「小田原」と聞いて、海や山といった自然をイメージする人は多いのではないだろうか。そのどちらも一度に感じることができる場所が、今回紹介する「サドルバックカフェ」。山の上にあり、バスは1時間に1本ほどしか走らない不便なこの店に、なぜ人が集まるのか。その場所でできる特別な体験を紹介する。
きれいな景色を眺められるカフェであり、牧場でもある。
社長の「やりたい」がうみだした人間交差点
根府川駅から山道を2kmほど登った先にあるのが「サドルバックカフェ」。車でないと辿り着くことさえも難しく、交通の便が良いとは決して言えないこの場所だが、11時のオープンから店内は賑わいを見せる。
サドルバックカフェの魅力は一言で表すことは難しい。山が近いためテラス席ではいつでも澄んだ空気を感じられ、相模湾を一望できるこの場所で、看板メニューのパングラタンが食べられる。腹を満たしたあとには、牧場で動物たちとも触れ合える。
このような場所を作り出したサドルバック社長の高橋行雄さんはこう語る。「私はただやりたいと思ったことを夢中でやってきただけなんです」と。
創業当初から変わらぬ味わい
サドルバック名物「パンケースに入った 魚介グラタン」
サドルバックの看板メニューの「パンケースに入った 魚介グラタン」を紹介しよう。中をくり抜いた丸いフランスパンの器に、グラタンが仕込まれた創業当初から変わらぬ味のこちら。濃厚なホワイトソースにエビやアサリなどの具材がごろっと入っており、お腹も心も満たされる一品だ。
開店当初に、ほとんど料理経験のない高橋さんが知り合いのシェフに教えてもらったもの。「景色そのものがごちそうだから食べ物はなんだっていいんだよ」と高橋さんは言うが、社長自らが焼き上げるこのメニューはSNSでも紹介され、これを目当てに来店する客もいるのだとか。
この風景がすべて。
この美しさに磨きをかけたい
「私にとってはカフェも牧場もこの環境もすべてつながっているひとつのものなんです」。そう語る高橋さんは、この場所を「牧場カフェ」にしていきたいという。店舗でコーヒーを買って牧場の好きなところに椅子をおいて飲んだり、ツリーハウスの中で動物を眺めながら好きなように時間を楽しんだり、そんな場所にしたいのだそう。素晴らしい景色のもとでは、ひとびとの大切な思い出が生まれやすいものだ。
「サドルバックカフェ」で動物と触れ合った子どもが大人なって獣医になったり、この場所で出会って結婚した人がいたりするのだとか。高橋さんはこの小田原の森と海の風景とともに、ひとりひとりの良き思い出が作れるよう、「サドルバックカフェ」の魅力をさらに磨いていくにちがいない。これから更に多くの人の思い出の場所となっていくであろうこの場所に、あなたも一度訪れてほしい。
一度として同じ日はない
この環境がそう教えてくれる
高橋さんはこの場所についてこう語る。「土地は個人のものではなく、預かっているものなんだ。使う能力のあるものが、その魅力をフルに使える価値観を持っていなければならないし、最大限に活かす生き方をしていかなければならない」と。
海が一望できる山の上に建つ「サドルバックカフェ」。ここから見える景色は晴れている日の景色だけではない。曇りの日だってあるし、嵐で海が荒れている日だってある。きれいなものだけを見るのではなく、ありのままを感じられる。
いい日があるのと同様に、うまくいかない日だってある。日々変わりゆく景色が、二度と同じ日がやってこない一日の大切さを教えてくれているのかもしれない。