魚肉ペプチドに急性毒性はない
目的
OECD化学物質毒性方針では2,000mg/kgの容量で死亡例が認められた場合にはLD50値(被験態の半分が死亡する用量)について詳細な試験が必要としていることから、魚肉ペプチド(FP)の毒性試験を試みた。
方法
予備実験
■ラットの種類と個体数
Wistar系ラット各群雌雄2匹
■投与飼料と量
FPを2,000mg、5,000mgおよび10,000mg/kgとなるように、それぞれ経口投与した
■観察結果
1週間後に、何ら異常が認められず、腫瘍臓器の解剖所見も正常
本実験
■ラットの種類と個体数
4週齢Wistar雌雄ラットを各群10匹(標準餌料で1週間予備飼育)
■投与飼料と量
FP投与群 :胃ゾンデによりペプチド10,000mg/kg(20ml/kgに調製)
対照群 :胃ゾンデにより水 20ml/kg
■飼育条件
室温23±2℃、12時間ごとの明暗、標準飼料、水は自由摂取
■観察・測定
毎日観察・餌料摂取量測定、7、14日後体重測定、14日後に剖検、血液生化学検査
結果
データ一例として表1に雄ラットの体重および解剖結果を示した。その他データをまとめ、本試験より次のことがわかった。
■死亡状況
いずれの群にも死亡、異常が認められなかった。
FPの単回投与急性毒性は事実上発現し得ない。
■観察・検査状況
一般状態・行動、病理学的異常、血液検査で差異は全例でなかった。
表1. 魚肉ペプチド(FP)単回投与雄Wistarラットの体重変化および14日後各種臓器重量
対照群 雄 | 魚肉ペプチド(FP)群 雄 | |
---|---|---|
初体重(g) | 135.4± 1.8 | 134.7± 2.1 |
7日後体重(g) | 172.4± 3.6 | 173.1± 4.8 |
14日後体重(g) | 204.6± 5.2 | 201.3± 7.4 |
肝臓(g) | 6.36± 0.21 | 6.42± 0.25 |
腎臓(g) | 1.54± 0.06 | 1.56± 0.07 |
心臓(g) | 0.68± 0.04 | 0.65± 0.03 |
脳(g) | 1.68± 0.01 | 1.67± 0.01 |
胸腺(g) | 0.45± 0.03 | 0.47± 0.05 |
脾臓(g) | 0.51± 0.02 | 0.49± 0.03 |
肺(g) | 0.83± 0.12 | 0.81± 0.09 |
大腸(結腸+直腸)(g) | 1.15± 0.23 | 1.21± 0.1 |
小腸(g) | 4.52± 0.55 | 4.47± 0.24 |
盲腸(+内容物)(g) | 2.42± 0.84 | 2.54± 0.62 |
白色脂肪組織(g) | 3.21± 0.47 | 3.27± 0.26 |
褐色脂肪組織(g) | 1.23± 0.07 | 1.18± 0.05 |
精巣(g) | 1.87± 0.23 | 1.75± 0.32 |
貯精嚢(g) | 0.95± 0.17 | 1.01± 0.15 |
前立腺(g) | 0.64± 0.05 | 0.63± 0.07 |
平均値±標準偏差 n=10
まとめ
FPの単回投与では、14日後のラットの体重および臓器重量に変化はなく、死亡例や異常も認められないことから、FPに急性毒性はないことがわかった。
実験協力&データ提供:関西大学工学部 生物工学科食品工学研究室 福永健治助教授