2021.12.16

魚肉たんぱく研究所資料室 > 【急性毒性】ラットを用いた魚肉ペプチドの経口投与毒性試験(急性毒性試験)

【急性毒性】ラットを用いた魚肉ペプチドの経口投与毒性試験(急性毒性試験)

魚肉ペプチドに急性毒性はない

目的

OECD化学物質毒性方針では2,000mg/kgの容量で死亡例が認められた場合にはLD50値(被験態の半分が死亡する用量)について詳細な試験が必要としていることから、魚肉ペプチド(FP)の毒性試験を試みた。

方法

予備実験

■ラットの種類と個体数

Wistar系ラット各群雌雄2匹

■投与飼料と量

FPを2,000mg、5,000mgおよび10,000mg/kgとなるように、それぞれ経口投与した

■観察結果

1週間後に、何ら異常が認められず、腫瘍臓器の解剖所見も正常

本実験

■ラットの種類と個体数

4週齢Wistar雌雄ラットを各群10匹(標準餌料で1週間予備飼育)

■投与飼料と量

FP投与群 :胃ゾンデによりペプチド10,000mg/kg(20ml/kgに調製)
対照群 :胃ゾンデにより水 20ml/kg

■飼育条件

室温23±2℃、12時間ごとの明暗、標準飼料、水は自由摂取

■観察・測定

毎日観察・餌料摂取量測定、7、14日後体重測定、14日後に剖検、血液生化学検査

結果

データ一例として表1に雄ラットの体重および解剖結果を示した。その他データをまとめ、本試験より次のことがわかった。

■死亡状況

いずれの群にも死亡、異常が認められなかった。

FPの単回投与急性毒性は事実上発現し得ない。

■観察・検査状況

一般状態・行動、病理学的異常、血液検査で差異は全例でなかった。

 

表1. 魚肉ペプチド(FP)単回投与雄Wistarラットの体重変化および14日後各種臓器重量

対照群 雄 魚肉ペプチド(FP)群 雄
初体重(g) 135.4± 1.8 134.7± 2.1
7日後体重(g) 172.4± 3.6 173.1± 4.8
14日後体重(g) 204.6± 5.2 201.3± 7.4
肝臓(g) 6.36± 0.21 6.42± 0.25
腎臓(g) 1.54± 0.06 1.56± 0.07
心臓(g) 0.68± 0.04 0.65± 0.03
脳(g) 1.68± 0.01 1.67± 0.01
胸腺(g) 0.45± 0.03 0.47± 0.05
脾臓(g) 0.51± 0.02 0.49± 0.03
肺(g) 0.83± 0.12 0.81± 0.09
大腸(結腸+直腸)(g) 1.15± 0.23 1.21± 0.1
小腸(g) 4.52± 0.55 4.47± 0.24
盲腸(+内容物)(g) 2.42± 0.84 2.54± 0.62
白色脂肪組織(g) 3.21± 0.47 3.27± 0.26
褐色脂肪組織(g) 1.23± 0.07 1.18± 0.05
精巣(g) 1.87± 0.23 1.75± 0.32
貯精嚢(g) 0.95± 0.17 1.01± 0.15
前立腺(g) 0.64± 0.05 0.63± 0.07

平均値±標準偏差  n=10

まとめ

FPの単回投与では、14日後のラットの体重および臓器重量に変化はなく、死亡例や異常も認められないことから、FPに急性毒性はないことがわかった。

実験協力&データ提供:関西大学工学部 生物工学科食品工学研究室 福永健治助教授

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