タンパク質の重要性を理解していても、朝食では十分に摂れていないという人が多いのではないでしょうか。朝、しっかりタンパク質を摂取することで、一日を健やかに過ごせるとともに、さまざまな効果も期待できます。本記事では、朝にタンパク質を摂取するメリットや摂取時のポイント、おすすめのメニュー例などを解説します。ぜひ参考にしてください。
朝はタンパク質が不足しがち
タンパク質を消化・吸収できる量には限があり、「食べだめる」ことができません。そのため、朝・昼・晩と三食でバランスよく摂取する必要があります。
しかし、朝食で十分にタンパク質を摂れていない人が少なくありません。ある研究で、1食あたりのタンパク質の摂取量が20gに達しているかどうかを調査したところ、「達していない」と答えた人の割合は、三食の中で朝食が最も高い結果でした。
長時間タンパク質の補給が絶たれている朝に、意識的にタンパク質を摂取する必要があります。
※参考:Current protein and amino acid intakes among Japanese people: analysis
of the 2012 National Health and Nutrition Survey│Geriatr Gerontol Int. 2018 May;18(5):723-731.
朝、タンパク質を補う5つのメリット
朝食で十分にタンパク質を摂取することで、どのような効果が期待できるでしょうか。5つのメリットについて、具体的に解説します。
1.体内時計が整う
体内時計は、睡眠・体温・ホルモン分泌などの生理機能をコントロールしています。早稲田大学理工学術院の研究によると、タンパク質が豊富な食事には、体内時計を同調させる効果があります。また、タンパク質を構成するアミノ酸の一つである「システイン」にも、体内時計を調整する機能が認められています。
朝から十分な量のタンパク質を摂取すると、生活リズムが整って、1日を健やかに過ごせます。なお、体内時計の調整には、食事の内容だけではなくタイミングも重要です。タンパク質は、起床後1時間以内に摂取することをおすすめします。
※参考:Glucagon and/or IGF-1 production regulates resetting of the liver circadian clock in response to a protein or amino acid-only diet│EbioMedicine 2018年1月21日
2.筋力低下を防ぐ
筋肉は常に合成・分解を繰り返しています。しかし、筋肉の材料となるタンパク質が不足すると、合成ができなくなる一方で分解ばかりが進み、筋力低下につながります。睡眠時には長時間タンパク質の供給が絶たれるため、朝食でしっかりタンパク質を摂取して、筋肉の分解を防ぎましょう。
視点を変えると、タンパク質が不足している状態に、朝食で摂取するタンパク質の吸収率は非常に高いと言えます。十分な量のタンパク質を摂取して筋肉合成を促し、筋力アップにつなげましょう。
3.ダイエット効果が期待できる
タンパク質には、食欲抑制や代謝アップといった、ダイエット効果が期待できます。たとえば、タンパク質を消化する過程で分泌される、コレシストキニンやGLP1といったホルモンには、食欲を抑える効果があります。また、タンパク質は食事をエネルギーに変換する働きがあり、脂肪燃焼や基礎代謝の維持にも大きな役割を果たしています。
朝食でしっかりとタンパク質を補うことで、1日の摂取カロリーを抑えつつ、痩せやすい体をつくれます。
4.睡眠の質が向上する
朝にタンパク質を摂取すると、良質な睡眠が得られます。タンパク質を構成するアミノ酸のひとつに「トリプトファン」があります。朝にタンパク質を摂取すると、タンパク質に含まれるトリプトファンが、日中には「セロトニン」というホルモンに変化し、さらに夜には、睡眠を促すホルモン「メラトニン」に変化して、深い眠りを促します。
なお、トリプトファンは体内では生成できない必須アミノ酸であるため、食事で補う必要があります。
5.1日の仕事がはかどる
やる気を引き出す「ドーパミン」や「セロトニン」などの主成分は、タンパク質に含まれるアミノ酸です。ドーパミンは、集中力を高め、幸福感やポジティブな感情を脳内に生み出します。またセロトニンは、精神を安定させて、ストレス耐性を強める効果があります。朝にしっかりとタンパク質を補うことで、ドーパミンやセロトニンの分泌を促し、1日の集中力を高めたり、ストレスを和らげたりする効果が期待できるでしょう。
摂取量の目安
1日に必要なタンパク質の量は、成人男性が65g、成人女性が50gとされています。日常的に運動をする人はタンパク質の消費率が高いため、より多く摂取する必要があります。また、50代以降はタンパク質の消化吸収率が落ちるため、若い世代よりも多くタンパク質を摂取する必要があります。1食あたりの摂取量としては、20gずつを目安に摂るのが理想的です。
※参考:日本人の食事摂取基準(2020 年版)|厚生労働省
食品に含まれるタンパク質量の目安
朝食で20gのタンパク質を摂取するためには、何をどのくらい食べればよいのでしょうか。一般的な朝食メニューに含まれる食品のタンパク質量は、以下のとおりです。朝食メニューの参考にしてください。
食品名 | 摂取量 | タンパク質量 |
---|---|---|
卵(Mサイズ) | 50g(1個) | 6.1g |
味噌 | 16g(味噌汁1杯) | 2.8g |
納豆 | 50g(1パック) | 8.3g |
豆乳 | 200g(コップ1杯) | 7.2g |
ロースハム | 30g(3枚) | 5.6g |
鮭 | 80g(切り身1切れ) | 17.8g |
牛乳 | 200g(コップ1杯) | 6.6g |
ヨーグルト | 90g(1カップ) | 3.9g |
チーズ | 20g(スライス1枚) | 4.5g |
※参考:食品成分データベース|文部科学省
朝にタンパク質を摂るときのポイント
糖質・脂質と一緒に摂る
タンパク質と糖質を一緒に摂取すると、体内のタンパク質分解を抑制できます。体内にエネルギーが不足していると、筋肉を分解してエネルギーがつくられます。糖質はエネルギーとして活用されるため、糖質摂取が筋肉分解の防止につながるのです。
また、体内時計をリセットして生活リズムを維持するには、タンパク質と糖質・脂質を一緒に摂取すると効果的です。ある研究で、糖質と脂質(とくに魚の油)を一緒に摂取すると、インスリンの分泌が促進され、体内時計をリセットすることが解明されています。
※参考:Glucagon and/or IGF-1 production regulates resetting of the liver circadian clock in response to a protein or amino acid-only diet│EbioMedicine 2018年1月21日
消化に優しい食材を選ぶ
朝はエネルギーが不足しているため、消化しやすく、すぐにエネルギーに変わる食材を選ぶことをおすすめします。食べ物の消化吸収には、約12時間かかるといわれています。朝食を摂るタイミングによっては、前日の夕食を消化吸収しきれていません。胃腸に過度な負担をかけるのを避ける意味でも、脂質が多すぎず、消化のよい食材を選びましょう。
朝のタンパク質補給には魚がおすすめ
魚のタンパク質は、アミノ酸スコアが100と高く、良質で体内に吸収されやすいことがわかっています。アミノ酸スコアとはタンパク質の栄養価を表す指標で、体内で生成できない9種の必須アミノ酸がバランスよく含まれているかを評価するものです。
また、魚は肉や卵に比べて動物性脂質が少なく、消化のよい食材です。さらに、マグロや鮭などはタンパク質の分解・吸収を助けるビタミンB6も豊富に含まれています。前述のとおり、魚の油には体内時計をリセットする効果もあり、朝食に適した優秀なタンパク源といえます。
※参考サイト:食品たんぱく質の栄養価としての「アミノ酸スコア」|日本食品分析センター
手軽にタンパク質を摂れる朝メニュー例
時間のない朝でも、十分なタンパク質を手軽に摂取できるメニュー例を紹介します。「食品に含まれるタンパク質量の目安」の内容も参考に、タンパク質と他の栄養をバランスよく摂取できるよう、工夫しましょう。
メニュー例 | おおよそのタンパク質含有量 | TOTAL |
---|---|---|
・ご飯 ・味噌汁 ・焼き鮭 ・ひじき煮 |
2.7g 2.8g 17.8g |
約20g |
・トースト ・ハムエッグ ・サラダ ・ヨーグルト |
6g 9.8g 3.9g |
約20g |
・ツナサンド ・野菜スープ ・バナナ ・豆乳 |
16.9g
1.1g |
25.2g |
※参考:食品成分データベース|文部科学省
朝食で摂るのが難しい場合は?
朝は忙しいため、食事でタンパク質を補うのが難しいという人もいるのではないでしょうか。そのような場合は、プロテインやサプリなどを活用すると、手軽にタンパク質を摂取できます。特にタンパク質が分解された「ペプチド」という物質のサプリは、タンパク質を摂取するよりも消化吸収率が高いため、忙しい朝におすすめです。
まとめ
健康のためには、タンパク質を三食でバランスよく摂取することが大切です。朝にタンパク質をしっかり摂取することで、体内時計のリセットや筋肉分解の防止、ダイエット効果など、さまざまなメリットがあります。睡眠の質や集中力を高めるといった効果も期待できます。朝はどうしてもタンパク質が不足しがちですが、朝のタンパク質摂取を意識して、ヘルシーライフを目指しましょう。
「魚肉たんぱく研究所」は、鈴廣が2007年に設立した研究所です。「お魚たんぱくで世界を健やかにする」をテーマに、魚たんぱくのさまざまな可能性について研究を進めています。