タンパク質は体の組織をつくり、ホルモンや免疫機能をつかさどるなど、私たちの生活を支えている重要な栄養素です。
この記事では、タンパク質を効率的に摂取するために、タンパク質が体内に吸収されるまでの流れや摂取量、タンパク質の摂取に効果的なタイミング、賢いタンパク質の摂取方法などをくわしく解説します。毎日を健康でイキイキと過ごすために上手にタンパク質を摂りたい、という方はぜひ参考にしてください。
タンパク質は何でできている?
一般的にアミノ酸が2〜数十個つながったものをペプチド、それ以上結合したものをタンパク質と呼んでいます。
アミノ酸の種類や量、配列によって働きも変わります。タンパク質を構成するアミノ酸は全部で20種類あり、非必須アミノ酸・必須アミノ酸の2つに分類されます。非必須アミノ酸は体内で合成できますが、必須アミノ酸はできないため、食事から摂取する必要があります。
タンパク質が吸収される仕組みとは
摂取したタンパク質は、どのような過程を経て体内に吸収されるのでしょうか。タンパク質を効率的に摂取するため、タンパク質が分解・吸収されるまでの流れを解説します。
タンパク質のままでは吸収できない
タンパク質は分子が大きいため、そのままでは吸収できません。タンパク質は以下のような順番で消化されます。
- 胃や十二指腸で胃酸・消化酵素により分解される
- 小腸で酵素によりペプチドへ分解される
- 回腸・空腸でさらにアミノ酸へ分解され、小腸上皮粘膜から吸収される
吸収されたアミノ酸は肝臓へ運ばれ、タンパク質へ再合成されて体内で様々な役割を果たします。また一部のペプチドは、アミノ酸に分解されることなく体内へ吸収されます。
ただし、胃腸が弱っているときにタンパク質を摂取すると、吸収されずそのまま体外へ排出されてしまいます。また、50歳以降は消化酵素の活性減少に伴い、タンパク質の消化吸収率が落ちてしまうため、より意識的にタンパク質を摂取する必要があります。
アミノ酸とは
タンパク質を構成するアミノ酸とは、分子内にアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)をもつ化合物です。アミノ酸は筋肉やホルモン、血液、抗体などの原料となるほか、エネルギー代謝や免疫物質の働きを助けたり、ドーパミンなどの神経伝達物質をつくりだしたりと、日々の生活に欠かせない役割を担います。一方で、過剰摂取をすると下痢などを引き起こすことがあります。
※詳しくは、魚肉たんぱく研究所 基礎講座「アミノ酸」をご覧ください。
ペプチドとは
タンパク質消化の過程でできるペプチドとは、アミノ酸が2~50個程度つながったものを指し、タンパク質やアミノ酸にはない特有の働きをします。たとえば、血圧・コレステロールの上昇を抑制する、疲労回復やリラックス、安眠効果をもたらすなど、種類によって様々な健康効果が期待できます。
ペプチドを摂取することで、タンパク質より体内に吸収されやすいだけでなく、このようなペプチド固有の機能が発揮されるというメリットがあります。
※詳しくは、魚肉たんぱく研究所 基礎講座「ペプチド」をご覧ください。
体に不可欠なタンパク質
タンパク質の役割
タンパク質は人体を構成する主要成分の1つです。人体の50%以上は水分ですが、タンパク質は水分に次いで人体の20%を占める成分です。タンパク質は筋肉・内臓・皮膚・髪・骨・歯・腱・髄など体の各パーツの原料となります。
さらに、エネルギーやホルモン、酵素、抗体などもタンパク質からつくれており、生命活動に不可欠な栄養素です。
タンパク質の分類
タンパク質は構造タンパク質と機能タンパク質の2つに大別されます。構造タンパク質とは、体の構成成分となるタンパク質です。たとえば筋肉や皮膚の原料となる細胞構成タンパク質やコラーゲン、DNAを構成する核タンパク質などがあります。
機能タンパク質とは、消化をはじめ体内での化学反応に関わるタンパク質です。たとえば栄養や酵素を体内で運搬するアルブミンやヘモグロビン、光や匂い、味を感じるためのLDLレセプターなどがあります。
タンパク質が不足したときの症状
タンパク質は体内で多くの役割を果たしているため、不足すると様々な不調を引き起こします。主なタンパク質不足のサインは以下の通りです。
【タンパク質不足のサイン】
このような不調があらわれたときは食生活を見直しましょう。
- 筋力が低下する
- 疲れやすくなる
- 貧血
- しわやたるみ、むくみ
- 枝毛・切れ毛
- 爪の割れ・欠け
- イライラする
- 集中力が低下する
タンパク質の1日の摂取量目安
1日あたりに必要なタンパク質の量は成人男性が65g、成人女性が50gとされています。日常的に運動をする人はタンパク質の消費率も高くなるため、より多くの摂取する必要があります。
正味タンパク質利用率はタンパク質によって異なる
摂取したタンパク質が、どれだけ排出されずきちんと体内で有効活用されたのかを示す指標が、「正味タンパク質利用率」です。一般的に動物性タンパク質は、植物性に比べて正味タンパク質利用率が高いといわれます。これはタンパク質の種類により異なります。主な食品の正味タンパク質利用率をグラフで紹介いたします。
魚肉は正味タンパク質利用率が80%、魚肉ペプチドは97%と、魚由来のタンパク質・ペプチドは体内での利用効率が高いことがわかります。
※参考
魚肉ペプチドのタンパク質利用率が97%の理由(サカナのちからコラム)
タンパク質の成績表、アミノ酸スコア
タンパク質を評価するもう一つの指標に、アミノ酸スコアがあります。アミノ酸スコアとは、タンパク質の栄養価を示す指標で、9種の必須アミノ酸がバランスよく含まれているほど高くなります。必須アミノ酸が1種類でも少ないと、体内でのタンパク質合成がスムーズに進みません。魚はアミノ酸スコアが満点の100で、吸収・利用効率に優れたタンパク質です。
タンパク質は体内に貯めておけない
タンパク質を摂取する上で気をつけたいのが、「一度に体内に吸収できるタンパク質の量には限度がある」ということです。吸収できなかったタンパク質は排出されてしまいます。このため、まとめて摂取し体内に貯めておけません。また、体内のタンパク質は分解と合成を繰り返しているため、コンスタントに補いましょう。
タンパク質を効率的に摂取するには
タンパク質の吸収に効果的なタイミング
タンパク質は“食べ貯め”できないため、毎食きちんと摂ることが理想的です。その他におすすめなのが、就寝前の摂取です。睡眠時は、タンパク質の吸収を促す成長ホルモンが活性化するためです。ただし寝る直前の摂取は胃に負担がかかるため、就寝の30分~1時間前を目安にしましょう。睡眠中はタンパク質の補給が長時間絶たれるため、朝食でしっかり補うことも大切です。
また、運動直後の摂取も効果的です。運動すると筋肉の分解が進み、修復のためにタンパク質が大量に消費されます。運動直後にタンパク質を補給することで、体内に吸収されやすく筋肉増強効果も期待できます。
タンパク質の吸収に効果的な摂り方
タンパク質の吸収をサポートしてくれるビタミンB6と一緒に摂るのが効果的です。マグロやサケなどの魚は、タンパク質とビタミンB6の両方を豊富に含むため、特におすすめの食材です。その他、大豆、くるみ、米、バナナ、ごま、にんにくなどにもビタミンB6が多く含まれます。
また、ごはんやパンなどの糖質と一緒に摂るのもおすすめです。糖質とタンパク質を同時に摂取すると、アミノ酸の合成が促進されます。さらに、糖質がエネルギーとして利用されることで、アミノ酸の分解を抑制する効果もあります。特に運動後には、エネルギー不足による筋肉の分解を防ぐため、速やかに糖質・タンパク質を補給しましょう。
タンパク質が多く含まれる食材
タンパク質が豊富な食材は、主に肉類・魚類・卵類・豆類・乳製品です。
タンパク質が豊富な食材例と100gあたりのタンパク質含有量・脂質量を表にまとめましたので、ぜひ健康的な食生活の参考にしてください。
食材例 | タンパク質 含有量(g) |
脂質量(g) | |
---|---|---|---|
肉類 | 鶏ささみ 牛ヒレ肉 ロースハム 鶏モモ肉 ソーセージ |
24.6 20.5 18.6 16.6 11.5 |
1.1 4.8 14.5 14.2 30.6 |
魚類 | まぐろ カツオ さけ まいわし タラ |
26.4 25.8 22.3 19.2 17.6 |
1.4 0.5 4.1 9.2 0.2 |
卵類 | 全卵 | 12.3 | 10.3 |
豆類 | 納豆 大豆(水煮缶詰) こしあん ひよこ豆(ゆで) 豆腐(木綿) |
16.5 12.9 9.8 9.5 7.0 |
10.0 6.7 0.6 2.5 4.9 |
乳製品 | プロセスチーズ カマンベールチーズ ヨーグルト(低脂肪) 牛乳 |
22.7 19.1 3.7 3.3 |
26.0 24.7 1.0 3.8 |
魚は優秀なタンパク源
タンパク質が豊富な食材の中でも、特におすすめなのが魚です。魚はアミノ酸スコアが高く効率的にタンパク質を摂取できます。また、高タンパクながら脂質が少ない点や、認知症・高血圧予防の効果が期待できる点、脳を活性化してくれるDHAが多く含まれる点など、様々な健康メリットが注目されています。
魚のタンパク質が分解された「魚肉ペプチド」は消化吸収率がよいだけでなく、継続的に摂取することで生体内の酸化ストレスを軽減し、動脈硬化症、骨粗鬆症、酸化ストレスなどの生活習慣病予防につながるという研究結果もあります。
まとめ
タンパク質はアミノ酸によって構成され、消化・分解されることで体内に吸収されます。食材によって体内での吸収・利用効率が異なるため、本記事で紹介したポイントを参考に、上手にタンパク質を摂取しましょう。タンパク質より消化吸収されやすいペプチドの摂取もおすすめです。
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