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老舗ベーカリーの3代目がつくった和菓子のようなあんぱん

柳屋ベーカリーの「あんぱん」

2023.03.28
老舗ベーカリーの3代目がつくった和菓子のようなあんぱん

小田原に1世紀以上続く老舗「柳屋ベーカリー」。今回取材するのは、3代目代表の柳田一郎さんが生み出した、餡(あん)がたっぷりと詰まった和菓子のようなあんぱんだ。午前中にはほぼ売り切れてしまう、人気のあんぱんの秘密に迫る。

城下町に佇む老舗ベーカリーに変革を与えた新しい風

柳屋ベーカリーが創業したのは大正10年。つまり2021年でちょうど100年経つことになる。
国道1号線沿いにある店舗は漆喰造りで、門前には店名にもある「しだれ柳」がなびく。小田原の城下町の風情漂う店構えだ。

3代にわたり続いてきた同店は、当初給食や駅弁のサンドイッチ用のパンを製造するパン屋だった。しかし、昭和51年からはじまった米飯給食の影響で、パンの釜でお米をたくことになるほど、パンの需要が減ってしまった。

これをきっかけに、2代目の経営に新しい風を吹き込みたいと3代目である柳田一郎さんが平成3年頃にはじめたのが、今では小田原の名物ともメディアに取り上げられるあんぱんだ。現在では開店前には行列ができ午前中にはほぼ売り切れてしまうほどの人気商品となっている。

餡とパン生地の割合は8対2。
素材そのものの味を楽しめるあんぱん

柳屋ベーカリーのあんぱんの最大の特徴は、厚さ3mmの非常に薄く香ばしいパンに、味わい深い餡が、まるで餡そのものを食べているかのように感じるほどたっぷりと詰まっていること。

これは柳田さんが幼いころに好きだった箱根名物のお饅頭をイメージしてつくったのだとか。餡とパン生地は8対2の割合でつくられ、和菓子のような感覚で食べられるあんぱんを目指しているのだ。

餡に対する柳田さんの想いは非常に強く、香料、保存料、着色料は使用しない。素材そのものの味を堪能してほしいという想いから、さつま芋餡に白餡を加えることすらしないのだという。「確かなものをお客様に届けたい」という柳田さんの気持ちから、素材そのものを味わう餡づくりにたどりついた。

生まれ続けるここだけの味

餡の種類の多さも同店のあんぱんの魅力といえる。発売当時2種類だったあんぱんは現在では「幻の黒豆」「つぶし」「栗きんとん」などをふくむ13種類に増え、今後も増える可能性が高いという。

「唯一無二のあんぱんをつくりたいんです」という柳田さんは、さまざまな食材を餡として使用する挑戦を続けてきた。過去には「食べるラー油」や、湘南エリアにちなんだ「しらす」など、一見あんぱんとはかけ離れた食材をも取り入れ、試行錯誤を繰り返してきたのだとか。

もちろんすべてがイメージしたものになるとは限らない。しかし柳田さんが「まだ完成していない」と語るようにその挑戦の終わりはまだまだ先になりそうだ。今後はさらに「小田原」を意識したものをつくりたいと話す柳田さんは小田原名物である梅干しなどをつかった餡を考えているという。

目指したのは小田原の魅力を知ってもらうための入り口

この数年で小田原の駅前にはいくつかの商業施設がオープンし、市外からも人が訪れて賑やかになった。しかし、小田原の魅力は駅前だけで知ることはできない。

柳田さんは「街中に点在している様々な名所や名店、名物に足を運んでいただきたい」と語る。柳屋ベーカリーは駅前から徒歩15分程度。小田原城沿いを歩き、様々な歴史的な名所を見ながら、たどり着くことができる。

いまでは名物となったあんぱんをつくり続けることで、あんぱんを買いにくる人々が自然と街を歩き、まだ知られていないそれらに気づくこと。それが柳田さんの想いえがく理想なのだとか。

柳屋ベーカリーに訪れる際はぜひ小田原の街並みを歩きながら楽しんでもらいたい。

柳屋ベーカリー

〒250-0013
神奈川県小田原市南町1丁目3-7
電話:0465-22-2342
営業時間:10:00~16:00
定休日:毎週日曜日

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