魚肉ペプチドの摂取による肝機能への影響はない
目的
これまでの研究で魚肉ペプチドには脂肪燃焼促進作用があり、中性脂肪や悪玉コレステロールを減少させる効果があることがわかった。本研究ではこのような効果が認められるレベルの魚肉ペプチドの給餌条件が肝臓機能に及ぼす影響を検証した。
方法
実験動物として4週齢のWistar雄ラットを各群7匹ずつ用いた。試験餌料は標準餌料としてAIN93G組成に準拠したものを対照群用の餌料とし、標準餌料中のタンパク質源であるカゼイン(餌料中20%含有)のうち20%および50%をFPに置換した餌料をそれぞれ、FP低群および高群とした。さらに、高コレステロール食を摂取した場合にFPが及ぼす効果を評価するため、上述の餌料にさらにコレステロールを0.5%添加したものを試験餌料とし、合計6群を設定した。
各実験群は一定条件下(室温23±2℃、湿度50±5%、12時間ごとの明暗、餌料・水は自由摂取)で飼育した。対照群用餌料で7日間の予備飼育後、各試験餌料で4週間飼育した後、血液生化学指標を測定した。
結果
(a) 血清総タンパク質は、コントロール群とコントロールコレステロール付加群の間に統計学上の差異がみられたが、絶対量については誤差範囲内であるため、全群を通して実質差がないと判断すべきである。血清総タンパク質は栄養状態の指標であることから、FPはタンパク質源として全く問題ないと言える。
(b) アルブミンは肝臓のみでつくられ、栄養過多状態を除けば高くなることはない。肝臓などに異常が生じた場合は、その程度に比例して低くなるため、A/G比は病気の程度の指標になるが、本研究では血清A/G比についても血清総タンパク質と同様実質的な群間の相違はないと判断するのが妥当である。
GOTおよびGPTは逸脱酵素と呼ばれ、これらの酵素を多く含む肝臓の細胞が壊死したり、炎症を起こしたりするとその程度に応じて臓器中から血清中へ漏出する。GOT、GPTは通常ひとまとめにして肝機能障害を示す指標とされている。本研究の結果からはいずれも、有意差は全く認められず、コレステロールの付加によっても肝機能の低減は実質上ないと判断できる。
まとめ
肝機能障害の指標となる血清総タンパク質、アルブミン/グロブリン(A/G)比、GOTおよびGPT含量の測定の結果、FP給餌は肝機能に影響を及ぼさないことが明らかとなった。
実験協力&データ提供:関西大学 化学生命工学部 生命・生物工学科 福永健治教授