タンパク質は、種類や摂り方によって体への吸収率や活用のされ方が異なります。タンパク質は健康に過ごすためにも必要な栄養素の一つなので、せっかく摂取するなら効率良く体に吸収できると良いですよね。今回は、タンパク質の吸収率を高める方法について解説します。
タンパク質の種類と吸収率の違い
タンパク質には種類があり、種類によって吸収率や特徴が異なります。ここではタンパク質について具体的に解説していきます。
タンパク質の働き
タンパク質は体を作る役割のある栄養素で、筋肉はもちろん、臓器や肌のもとにもなっています。不足すると肌荒れや免疫力・代謝の低下などのデメリットを引き起こしやすくなるため、健康維持のためにもタンパク質をしっかり補給することが大切です。
動物性タンパク質と吸収率
肉や魚・卵・乳製品に含まれる動物由来のタンパク質は、動物性タンパク質と呼ばれます。動物性タンパク質の吸収率は90%以上で、非常に高いのが特徴です。
さらに吸収率だけでなく、吸収の速度も速いといわれています。そのため、運動後の筋肉合成のために必要なタンパク質を補給するときなど、速やかな補給が必要なときに最適です。
しかし、動物性タンパク質を多く含む食品は、コレステロールや飽和脂肪酸など、摂り過ぎると動脈硬化などの生活習慣病のリスクが高まる栄養素も含まれます。食べ過ぎや動物性タンパク質に偏った摂取は控えましょう。
植物性タンパク質と吸収率
豆や大豆製品など、植物由来の食品に含まれるタンパク質は植物性タンパク質と呼ばれます。植物性タンパク質の吸収率は70〜80%で、動物性タンパク質と比較すると吸収率はやや低めです。
吸収速度も動物性タンパク質と異なり緩やかですが、植物性タンパク質を多く含む食材は低カロリー・低脂質のものが多いため、ダイエット中などに積極的に摂取すると良いでしょう。
また、植物性タンパク質を多く含む食材はビタミンや食物繊維など、タンパク質以外の重要な栄養素を含むことも多く、タンパク質の吸収率を高めるサポートが期待できます。
必須アミノ酸とアミノ酸スコア
タンパク質の種類だけでなく、タンパク質の質に注目することも大切です。タンパク質は20種類のアミノ酸によって構成されています。そのなかでも、体内で合成できない9種類の必須アミノ酸は食品から補給することが必要です。この必須アミノ酸がバランス良く含まれた食材かどうかを判断する指標をアミノ酸スコアといい、スコアが100に近いほどバランス良く必須アミノ酸が含まれている食品ということになります。
食品のアミノ酸スコア
食品名 | アミノ酸スコア |
---|---|
鮭 | 100 |
豚肉 | 100 |
卵 | 100 |
牛乳 | 100 |
かまぼこ | 100 |
おから | 91 |
精白米 | 65 |
食パン | 44 |
上記の表からもわかる通り、動物性タンパク質を多く含む食品のほうがアミノ酸スコアは高い傾向にあります。吸収率が高く、良質なタンパク質を積極的に摂るためには肉・魚・卵・乳製品を積極的に食事に取り入れることが大切です。
タンパク質の吸収率を上げる方法
タンパク質の吸収率を高めるには、タンパク質の種類も大切ですが、摂り方も重要です。摂り方によって、タンパク質の吸収率も変わります。ここでは、タンパク質の吸収率を高める摂取方法について解説します。
こまめにタンパク質を摂る
タンパク質は一度に吸収できる量が決まっています。そのため、一気に摂取しても吸収率に変化はないうえ、全てのタンパク質を活用できるとは限りません。一度に吸収できる量は約40~50gといわれています。
一度の食事だけで50g以上摂取することは滅多にないかと思いますが、プロテインなど健康食品やサプリメントと合わせると50gを超える場合があります。吸収率を高めるためにも、プロテインなどは食事と間隔を空けて摂取する方法を選択するのが良いでしょう。
ビタミンB6、B2、Cなどタンパク質の吸収率を上げる栄養素を一緒に摂る
タンパク質の吸収率において、ビタミンは大切な役割を果たします。
タンパク質はそのまま体に吸収されるのではなく、消化酵素の力で分解され、アミノ酸の状態になってから吸収されます。
胃や小腸など様々な器官で消化・吸収が行われますが、ビタミンはそのサポートをする役割があります。
たとえば、ビタミンB6はタンパク質代謝の中心的存在で、タンパク質の分解や合成を助けます。ビタミンB2はタンパク質の分解を助ける役割があり、ビタミンCは筋肉や関節の強化に必要な成分です。
ビタミンをしっかり補給することで、タンパク質の吸収率を高めることができます。タンパク質を上手に活用することや吸収率を高めるためには、他の栄養成分についてもしっかり意識することが重要です。
ビタミンB6、B2、Cを多く含む食材
栄養素 | 食材名 |
---|---|
ビタミンB6 | サンマ、鰹、バナナ、ささみ |
ビタミンB2 | 豚レバー、卵、納豆 |
ビタミンC | いちご、ピーマン、柿 |
3食しっかりバランス良く食べる
タンパク質が不足しないようにするには、3食をしっかり食べることが大切です。必要な食事を抜くと、1食で無理にタンパク質を摂取しなければならないうえ、1日に必要なタンパク質量が不足してしまう可能性があります。ただし、3食食べていたとしても、おにぎりだけやパンだけのような偏った食事をしてしまうと、タンパク質量が不足してしまう可能性があるので、注意が必要です。
また、タンパク質の吸収率を高めるためには他の栄養素の力を借りることも必要になります。
野菜や果物などが不足するとビタミンが不足し、タンパク質の吸収率が低下してしまいかねません。食事は一汁三菜を心がけ、たくさんの栄養素を摂れるように心がけましょう。
タンパク質の種類別に食材を紹介
動物性タンパク質と植物性タンパク質は、それぞれ含まれる食材が異なります。偏りを無くして吸収率を高めるために、バランス良く食事に取り入れることが大切です。ここではタンパク質の種類ごとの食材のタンパク質量について紹介します。
動物性タンパク質が多く含まれる食品について
動物性タンパク質は栄養価も高く、体への吸収率も高いので積極的に摂りたい栄養素の一つです。
肉は脂身や皮を避けることで脂質を抑えることができます。
魚は赤身を選択することで低カロリーにできるうえ、高タンパク質を摂取することが可能です。
卵はタンパク質量はあまり多くないですが、アミノ酸スコアが高く、他の栄養素も優秀です。安価に手に入る食材のため、手軽なタンパク質補給に最適でしょう。
乳製品は脂質が高いものが多いので、低脂肪牛乳や低脂肪ヨーグルトなどを選ぶのがおすすめです。
動物性タンパク質を多く含む食品(1食あたり)
食品名 | カロリー | タンパク質量 |
---|---|---|
ささみ | 84kcal | 18.4g |
鶏むね | 93kcal | 18.6g |
鮭 | 160kcal | 26.8g |
ぶり | 308kcal | 25.7g |
卵 | 83kcal | 6.8g |
牛乳 | 106kcal | 5.2g |
植物性タンパク質が多く含まれる食品について
植物性タンパク質を多く含む食品は低カロリーで量をたくさん食べることができ、満足感を得られやすいです。しかし、吸収率は動物性に比べて低めですので、コントロールが必要です。
豆類は普段の食事で不足しがちな食物繊維が豊富です。食物繊維は便秘改善や腸内環境を改善してくれる役割もあります。野菜が不足しがちな人は豆類から食物繊維を摂る方法も良いでしょう。
植物性タンパク質を多く含む食品(1食あたり)
食品名 | カロリー | タンパク質量 |
---|---|---|
絹ごし豆腐 | 56kcal | 4.9g |
納豆 | 80kcal | 6.6g |
黒豆 | 62kcal | 3.1g |
枝豆 | 108kcal | 9.4g |
自分に合うタンパク質の摂り方について
ひとことにタンパク質といっても種類や役割・特徴が違うので、どのような方法で取り入れれば良いか迷う場合もあるかと思います。ここからはシーン別に、どのような種類のタンパク質を摂取すると良いのか具体的に紹介します。
運動をしている人の場合
筋トレなど運動をしている人の場合は、動物性タンパク質を積極的に摂ることと、ゴールデンタイムをうまく活用することをおすすめします。ゴールデンタイムとは、筋肉がタンパク質を吸収しやすいタイミングのことで、成長ホルモンの分泌が盛んになり、筋肉の修復が始まる時間帯です。
特に筋トレ直後は、筋肉を作る作用のピークです。筋トレ直後〜1時間後まではアミノ酸が筋肉に輸送される量が通常の3倍にアップするといわれており、筋肉の修復もより促進され、効率的にアミノ酸を作ることができます。
また、活動量の多い人は運動をしない人に比べてタンパク質の必要量が多いため、タンパク質含有量が多い動物性タンパク質を中心に摂るほうが良いでしょう。
ダイエットをしている人の場合
ダイエット中で食事からの摂取カロリーを低くしようと心がけている方には、植物性タンパク質の活用がおすすめです。
植物性タンパク質を含む食品は、吸収率は低めなもののカロリーも低く、たくさん食べることができます。
食事制限ダイエット中は少ししか食べることが出来ず、空腹に耐えきれなくなることもあるでしょう。
そのような際には、豆腐や納豆などを活用することで、満腹感を得ることができます。例えば、ハンバーグを作る際に、ひき肉におからを混ぜるなど、調理での工夫もおすすめです。
おつまみなどは揚げ物などカロリーの高いものも多いので、枝豆や冷ややっこなど大豆製品を選択すると低カロリーに抑えられるうえ、タンパク質の補給もできます。
高齢者の場合
高齢者は若年層に比べて、身体的機能が低下しているため、体への吸収率も低下しています。吸収率が低下すると体の中に上手に栄養成分を取り込みにくくなり、低栄養のリスクが高くなってしまいます。
そのため、できるだけ栄養価の高い食材を意識して摂取することが重要です。特に動物性タンパク質は吸収率が高いので、肉・魚・卵などはしっかり摂ると良いでしょう。
しかし、吸収率だけでなく体の消化能力なども低下しているため、油っこい食事などは体に負担をかけてしまいます。脂身を避け、魚や卵を中心に食べるのがおすすめです。
健康食品やサプリメントを活用する
食事から摂取することが難しい場合は、健康食品の活用もおすすめです。食事以外でも、最近はプロテインなど健康食品が多く販売されています。ここでは健康食品の活用方法や吸収率の違いについて紹介します。
プロテインについて(ホエイ・ソイ)
スーパーやドラッグストアでもよく見かけるプロテインには、ホエイプロテインと呼ばれる動物性タンパク質を摂れるものと、ソイプロテインと呼ばれる植物性タンパク質が摂れるものがあります。
ホエイプロテインは、動物性タンパク質が含まれているので、体への吸収率が高くなります。
運動後に肉や魚を食べることは、物理的に難しい場合が多いです。そのため、タンパク質の吸収率を上げるためにホエイプロテインを運動後に飲む人が多いです。
一方で、ソイプロテインは植物性タンパク質が含まれ、吸収率は低いですがゆっくりと吸収されます。そのため、シェイプアップ系のプロテインに植物性タンパク質は多く含まれています。
プロテインバー、タンパク質強化食品
おやつ感覚で食べられる、プロテインバーやタンパク質強化食品があります。吸収率の高い動物性タンパク質が使用されているものが多く、手軽にタンパク質が摂取できます。
プロテインバーは1本で10~20g近いタンパク質量が摂れるものが多いです。ただし、チョコバーなど甘いものが多く、脂質が多く含まれていて高カロリーのものも多いため、注意が必要です。
また、ヨーグルトや飲料ゼリーなどにタンパク質強化食品が増えています。食事やおやつにプラスで摂れる手軽さが人気です。しかし、1つあたりのタンパク質量は5~10gであるため、タンパク質量を多く摂りたい人はプロテインのほうが良いでしょう。
サプリメント
タンパク質は一度に吸収できる量が50gと決まっていますが、サプリメントを活用することで食事ではないタイミングでタンパク質を吸収できます。
たとえば、「サカナのちから」は、魚のタンパク質を酵素で分解して「ペプチド」と呼ばれる状態にしたサプリメントです。通常、食べた魚は分解されながら体内に吸収されるのに3~4時間かかりますが、魚肉ペプチドはあらかじめ分解してあるので、摂取後30~40分程で吸収されます。
吸収スピードに優れているため、必要なタイミングでより効率よくタンパク質を摂取できるでしょう。
タンパク質の摂り方、吸収率にも注目しよう!
タンパク質を効率的に最大限活用できるように、タンパク質の摂り方や吸収率も意識してみましょう。
タンパク質の吸収率を上げることで、より健康な体作りをサポートできます。目的に応じてタンパク質の種類を使い分けてみましょう。