健康診断などでLDL-コレステロール(LDL-C、悪玉コレステロール)が120mg/dl以上であれば、動脈硬化を起こしやすく、脳卒中や心臓病などの怖い病気になりやすい状態だと言われており、LDL-Cが高い人は日々の食事を見直す必要があります。「魚肉ペプチド」もそのサポートをできるかもしれません。
悪玉コレステロール(LDL-C)対策こそ優先して行うべし
「肥満や高血糖、高血圧、メタボは健康に良くない」ということは常識です。では、高コレステロール血症はどうでしょう? コレステロールには悪玉(LDL-C)や善玉(HDL-C)があって紛らわしいですし、身体には悪いとは思うけれども、血糖や血圧ほどには問題視していない人が多そうです。
しかし、悪玉コレステロール(LDL-C)を減らすことは、肥満や高血糖、高血圧を是正するよりもずっと「動脈硬化による病気の予防につながりやすい」ことが分かっています。LDL-Cが高い(120mg/dl以上)なら、優先してコレステロール対策に取り組むことをおすすめします。それが結果として肥満など他のリスクの低減にもつながります。
もし、健診などで「コレステロールが高め」と言われたなら、すぐに食生活の見直しに取り組んでください。
悪玉コレステロール(LDL-C)を減らす食生活とは
LDL-Cを下げるためには、食事に含まれるコレステロールを減らせばいいと思いますよね。
それも正しいのですが、血液中に流れているLDL-Cの8割は肝臓で合成されたものであり、食事由来のものは2割しかありません。食事中のコレステロールを減らすことも対策のひとつですが、それほど大きな効果は望めません。
それより効果的な方法は、「飽和脂肪酸の量を減らすこと」です。
飽和脂肪酸とは、冷蔵庫に入れたときに固体になる油のことです。例えば、バターやラード、肉の脂身などがそうです。
これらの摂取量を減らすと、体内でのコレステロール合成が減ることが分かっています。血中LDL-Cの8割を占める体内合成を減らせるのですから、より効果的に対策をすることができます。
ですから、LDL-Cが高いと言われたら、まずは日々の食事から飽和脂肪酸の量を減らすことに取り組んでみてください。
料理の際は、脂身の少ない肉を選んだり、脂身や皮を外して食べたりしてみましょう。 その他に、飽和脂肪酸の多い食材として、レバーや乳製品およびトランス脂肪酸を含む菓子類、加工食品などがあげられます。これらも摂りすぎないように注意しましょう。
食物繊維を意識的に多く摂ることもLDL-C対策に良いとされています。食物繊維が多い食品は野菜、きのこ、海藻などです。
なお、たばこはLDL-Cを増やして病気のリスクを高めますので、喫煙している方は禁煙も必要です。
魚肉ペプチドが悪玉コレステロール(LDL-C)を減らす可能性が示された
食生活を見直す必要がある「コレステロールが高め」の人に、ご紹介したい研究結果があります。関西大学化学生命工学部 の福永健治教授らが「魚肉ペプチドがLDL-Cを軽減する可能性」を示したものです。
魚肉ペプチドは、良質なたんぱく質が多く含まれる魚肉たんぱく質を細かく分解したものです。
この魚肉ペプチドを動物(ラット)のエサに混ぜて飼育したところ、従来のエサを食べているラットと比較して、血中LDL-C値が下がりました。また、エサに魚肉ペプチドの含有量が多くなるほど、LDL-Cはより下がりました(図1左)。
さらに、高コレステロール食になるように、エサにわざとコレステロールを添加した場合でも、血中LDL-C値が下がることが確認できました(図1右)。
つまり、魚肉ペプチドを摂るとLDL-Cが減ること、コレステロールの多い食事を摂っていてもLDL-Cが減ることがわかりました。
なお、悪玉のLDL-Cだけでなく、善玉のHDL-Cも一緒に減ってしまうと困りますので、HDL-Cへの影響もチェックしています。その結果、魚肉ペプチドはHDL-Cにはほとんど影響を及ぼさないことが確認できました。
ただし、これは動物実験ですので、この結果がそのまま人間にも当てはまるとは限らないことに注意が必要です。
※当研究について詳しくは、資料室研究データご覧ください。
【コレステロール低減】ラット脂質代謝系に及ぼす魚肉ペプチド給餌の影響3~魚肉ペプチドによる血中コレステロール低減作用~
悪玉コレステロール(LDL-C)が高めなら、食事に気を付けて
今回は、優先して対策すべき「悪玉コレステロール(LDL-C)」について解説しました。
LDL-Cの値を下げるには、食事中のコレステロールだけでなく、飽和脂肪酸の摂取量を減らすことが重要です。食物繊維の積極的な摂取や禁煙も有効です。
また、ご紹介した通り、食習慣の改善のお供として、魚肉ペプチドが力になる可能性が研究で示されました。もし興味があれば試してみてくださいね。
<参考文献>
宮本恵宏ら:特定保健指導の対象とならない非肥満を含む心血管疾患危険因子保有者に対する生活習慣改善指導ガイドライン(Ver.0.13),2017.