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失われつつある栽培方法による自然の循環の中で生きる椎茸

広川原木椎茸園の「原木椎茸」

2022.08.26
失われつつある栽培方法による自然の循環の中で生きる椎茸

原木椎茸をご存じだろうか。現在全国で主に流通しているのは、一年を通して安定して収穫できる菌床椎茸である。原木椎茸とは、生産するにあたっての難しさが起因して全国で栽培農家が減少傾向にある希少な椎茸だ。「広川原木椎茸園」がつくる原木椎茸の魅力とは?

「森のアワビ」と呼ばれるも
栽培難易度の高さから希少な存在となった椎茸

全国で流通している椎茸のうちの9割を占める菌床椎茸は、収穫までのサイクルが最短3ヶ月と短く、人工的に養分を与えることで、一年を通して安定した収穫が得られる。菌床椎茸には、生産効率を高めることを前提として発展してきた背景があるが、原木椎茸は違う。

「原木椎茸」は、人間がコントロールできない自然との共存から生まれる椎茸であり、栽培が難しく労力がかかる上、収穫までに2年もの歳月を要する。それゆえに、「森のアワビ」と評されながらも原木椎茸の栽培を行う農家は年々減少しているのが現実だ。

そんな中、地元に根ざし、高い評価を得ている原木椎茸がある。それが広川原木椎茸園の原木椎茸だ。

50年以上の経験が引き出す
安定した原木椎茸のおいしさ

広川原木椎茸園でつくられる原木椎茸の何がすごいのか。それは栽培の難しい原木椎茸のクオリティコントロールである。

原木椎茸の栽培において一番難しいことは、通常の農作物で言うところの「土」の役割を生やす原木のコンディションを整えることだそう。原木とは、クヌギやナラなどの木を切って放置し、水分を抜いて枯らしたもの。これらは栽培された時期、乾燥に必要な時間や条件などが異なるため、それに合わせて栽培条件を変えることが必要であり、彼らはその調整がうまいのだ。

それにより、ここで収穫された原木椎茸は、本来の魅力である「芳醇な香りとアワビのような歯ごたえ」を有する状態の良いものを、より安定して収穫することができるのだという。習熟の技がつまった、苦労の末にできた賜だからこそ安定供給できる味わいなのだ。

「うまくいくためのセオリーはない。自然を相手にしているので、各原木に最適な栽培方法をその場で見いだすことが秘訣なんです」と同園代表の広川公一さんは言う。50年以上原木椎茸と向き合い続けた彼すらも「原木栽培は難しい」と口にするほど、奇跡に近い味を堪能できる我々は幸せである。

非効率性を解決することで見えてきた
原木椎茸の持続可能な未来

先述したとおり、全国の原木椎茸の収穫量は減少し続けている。効率のよい菌床栽培に切り替える農家が増えているからだ。

広川さんはこの状況を打開すべく、原木椎茸栽培の生産性を上げようと試行錯誤を続けている。彼の言う効率化とは、収穫サイクルと品質の安定化である。

従来、春と秋にしか収穫できなかった原木椎茸を一年を通して安定的に収穫できる工夫をし、原木やしいたけ菌の種類、設定温度などの要素のベストな組み合わせを探し出すことによって、椎茸の品質をより安定化させる方法を編み出したのだ。

が、これで満足しないのが広川さんのすごさである。「さらに良い組み合わせ」を探すために、失敗を恐れず、試行錯誤を繰り返す。毎年が発見の連続なのだという。

日本の原木椎茸の未来を背負い、日々研究を続け、その結果を全国に発信したいという広川さん。研究の成果はすぐには出ないのかもしれないが、今日より明日、さらに良いものに進化する可能性を秘めている。そんな彼がつくる原木椎茸は、風祭にある鈴廣かまぼこの里「美蔵」にてかまぼこかき揚げとして提供されている。一度食べてみてはいかがだろうか。

「順応できる」それが小田原のよさ

広川さんは当初はみかんをメインに栽培していたが、50年前に原木椎茸の栽培をはじめたのだそう。

小田原についてはこう語る。

「海や山などの資源が豊かであるからこそ、環境に合わせた形で農業ができるんです。比較的どんな農作物であっても工夫次第で栽培が可能なのが小田原の良いところだと思います。」

彼の語る小田原の魅力がサステナブルな価値として未来に受け継がれることを願う。

広川椎茸園

電話:0465-22-9673

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