創業1850年の加藤兵太郎商店は、小田原では「いいちみそ」というブランドで知られている。創業当時から続く木桶仕込みの味が人気な味噌蔵だ。昔からの味はそのままに、デザインは現代に生まれ変わらせ、より魅力的になった商品の秘密にせまる。
創業から170年、手づくりの味を伝える
「いいちみそ」を販売する加藤兵太郎商店は、約170年の歴史ある味噌蔵。 厳選した原料と箱根山系の美味しい地下水で仕込み、今では珍しい木桶での熟成を続けている。
加藤兵太郎商店では、ほぼ手づくりで味噌を生産してるため大量生産は難しい。しかし、ほとんどの工程を手作業で行うからこそ、「味噌と会話しながら味噌づくりができる」と加藤さんは語る。
そんな「いいちみそ」は全部で8種類。昔からの「白みそ」、「赤みそ」、「合わせ」、といった定番商品のほか、麹の甘さを感じられる「麹こし」や「麹つぶ」、毎月数量限定生産の「つづくみそ」、手間と時間をかけた逸品「箱根路」、そして、七代目加藤篤さんがあまりの美味しさに感動したという神奈川県津久井の大豆を使った新作「神奈川ブレンド」がある。
木桶だから受け継ぐことができた伝統の味
一般的に大手の味噌メーカーでは、仕込む際にステンレスタンクや強化プラスチックを使用している。効率的に大量生産するため温度を管理し、短期間で味噌を熟成させることが出来るからだ。一方、加藤兵太郎商店では90年以上も使い続けている「木桶(きおけ)」で熟成させている。木桶を長年使用するうちに麹菌が木桶に住み着き、そのお店特有の味とコクを醸し出すという。
だが、今では木桶で作られた味噌は市場に出回る味噌の1%しかない。蔵ごとの味を生み出すのに欠かせないと言われてきた木桶であるが、今では大きな木桶を作るところも全国で一社になってしまった。希少な木桶仕込み味噌が小田原にあること自体、この町の住人として著者はうれしく思う。
「よそ者」だから刷新できたパッケージの魅力
パッケージデザインの刷新には外部のデザイナーと共同で一年以上掛けて考案した。変更の際は、周囲からの反対意見も多かったと語る加藤さん。今の時代に寄せたデザインで今よりも多くの人に手に取ってもらいたいという想いから周囲の反対を押し切り、意見を突き通したことからも覚悟がうかがえる。
パッケージデザイン変更後、お客さんからの良い反応が来ることで、ようやく理解してもらえたと振り返る。モダンの中にどこかレトロを感じるパッケージは普段使いから、贈り物まで幅広く使われている。
日本の中心に近い小田原、
だからこそ誰でも食べやすい味噌
味噌は地域色のつよい食材で、京味噌や仙台味噌などがよく知られている。
小田原は東京に近く、いろいろな食の好みを持つ人が多い土地柄。「いいちみそ」は比較的食べやすいタイプの信州味噌の製法で作られている。「いいちみそ」には8種類もあるが、八丁味噌のような個性の強いものはない。
「味噌は体によいから毎日食べていただきたいんです。だから、おいしいだけではなく飽きのこない味を目指していきたい」と加藤さんはいう。
蔵元直売所では今ではすっかり見かけない昔ながらの量り売り(100g単位で販売)も行っており、8種類の味噌から買うことが出来る。香りを感じながらお好みの味噌を見つけて欲しい。