自分に必要なタンパク質の摂取量がどれくらいか知っていますか?タンパク質は体に必要な栄養素ですが、摂りすぎると健康に悪影響を及ぼします。この記事ではタンパク質の摂取量の目安と、適量を摂取するための食事のポイントを解説します。
タンパク質はどんな栄養素?
ンパク質の適切な摂取量を理解するには、まずタンパク質が体内でどのように働いているかを知ることが大切です。ここではタンパク質の役割と、体内での代謝について解説します。
体内での役割
タンパク質は、筋肉や臓器などの体の組織を構成する主な栄養素です。 必要な酵素やホルモン、免疫を司る抗体など、さまざまな物質を作っています。また、1g当たり4kcalのエネルギー量を持ち、体を動かすエネルギー源としても使われます。
タンパク質の代謝
体を構成しているタンパク質は、常に分解合成を繰り返し、少しずつ新しく生まれ変わっています。体タンパク質が分解されてできたアミノ酸の一部は尿素に変換され、腎臓から尿として排泄されます。
排泄された分のアミノ酸を補給するために、食事からタンパク質を摂取することが必要です。摂取したタンパク質は消化によってアミノ酸に分解され、小腸から吸収されます。アミノ酸は体のさまざまな組織で使用され、余った分はエネルギー源として使われます。
タンパク質を摂りすぎるとどうなる?
タンパク質は体にとって必要な栄養素ですが、摂りすぎると悪影響を及ぼします。長期間にわたって摂りすぎることでさまざまな症状が現れ、健康を害する可能性もあるのです。ここではタンパク質の摂りすぎで起こるデメリットをご紹介します。
カロリーオーバーで太る
タンパク質を必要以上に摂りすぎるとカロリーオーバーにつながり、体脂肪として蓄えられるため体重に影響します。
また、タンパク質の摂取源となる肉や魚、卵、大豆製品、乳製品には脂質も含まれます。脂質は1g当たり9kcalとタンパク質よりも高カロリーであるため、摂りすぎると体重に大きく影響する栄養素です。
また、肉などから動物性の脂質を摂りすぎると太るだけでなく、血中のコレステロール値が上昇し、動脈硬化や心臓病、脳卒中などにつながる恐れもあります。
腸内環境が乱れる
タンパク質の中でも特に肉などの動物性タンパク質は、腸内に住む悪玉菌のエサとなり、体内にとって有害な物質を作り出します。動物性タンパク質を過剰に摂取することで腸内環境のバランスが乱れ、便秘や臭いおならが出るなどの症状を引き起こします。
腎機能を悪化させる可能性がある
タンパク質を摂りすぎると、過剰分を排泄するために腎臓に負担がかかります。特に慢性腎不全の発症リスクが高い人では、腎機能を悪化させる可能性があります。糖尿病や肥満の人、腎機能が低下し始めた人などはタンパク質の摂りすぎに注意しましょう。
また、同じタンパク質でも、摂取する食品によって腎臓への負担が異なることが研究によって示されています。慢性腎不全の発症リスクを高めるタンパク質源は、牛肉や豚肉などの赤身肉です。鶏肉や魚、大豆製品、乳製品などに置き換えることで、リスク軽減に役立つとされています。
出典:National Library of Medicine「Red Meat Intake and Risk of ESRD」
尿路結石ができやすくなる
尿路結石は尿中の尿酸などの物質が結晶化し、石のように固まる病気です。できた石は腎臓や尿管などを傷つけ、激しい痛みや血尿などの症状を引き起こします。
動物性タンパク質を過剰摂取することで尿中の尿酸が増加し、結石ができやすくなります。また、結石の生成を阻害する尿中クエン酸の量が減少することも原因のひとつです。
タンパク質はどれくらいが摂りすぎ?
タンパク質はどれくらいからが摂りすぎになるのでしょうか?ここではタンパク質摂取の上限と、摂取したい目安量をみていきましょう。
タンパク質摂取量の<上限>はどれくらい?
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、摂取エネルギー量の20%をタンパク質摂取の上限としています。これは生活習慣病の予防のため、代謝の変化や健康障害に影響を与えないとされた基準値です。
例えば1日に2000kcal摂取する人の場合、20%の400kcalまでをタンパク質から摂取できます。タンパク質1g当たり4kcalであるため、摂取できるタンパク質量の上限は100gです。
タンパク質の摂取の<目安>はどれくらい?
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日に摂取するタンパク質の推奨量を定めています。成人男性では18~64歳で65g、65歳以上は60g、成人女性では年代を問わず50gが推奨量です。
この量は、1日に失われるアミノ酸を補い、体を構成するタンパク質を維持するために必要な量です。活動量が高い場合や筋肉を増やしたい方は、推奨量より多くのタンパク質の摂取を目指しましょう。
トレーニングの強度に応じて必要量は異なりますが、体重1kg当たり約1.6gまではタンパク質の摂取量に応じて筋肉量が増えることが知られています。さらにタンパク質の摂取量を増やしても筋肉量はそれ以上増えないため、体重1kg当たり1.6gまでを目安に摂取すると良いでしょう。
タンパク質を摂りすぎないための食事のポイント
タンパク質を適量摂取し、体への悪影響を抑え病気を予防するには、毎日何をどれくらい食べれば良いのでしょうか?タンパク質の摂りすぎを防ぎ、適度な量を摂取するための食事のポイントを5つ紹介します。
タンパク質源は毎食手のひらサイズにする
タンパク質源となる魚介類や肉類、卵や大豆製品の摂取量の目安は、1食当たり手のひらサイズです。手のひらの大きさ・厚みと同じくらいの量になるよう、多い場合は量を調整しましょう。
重さで示すと約80~100gで、魚なら一切れ、または卵1個と納豆1パックに相当します。この量を目安にすることで、タンパク質15~20gを毎食摂取できるでしょう。この量のタンパク質源を含む食事を1日3食取ることで、1日の推奨量を満たすのに役立ちます。
タンパク質はさまざまな食品から摂る
タンパク質源によって、含まれるアミノ酸の種類が異なります。特に体内で合成できない必須アミノ酸は9種類あり、1種類でも不足すると体タンパク質の合成の効率が低下します。そのためタンパク質源を偏りなく食事に取り入れ、さまざまなアミノ酸を摂取しましょう。
また、タンパク質摂取を肉に偏らないようにすることは、腎機能の低下や尿路結石の発症を防ぐためにも大切です。肉を食べてはいけないわけではありませんが、魚や大豆製品も交互に取り入れ、肉メインの食事が続かないようにするのがおすすめです。
3食に分けて摂る
1日に必要なタンパク質は、3食に分けてバランス良く摂りましょう。タンパク質は、過剰摂取した分を体に蓄えておけません。また、タンパク質を大量に摂ると消化に負担をかけ、未消化のタンパク質が腸内に住む悪玉菌のエサになり、腸内環境を悪化させる原因になります。
食事からのタンパク質摂取が不足しがちな場合や、筋トレ中でタンパク質量を多く摂りたい場合は、間食で補うのがおすすめです。牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品や、魚肉ソーセージ、大豆バーやプロテインバーなどを活用すると良いでしょう。
主食・副菜と組み合わせて摂る
1食にタンパク質源だけでなく、炭水化物源になるご飯・パン・麺などの主食、野菜・海藻・きのこを使った副菜も取り入れ、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。
主食の役割
主食に主に含まれる炭水化物は、体を動かすエネルギー源です。体に必要なエネルギーが不足すると、筋肉を分解してエネルギーに変えるため、筋肉量が減ってしまいます。十分なエネルギーを確保するためには、炭水化物も適度に摂りましょう。
また、主食を抜いてタンパク質源の摂取が増えると、タンパク質や脂質の摂取量が増え、カロリーオーバーや生活習慣病の発症につながる可能性があります。健康を維持するためにも、タンパク質だけでなく炭水化物を合わせて摂ることが大切です。
さらに、主食にもタンパク質が含まれます。主食に含まれるタンパク質の量は、ご飯1杯(180g)に4.5g、食パン6枚切り1枚(60g)に5.3gです。主食も適度に摂ることで、1日の推奨量を補うのに役立ちます。
副菜の役割
副菜に使われる野菜や海藻、きのこ類には、ビタミンやミネラルが多く含まれます。 さまざまな種類のビタミンやミネラルが関わっているのです。
また、副菜は食物繊維の主な摂取源でもあります。食物繊維は腸内に住む善玉菌のエサになり、腸内環境を整え便通を改善する働きがある成分です。食事がタンパク質に偏ることによる便秘などの症状を予防するためにも、副菜を1食当たり1~2皿を目安に取り入れましょう。
プロテインの摂りすぎに注意する
プロテイン飲料には1回分に10~20gのタンパク質が含まれ、飲むだけで手軽にタンパク質を補給できるのが魅力です。ただし、手軽さゆえについ飲み過ぎてタンパク質を摂りすぎる可能性があります。
プロテインは食事による不足分や、トレーニングのために多く摂る必要がある分を補うために活用するのがおすすめです。自分にとって必要なタンパク質の摂取量を把握し、適量摂取を心がけましょう。水分の代わりに常に飲むなどは避け、摂りすぎないように注意が必要です。
タンパク質の摂りすぎに注意して健康な体を作ろう
タンパク質は筋肉や臓器などの体を構成し、体の働きを保つために必要な栄養素です。ただし、摂りすぎるとカロリーオーバーによって太りやすくなるだけでなく、腎機能の悪化や尿路結石の発症など、さまざまな症状を引き起こす原因にもなります。
自分にとって必要なタンパク質がどれくらいか把握し、タンパク質源となる食品やプロテイン飲料を摂りすぎないよう注意が必要です。また、主食や副菜と組み合わせてバランスの良い食事になるよう心がけ、健康な体を保ちましょう。