寝つきが悪い、途中で目が覚める、すっきり起きられないなど、睡眠の悩みはありませんか?睡眠の質を向上させてこれらの悩みを解消するには、生活習慣と睡眠環境を改善することが大切です。この記事では、睡眠の質を改善するための方法と、就寝前に避けたい行動を紹介します。
質の良い睡眠とは?
「質の良い睡眠」とは、どのようなものなのでしょうか?寝ている間に自分の睡眠がどのような状態かを知ることはできませんが、睡眠中や寝入り・目覚めの状態、日中の生活の状態を通じて睡眠の質を判断する方法はあります。
ここでは、質の良い睡眠がとれているかどうか判断するコツと、睡眠の質を向上させるメリットについて解説します。
質の良い睡眠の評価指標
厚生労働省の資料から、質の良い睡眠がどのようなものかを見ていきましょう。睡眠への満足度は個人差があるため、必ずすべてに当てはまるわけではありませんが、おおむね以下の項目に当てはまるものが質の良い睡眠とされています。
「質の高い睡眠」の評価指標
- 睡眠と覚醒のリズムが規則正しく、昼と夜のメリハリがあること
- 睡眠の量が確保され、日中に過度の眠気がない、居眠りをしないこと
- 途中で目覚めることが少なく、まとまった睡眠がとれること
- 寝つくまでに時間がかかりすぎない、また極端に短く(数分以内)ないこと
- 寝起きが良く、スムーズに行動を始められること
- 日中に過度な疲労感がなく、意欲的に行動できること
- 自分の睡眠に満足できていること(熟睡できた感覚があるなど)
出典:厚生労働省 「第3章 より健康的な睡眠を確保するための生活術」
睡眠の質を向上させるメリット
睡眠は身体の疲労回復を促すだけでなく、心の健康維持にも役立ちます。睡眠の質の悪化や熟睡感の不足は、うつ病や不安障害のような心の病気と関係することが知られています。また、日中の眠気は注意力や作業効率の低下を引き起こす原因です。
睡眠が不足している人では、生活習慣病にかかるリスクが高いことも分かっています。睡眠の質を向上させ、睡眠不足を解消することで高血圧や糖尿病などの病気の予防に努めましょう。
睡眠の質を向上させるには睡眠時間の確保も必要
先ほど紹介した「睡眠の質の評価指標」の中には、「睡眠の量が確保されている」ことも含まれていました。睡眠によって疲労を回復するには、十分な睡眠時間を確保し、脳と身体を休める必要があります。
必要な睡眠時間は、一般的に6時間以上8時間未満といわれています。個人差や年齢による差があるため、日中の眠気で困らない時間を把握したうえで睡眠時間を確保し、睡眠不足を解消しましょう。
睡眠の質を向上させる【生活習慣】のポイント6つ
睡眠の質を高めるには、生活習慣と睡眠環境の工夫が必要です。まずは、生活習慣に着目したコツを6つ紹介します。
1)朝日を浴びる
朝起きたら、なるべく早く太陽の光を浴びましょう。太陽の光には身体に備わる体内時計をリセットし、目覚めを促す働きがあります。また、その約14~16時間後に眠気を促すホルモンが分泌されることが知られています。
体内時計は1日の身体のリズムを司っていますが、24時間よりやや長い周期で動いているため、朝日によって毎朝リセットされないと眠くなる時間が徐々に遅くなってしまいます。眠りと目覚めのメリハリをつけるためには、朝日を浴びて体内時計を毎日リセットすることが大切です。
2)朝食をとる
朝食にも体内時計をリセットする働きがあり、朝の目覚めを促すのに役立ちます。とる栄養素によっても体内時計をリセットする力が異なります。最も強力なのは、炭水化物とタンパク質を組み合わせた食事です。
炭水化物はご飯・パン・麺類から、タンパク質は魚・肉・卵・大豆製品・乳製品からとれます。鮭おにぎりや納豆ご飯、ツナや卵のサンドイッチなど、簡単なものから取り入れてみましょう。
3)適度に運動する
習慣的な運動は活動と睡眠のメリハリを生み、熟睡感の向上につながります。しかし、激しい運動で疲労や筋肉痛が生じると、かえって睡眠は妨害されてしまいます。息が弾む程度の有酸素運動を20分程度、週3~5回行うのがおすすめです。
睡眠の質を向上させるには、夕方に運動するのが最も効果的です。夕方にいったん体温を上げると、夜に体温が下がるタイミングで寝つきやすくなります。反対に、寝る直前に運動すると体温が上がってしまい眠れなくなるため注意が必要です。
4)昼寝を取り入れる
夜に十分な睡眠をとることが基本ですが、時間を確保できない場合は昼寝を取り入れる方法も有効です。15時ごろに30分以内の昼寝をすると、その後の作業効率の改善に役立ちます。それ以降、またはそれ以上の昼寝は、睡眠の質の向上には逆効果になるため控えましょう。
5)ぬるめのお風呂につかる
入浴はいったん体温を上げ、その後に体温が下がるタイミングで眠気が生じ、寝つきを改善する効果があります。また、ぬるめの温度でゆったりと入浴することでリラックスでき、スムーズな入眠を促すのにも役立ちます。
就寝直前に42℃以上の熱いお風呂につかると、体温が上昇しすぎてかえって寝つきにくくなってしまいます。湯温は40℃以下で、就寝1~2時間前までに入っておくのがコツです。
6)眠くなってから布団に入る
眠れないのが心配だからといって、早くから布団に入るのは逆効果です。寝る前の数時間は、1日の中で最も寝つきにくい時間です。布団に入っても眠れないことで心配になり、より眠れなくなる恐れがあります。
また、寝床で過ごす時間が必要以上に長すぎると、睡眠が浅くなり熟睡感を得にくくなります。そのため、布団に入るのは眠くなってからにしましょう。
布団に入っても寝つけない場合は、一度布団から出てリラックスし、眠くなってから布団に戻るのがおすすめです。自分なりのリラックス方法を持っておくと良いでしょう。
睡眠の質を向上させる【睡眠環境】のポイント3つ
生活習慣に続き、睡眠環境を整えることで睡眠の質を高めるコツを解説します。簡単な方法から取り入れ、質の高い睡眠の準備をしましょう。
1)枕の高さを調節する
枕は頭を支え、首への負担を減らすことで無理のない姿勢を保つ大切な寝具です。眠っている間に頭がしっかり支えられていないと、首や肩に負担がかかり、十分に疲労が回復できません。
枕の高さは、頭の角度が立っているときと同じになるのが理想です。寝姿を横から撮影し、90度回転させ、立っているのと同じように見えるか確認してみましょう。
枕が高い場合は中身を抜くか、真ん中を縫い合わせて凹ませると低くなります。高さが足りない場合は、タオルを枕の下に敷くと簡単に調節できます。
2)適度な硬さのマットレスを使う
寝ている間に身体全体がバランス良く支えられるよう、適度な硬さのマットレスを使いましょう。硬すぎるマットレスでは背中やお尻など一部分に圧力がかかり、起きたときに身体が痛くなることがあります。
反対に柔らかすぎるマットレスでは、身体が沈み込んで寝返りが打ちにくくなります。特に腰の部分が落ち込んで負担がかかりやすいため、腰痛の悩みがある人は特に注意しましょう。
3)部屋を適度な温度に保つ
暑くても寒くても眠りが深くなりにくく、途中で目が覚めやすくなります。夏は寝る約2時間前からクーラーをつけ、寝るときに部屋が26℃前後になるよう調整しましょう。また、冬の室温は16~19℃が理想的です。暖房を使用し、部屋全体を温めましょう。
電気毛布を使って布団を温めておく方法もあります。その場合は寝る前に使用し、寝るときにスイッチを切るのが快眠のコツです。睡眠中も使用すると体温が下がらないため、入眠の妨げになります。
睡眠の質を下げる就寝前のNG行動
睡眠の質を向上させるには、睡眠の質を下げる行動を避けることも大切です。ここでは、睡眠の質を下げる就寝前の生活習慣を5つ紹介します。簡単な方法から取り入れ、質の良い睡眠を促しましょう。
なお、寝る何時間前から避けると良いかは行動によって異なります。それぞれの項目を参考に、いつから避けるかのタイミングも意識すると良いでしょう。
喫煙
タバコに含まれるニコチンは、血圧を上昇させ脈を速くする働きがあります。タバコを1本吸うとその働きは約1時間持続し、寝つきが悪くなります。そのため、寝る1時間前から喫煙は避けましょう。
さらに、喫煙そのものが睡眠の質に悪影響を及ぼすことも指摘されています。喫煙者の睡眠は非喫煙者と比べ、眠りが深くなりにくいことが知られています。時間を問わず吸わないのが理想といえます。
飲酒
寝つけないことに悩み、寝る前にお酒を飲む人もいます。アルコールは確かに寝つきが良くなりますが、睡眠の途中で眠りが浅くなってしまう「ノンレム睡眠」を増やすことが知られています。熟睡感が得にくくなるため、睡眠の質には悪影響です。
飲酒の1日あたりの適量は、ビールであれば中瓶1本、日本酒であれば1合に相当します。この量のお酒に含まれるアルコールが分解されるまでには3~5時間かかるとされています。睡眠の質を向上させるためには適量飲酒を心がけ、夕食とともに飲酒を終えるのが良いでしょう。
スマートフォンの使用
寝る直前までスマートフォンなどの画面を見ていると、画面からの明るい光によって目がさえてしまい、寝つきが悪くなります。睡眠の質を向上させるには、少なくとも寝る30分前からはスマートフォンなどの電子機器の使用は避けたほうが良いでしょう。
カフェインの摂取
カフェインには覚醒効果があり、入眠を妨げる、睡眠を浅くするなどの働きがあります。また、利尿作用もあるため、眠った後に尿意を催し目が覚める原因にもなります。
カフェインの作用が持続するのは、摂取から約3~4時間です。睡眠の質を向上させるために、カフェインが含まれる飲み物の摂取は寝る4時間前までにしましょう。
カフェインはコーヒーに特に多く含まれますが、紅茶や緑茶、コーラにも含まれています。栄養ドリンクやエナジードリンクにも配合されている場合があるので、商品パッケージに記載されている栄養成分を確認することが大切です。
食事
寝る前に夕食をとると消化のために胃腸が活動し、睡眠が妨害されます。また、体内時計の時刻の遅れにもつながり、睡眠の質を悪化させる原因になります。
夕食は寝る2時間前までに済ませるのが理想です。帰宅が遅れて睡眠直前の食事になりそうな場合は、夕方に軽く補食をとり、夕食をその分減らすのがおすすめです。また、夕食は消化に負担をかけないよう、脂質が少ないものや軟らかく煮たものを選ぶと良いでしょう。
また、夕食にかまぼこを取り入れるのもおすすめです。かまぼこは脂質が少なく消化しやすい食材です。野菜と一緒に鍋料理や汁物に入れれば、遅い時間の夕食に適した食事が簡単に作れます。
生活習慣と睡眠環境を見直して睡眠の質を向上させよう
質の良い睡眠は生活習慣病や心の病気を予防し、健康を維持するために重要です。また、疲労を回復し、日中の集中力や作業効率を改善する働きもあります。
睡眠の質を向上させるには、生活習慣と睡眠環境の改善が欠かせません。特に睡眠と覚醒のリズムを司る体内時計を整えるには、朝の行動が大切です。朝日を浴び、簡単なものでも良いので朝食をとるよう習慣づけましょう。
また、適度な運動やぬるめの温度での入浴も睡眠の質の向上に役立ちます。寝る前はカフェインの摂取や飲酒・喫煙など、覚醒につながる行動は避け、スムーズに入眠できるよう心掛けましょう。