2021.10.29

魚肉たんぱく研究所資料室 > 【高栄養吸収性】魚肉ペプチドの栄養吸収(窒素有効性)試験

【高栄養吸収性】魚肉ペプチドの栄養吸収(窒素有効性)試験

魚肉ペプチドの栄養価は高く、吸収効率も良い

目的

魚肉タンパク質由来のペプチドは、血圧低下作用や筋肉疲労改善作用などさまざまな機能特性を有することから、大きな関心が寄せられている。しかし、魚肉ペプチド(FP)の生体内での窒素利用性については不明である。本研究では、ラットを用いた吸収試験を実施し、FPの生体内での窒素利用効率について、比較対照としてカゼインを用い検討した。

方法

実験飼料は全試験群AIN76組成に従ったAOACによるタンパク質効率試験法に準拠して調製した。
すなわち、魚肉ペプチドおよび対照としてのビタミンフリーカゼイン(オリエンタル酵母社製)を窒素源とし、飼料中窒素含量が1.6g/100g(純タンパク質として10%)になるように調製した。
実験動物として3週齢のWistar系ラットを用い、カゼインをタンパク質源とする対照群用餌料による5日間の予備飼育後、各群10匹ずつ平均体重が等しくなるように分けた。さらに7日間の予備飼育後、上述の試験飼料で7日間の本飼育を行い、全飼料摂取量および終体重を測定した。また、代謝性糞窒素および内因性尿窒素量を求めるため、飼料中の全タンパク質をα-コーンスターチで置き換えた無タンパク質群を同時に設定し、本飼育7日間の採糞、採尿を行い、それぞれの窒素含量を測定した。生物価およびNPUの算出は、以下のとおりに行った。

○見かけの消化吸収率 = I-F/I
○真の消化吸収率 = I-(F-F0)/I
○生物価 = I-(F-F0)-(U-U0)/I-(F-F0)
○正味タンパク質利用率(NPU) = I-(F-F0)-(U-U0)/I

I:摂取窒素量、F:糞窒素量、F0:代謝性糞窒素量、U:尿窒素量、U0:内因性尿窒素量

結果

雄Wistarラットのタンパク質効率および窒素出納に及ぼす魚肉ペプチド(FP)の影響

対照群(カゼイン) 魚肉ペプチド(FP)群
初体重(g) 89.7± 3.8 89.7± 3.8
終体重(g) 110.1± 5.0 126.8± 5.4 **
体重増加量(g) 20.4± 5.0 34.9± 6.8 **
餌料摂取量(g) 88.5± 7.2 96.0± 3.3 **
餌料効率 0.23± 0.06 0.36± 0.07 **
タンパク質効率 2.30± 0.57 3.63± 0.72 **
窒素出納(mg) 915.5± 112.8 1166.6± 52.4 **
見かけ消化吸収率(%) 94.4± 0.9 91.5± 0.4 **
真の消化吸収率(%) 99.8± 0.2 99.5± 0.2 **
生物価 84.4± 4.3 97.6± 1.5 **
NPU(%) 84.2± 4.2 97.1± 1.5 **

平均値±標準偏差(n=10) カゼイン群に対して **p<0.01

 

タンパク質効率は、摂取クンパク質(g)あたりの体重増加量(g)を示すもので、摂取タンパク質による体構成成分の生産効率を表し、被検タンパク質の栄養価を判断する基準として用いられている。
3.5以上が極めて良質、3.5未満から3.0以上が良質、3.0未満から2.0以上が普通、2.0以下が劣質とされる。今回得られた結果をこの基準で判断すると、FPは3.63で極めて良質と評価できる。生物価は、タンパク質の吸収後の体内利用率を示し、体内代謝とより直接的に相関する栄養指標として重要な指標である。生物価が90以上を示すタンパク質は、鶏卵タンパク質がみられる程度で、FPは高い生物価をもつタンパク質であるといえる。NPUは、摂取タンパク質が体クンパク質に保持される割合を示し、体構成タンパク質の維持ならびに増加分の合計に対する摂取タンパク質の利用率として評価できる。
今回の結果、FPのNPUはカゼイン群に比べて有意に高かった

今回確認できたFPの十分な栄養特性を利用すれば、消化吸収機能に障害をもつ病者用食品、消化吸収機能が未熟な乳児に対する調製粉乳への応用も期待でき、特にタンパク質の新陳代謝が激しく、筋肉疲労の起こりやすい、アスリートを対象にスポーツ向け食品などに応用できると考えられる。

実験協力&データ提供:関西大学 化学生命工学部 生命・生物工学科 福永健治教授

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