜひとも会話を増やしたり、電話やメールも使ってコミュニケーションをとるなどしながら、励まし、支えながら見守ってあげるようにしましょう。
また、低体温は自覚症状が少ない上に、一般的な体温計などで外から測ることができません。寒さにつれて「おかしいな…」と感じたら、病院で調べてもらうとともに、まずは日頃から体を冷やさない生活習慣も見直しましょう。