ダイエットで肥満を解消するには、身体についた体脂肪をエネルギーとして消費する(燃やす)ことが必要です。そう頭では分かっていても、食事や運動をがんばり続けることは簡単ではありませんよね…。ここでは「魚肉ペプチド」がダイエットに挑戦する人をサポートできるかもしれないという研究結果を紹介します。
体脂肪には「燃えやすい脂肪組織」と「燃えにくい脂肪組織」がある
食べ過ぎた糖質や脂質は、皮下や内臓周りの脂肪組織にストックされ、「食べ物が手に入らなくなったときのエネルギー源」として備えています。しかし、現代では飢餓状態になることはほとんどないため、食事に気を付けたり、運動したりしないと、どんどん体脂肪が増えていってしまいます。
ところで、脂肪組織には「燃えやすい」ものと「燃えにくい」ものがあるのはご存じでしょうか? 前述したように、飢餓状態に備えて脂質を貯めておくのは【白色脂肪組織】と呼ばれる「燃えにくい」方の脂肪組織です。一般的に脂肪組織と言えば、この【白色脂肪組織】のことを指します。燃えにくいから、体内に蓄積されて、肥満を引き起こしてしまうわけですね。
一方、「燃えやすい」脂肪組織とは【褐色脂肪組織】のことです。これは赤ちゃんのときに多く、成人になると少なくなることが知られています。あなたは寒いところに行くと、身体がブルブル震えますよね。あれは筋肉を震えさせることで熱を生み出しているのです(これを「ふるえ熱産生」といいます)。しかし、赤ちゃんは震えて熱を作り出すことがうまくできないので、代わりに褐色脂肪細胞が脂肪を燃やして熱を作り出すのです(このことを「非ふるえ熱産生」といいます)。
魚肉ペプチドが脂肪燃焼を促進する可能性が示された
前置きが長くなりましたが、「ダイエットで体脂肪を減らしたい」人に、ぜひご紹介したい研究結果があります。関西大学化学生命工学部の福永健治教授らが「魚肉ペプチドが脂肪燃焼を促進する可能性」を示したものです。
魚肉たんぱく質を細かく分解すると「魚肉ペプチド」という物質になります。この魚肉ペプチドを動物(ラット)のエサに混ぜて飼育したところ、従来のエサを食べているラットと比較して、燃えにくい【白色脂肪組織】が減少し(図1左)、燃えやすい【褐色脂肪組織】が増加した(図2左)という結果が得られました。いずれも魚肉ペプチドの量が多くなるほど、その作用は高まっていました。
【結果】
さらに、エサにコレステロールを添加した場合についても調べてみると、そうでない場合よりも燃えにくい【白色脂肪組織】がさらに減少することが示されました(図1右)。これは、体内に入ってきた多くのコレステロールを処理するために、血液中に脂肪を供給する必要があり、一時的に【白色脂肪組織】から脂肪が出て行ったことが理由と考えられます。コレステロールをたくさん摂ると脂肪が減るという意味ではないのでご注意ください。
また、高コレステロール食を与えた場合でも、燃えやすい【褐色脂肪組織】が増加する作用は同様に発揮されていました(図2右)。
このように、普段のエサに含まれるタンパク源の一部を魚肉ペプチドに置き換えるだけで、体脂肪(白色脂肪組織)が減少し、脂肪が燃えやすい状態になる(褐色脂肪組織が増加)ということがわかりました。
ダイエットしたい人にはとても興味深い結果ですが、これは動物実験ですので、この結果がそのまま人間にも当てはまるとは限らないことに注意が必要です。
※当研究について詳しくは、資料室研究データご覧ください。
【脂肪燃焼促進】ラット脂質代謝系に及ぼす魚肉ペプチド給餌の影響2~魚肉ペプチドによる脂肪燃焼促進効果~
ダイエットは食事・運動が基本、魚肉ペプチドも応援できるかも
魚肉ペプチドの影響で燃えやすい【褐色脂肪組織】が増えてくれれば、ダイエットがとてもはかどるかと思います。
以前、【褐色脂肪組織】はラットなどの小型げっ歯類や人間の赤ちゃんには存在するけれども、成人ではなくなると考えられていました。それなら、いくら魚肉ペプチドのような成分があっても、あまり意味はないように思われてしまいます。
しかし、近年の研究で、【褐色脂肪組織】は肉眼では見えないものの、画像診断(PET)によって成人でも鎖骨や脊椎の周りに存在することが示されました。とはいえ、加齢によって【褐色脂肪組織】はだんだん減ってしまうそうです。
ダイエットでは、栄養のバランスをとりつつも、過剰なカロリーを摂らないように食事を見直すこと、そして摂取したカロリーを運動で消費することが基本です。そのときに、魚肉ペプチドによって太る原因である【白色脂肪組織】が減り、脂肪を燃やしやすい【褐色脂肪組織】が増えれば、より効率的にダイエットができるようになると期待できます。
なお、魚肉ペプチドは「日常生活で生じる身体の一時的疲労感を軽減する機能」で機能性表示食品として届出がされており、運動を続けるサポートをしてくれます。ご興味がございましたらお試しください。
<参考文献>
斉藤昌之:褐色脂肪組織による熱産生と体温・体脂肪調節—ヒトでの知見を中心に—. 心身医学 2020: 60(3); 210-216.