小田原城と海のすぐ近くにあるワークショップカフェ「そろりと小田原」。お皿に絵付けをする染付け豆皿や香り袋づくりのワークショップを行う関敦子さん。「この場所だから」を大切にし、訪れる人を笑顔にし続ける彼女の想いをきいた。
いまに至るまでの道のり
「陶芸をはじめたきっかけはクッキーづくり」
「小さなころから、服や音楽が好きでした。いまのものづくりは、それが土台にあるんじゃないかなと思っています。ものづくりとしてはじめに専門的に取り組んだのは、大学で学んだテキスタイルでした。
その頃、ちょうど女子大生ブームがあって、私もなんとなく女子大生になるんだと思っていました。でも、普通なのはいやだなと思って、自分が何をしたいかを考えたんです。そこで思い浮かんだのが、ものづくりがしたいということでした。
美術大学で染織専攻し、卒業後テキスタイルデザイナーとしてアパレルへの生地デザインの提案をしたり、一緒にものづくりをしたりしていました。そのなかで、次第に国内の工場がアジアの工場に依頼するようになり、デザインも手書きからPCへと移っていきました。大きな時代の変化に危機感を持ち、ふと『このままでは将来がないな』と感じたのをきっかけにやめました。
それからしばらく海外を回って、日本にいてはなかなか経験することができない刺激的な出来事やたくさんの人とふれあうことができました。
陶芸をはじめたのはそのあとです。きっかけは日本に戻ってきて自然食クッキーをつくるアルバイトをしていたときに『焼くのって楽しい』と思ったことです。クッキーから陶芸なんて、自分でも突飛だとは思うけれど、経験したことがないものをせっかくならやってみたいと思って。
やっぱり自分が思い描くものをつくりたいという気持ちが強くありました。これまでの作品も、いままでに見たもの・経験したこと・海外で触れて感じたことを発散するような、自分が好きだと思えるものをつくってきました。
客観的に見たご自身について
「なんでも全部経験したい
将来は住所不定の生活をしてみたいです」
「ひとことで言えば、『欲張り』ですかね。
私は、基本的には自分がやりたいことをやって生きてきました。求めているだけではなにも変わらないので、自分から行動することや探究心も大事にしていることですかね。この先何歳からでも、新しいことも好きなこともやってみたらいいと思っています。
どんなことでも、周りがどう思うかよりも自分がどう思うかで行動をしているし、それがいいと思っています」
陶芸ワークショップで大切にしていること
「ひとの笑顔を生み出すよろこび」
「いま、仕事をする上で大切にしていることは、来てくれた人が『できた!』と笑顔になる瞬間です。
若いころはとにかくエネルギーが溢れていて、思い描いたものをそのまま作品にして、発散し続けているという感じでした。
歳を重ねるうちに、だんだんと自身の作品が溢れていく感覚に時代とのギャップを感じるようになりました。物質的なモノをつくり出すエネルギーを、精神的な喜びを生み出す力にすることに価値を感じるようになってきたんです。
だから陶芸家としてひとりでつくりたいものを作り続けるよりも、陶芸ワークショップを開いて多くの人に喜んでもらいたいと思うようになったんです。私のいままでの経験をいかすことで、人を笑顔にできることに価値があって、大切にしたいと思っています」
これからの展望
「夢は身ひとつ、トランクひとつで旅をすること」
「いままでもたくさんの経験をしてきたけれど、まだまだ見たいもの、食べたいもの、行ってみたいところ、経験したいことがたくさんあります。いつかは世界中をトランクひとつで巡るような生活をしてみたいし、宇宙も海の中も見てみたいです。
行った先々でしか経験できないものは必ずあるし、そういうものを大切にしたいと思っています。海外はもちろん、それ以外でもさまざまな場所を訪れて、そこにしかない、その場所だからこその魅力を見つけいていきたいです」
人に伝えたい小田原の魅力
「お城・海・山がそろう、ありがたいスペシャル」
「小田原の魅力はやっぱり、海や山が近くて自然が日常にあることと、街を歩くとタイムスリップしたみたいな歴史があることだと思います。小田原は場所の持つエネルギーがとても強くて、住む人たちのそれに影響されているなと感じます。
小田原は伝統的な街で、そうしたものをずっと守りながらいまに残しているなと思いますが、それはとても大変なことなんじゃないですかね。
そんな小田原の持つ場所の力や保守的な部分をうまく利用して、もっとたくさんの人にこの魅力を伝えられたらいいと思います」
まとめ
その場所だからこその魅力を見つけ続ける関さん。
いま、小田原で訪れる人の笑顔を生み出している彼女が、この先どんな「小田原だからこそ」の魅力を見つけ伝えていくのか楽しみだ。