魚肉ペプチドには骨代謝改善効果がある
背景および目的
近年、骨粗鬆症の増加が大きな社会問題となっており、カルシウム(Ca)摂取量の不足が骨粗鬆症のリスクファクターの一つに挙げられている。これまでに様々なCa給源の研究や、Ca代謝に影響を及ぼす因子の研究が行われ、カゼインの分解物であるカゼインホスフォペプチドなどがCa吸収促進作用があると報告されている。本研究では魚肉を酵素分解して得られる魚肉ペプチド(FP)に注目し、骨密度の変化および他の骨代謝のパラメータからFPの骨に対する効果を検証した。
方法
■実験動物
7週齢SD系雌ラットを1群7匹として使用した。動物は常法に従って卵巣摘出後、低Ca食(0.01%Ca、0.3%P)で35日間飼育した。餌料および水は自由摂取とし、動物ケージ設置室は12時間ごとの明暗、室温23±2℃、湿度50±5%に調節し、7匹ずつポリカーボネート製ケージで飼育した。
■試験餌料
カゼインのみを窒素源とするAIN93M組成を標準餌料/Control群(14%カゼイン)とし、カゼインにFPを添加したFP低群(13%カゼイン+1%FP)、FP高群(10%カゼイン+4%FP)に分け28日間飼育した。
■測定項目
・血清生化学検査
・腰椎および脛骨の骨密度の測定
・大腿骨破断特性および灰分量の測定
結果
図1.腰椎骨密度(a)および脛骨骨密度(b)
海綿骨が豊富な腰椎、および皮質骨が豊富な脛骨のいずれにおいても、FP高群はControl群に比べ、有意に(p<0.05)高い値を示した。
図2. 大腿骨中Ca(a)、大腿骨破断力(b)および大腿骨破断エネルギー(c)
骨密度との相関性が高い大腿骨中Ca量はFP高群はControl群に比べ有意に(p<0.05)高い値を示した。大腿骨破断力・破断エネルギーのいずれもFP高群はControl群に比べ有意に(p<0.05)増強効果を示した。
図3.カルシウム出納
実験期1(試験食開始直前2日間)、実験期2(試験食開始後2、3日後)、実験機3(15、16日語)および実験期4(25日、26日後)にそれぞれステンレス製代謝ケージに入れ、24時間尿および糞を採取し、尿中および糞中Ca排泄量を測定した。試験食開始直後の2期および3期においてFP高群はControl群に比べ、高値傾向を示した。
まとめ
以上の結果から、魚肉ペプチドは骨代謝改善に影響を与える素材の一つとして効果的であることが示唆された。
実験協力&データ提供:関西大学 化学生命工学部 生命・生物工学科 福永健治教授